文:横田和彦、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
トライアンフ「スクランブラー400X」インプレ(横田和彦)
スクランブラーらしい脚長のスタイリングと、軽快で自由度が高い走行フィーリングが融合
トライアンフが400ccクラスのニューモデルを発表。それだけでもインパクトがある話だが、同時に2機種というのには驚いた…のだけれど、ネットでスクランブラー400Xの画像を見たときに少々疑問が湧いた。というのも、ネイキッドのスピード400と大きくは違わないように見えたので、一部を変えただけなのかと思ってしまったのだ。
しかし、実車を間近で見て、乗ってみると、スピードとはまったく違うキャラクターとして作り込まれていることが理解できた。
今や共通の車体で外装を変え、異なるカテゴリーのバイクに仕立てる手法はそれほど珍しくない。だがトライアンフのアプローチはちょっと違った。外観イメージは共通のまま、スクランブラーモデルとしての走行性能を成立させるためにディメンションを構築する部分を最適な仕様に変更しているのだ。
ダートでの走破性を高めるためフロントホイールに19インチを採用。前後サスペンションのストローク量をスピード400より長くし、装着するタイヤもオフロード走行を意識したものに。またメインフレームのネック部を延長し、フロントフォークをリーディングアクスル化。ワイドなハンドルバーを採用してステップ位置を下げるなど、細かい部分まで徹底的に専用仕様にする力の入れようなのだ。
またがると目線が高く、ハンドルの幅や高さの影響もあってデュアルパーパスに近い雰囲気。エンジンをかけるとツインサイレンサーから耳障りがいいシングルサウンドが弾ける。クラッチミートと同時に蹴り出されるように進みはじめた。ショートストロークエンジンは回転の上昇が早く、落ち着いたルックスからは想像できないほど鋭いダッシュ力を発揮する。
フロントホイールが大径でホイールベースが長めなので直進安定性が高い。サスペンションの動きには適度な柔らかさがあり、路面からの衝撃をうまく吸収してくれるので乗り心地も良い。
サスのストロークが長いこともありブレーキング時のノーズダイブは大きめ。それを上手く使うとバンクさせるキッカケになる。バンキングはやや手応えがあり、ライダーの荷重移動に対して半テンポほど後から車体が追いかけてくる感覚。そこもデュアルパーパスっぽいところだ。
タイヤの特性もあって深くは寝かせにくいが、サスがしなやかに動くのでバンク中にギャップを通過しても振られにくいという特性を持つ。アクセルへの反応がリニアなエンジン特性なので、コーナーの立ち上がりでトラクションをかけやすい。そこも好ましいと感じた。
ダートでの走破性を狙った安定志向のハンドリングだが、軽い車体と元気なエンジン特性のおかげで、上位モデルの900よりもずっと軽快に市街地や峠道を走り抜けることが可能。今回はダートに持ち込むことはなかったが、この操縦性であれば気持ちに余裕を持ちながら、いいペースでフラットダートを走れるであろうことが想像できる。
トライアンフらしいトラディショナルなスタイリングとディテール、そしてスクランブラーとして作り込まれたハンドリング特性。それらが見事に調和し、経験豊富なライダーも感心させる完成度のスクランブラー400Xは、レトロスタイルの400ccモデルを求める人の新たな選択肢だ。
トライアンフ「スクランブラー400X」カラーバリエーション
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