文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸、柴田直行
トライアンフ「スクランブラー 1200 X」インプレ(宮崎敬一郎)
しなやかなサスと強力なエンジンでオフも楽しい
このスクランブラー1200X最大の魅力はオンロード、オフロードを走れる走破性を持っていること以前に「ファッショナブルなネオクラシックモデル」であることだ。
このバイクのベースはモダンクラシックファミリーのボンネビルT120と言っていいだろう。それをかつて1960年代に造られた多くのスクランブラーと同じように、フレームに少し手を加えて頑丈にし、走破性を上げるため足まわりのトラベル量を増やし、マフラーを悪路で打たないようにアップタイプにする…といった手法で造り出されている。
それだけに、そのシルエットはタイガーなどとは違う趣のあるもの。磨き上げてピカピカにするのもいいが、カッコ良く泥汚れを付けても美しく見えるバイクだと思う。
車格は大きめで、フロントの21インチホイールの存在感は強烈。悪路走破性をさらに強めたXEにいたっては、ほとんど櫓(やぐら)のように見える。だが、ハンドル幅が広めなのと、車重が230kg前後と大型モデルとしては平均的なため取り回しは特別に苦労はしない。このXはスリムな上に820mmと低めのシートのお陰で、足つき性は良好な方だ。
サスの動きはかなりしなやかで、大きな衝撃に対する強い反力も併せ持っている。これでけっこうな凸凹道やオフロードまで走れてしまう。エンジンはどこからでもダイレクトに、自在なピックアップを誇る扱いやすい特性。オンはもちろんオフでも乗り手に忠実で、ライドバイワイヤースロットルの威力で6速でも2000回転から淀みなくピックアップするフレキシビリティまである。
ライディングモードを「オフロード」にして、トラコンをオフにするとトルクフルなエンジンのピックアップが際立ち、かなりアグレッシブな走りまで持ち込める。ちなみに、ライティングモードは5種類で、それぞれのモードから簡単にエンジンのレスポンスマップやトラコン、ABSの設定を任意に調整できるのも魅力だ。
現在唯一と言っていい、クラシカルなルックスの大型スクランブラーであるこのバイク。その凝ったシルエットもさることながら、非常に幅広いライディングエリアを手に入れているのが特徴。しかも快適な乗り心地や、扱いやすいパワーまで備えている上に、優れた取り回しやすさまである。トライアンフのスクランブラーは、個性的であると同時に魅力の多いバイクだと思う。
トライアンフ「スクランブラー 1200 XE」
オフロードを攻める“本気”の1台
XEのホイールベースは1600mm近くある。当然、これだけ長いとスライドが掛かった時や、不意にリアが弾かれた時の挙動がゆるやかになり、感覚的にはゆっくり穏やかに流れるわけで、スゴく気楽にオフを走れる。この長さと巨大なバイクのマスの威力で、まるで大鉈を振るうように、路面のワダチやウネリをものともせずに悪路を突き進んでしまう。これと従順なパワーのおかげで、その見た目以上にオフに適応できる。
トライアンフ「スクランブラー 1200 X」カラーバリエーション
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