文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
ロイヤルエンフィールド「ハンター350」インプレ(太田安治)
空冷シングルの鼓動を味わいつつ、爽快な走りを堪能できる
イギリスで創業し、オートバイ製造で123年の歴史を持つ超老舗ブランドがロイヤルエンフィールド。本社の倒産、インド企業下での復活といった紆余曲折を経て、現在は350cc~650ccクラスの9機種が日本で販売され、人気を博している。
そんな中、特に人気となっているのが、空冷350cc単気筒の「Jシリーズ」と呼ばれるエンジンを搭載するメテオ350、クラシック350、ハンター350、ブリット350のシリーズ。今回試乗したのは、いわゆるロードスターモデルのハンター350だ。
車体設計を担当したのは、かつて世界のレースシーンで名を馳せた名門フレームビルダーのハリスパフォーマンス。ハンター350は、そんなハリスが手がけたスチール製ダブルクレードルフレームに、正立フロントフォークと2本ショックのリアサスペンション、前後17インチタイヤを組み合わせたオーソドックスな構成を採用している。
ボディデザインは丸みを帯びたタンクとサイドカバー、ロングシートを持つ古典的なロードスタースタイル。ただ、このスタイルは意図的にレトロ感を強調したものではなく、シンプルに美しい造形を追求した結果だろう。このハンターを眺めているだけで、車体全体から発散する落ち着いた雰囲気に魅入られてしまうから不思議だ。
注目の空冷シングルエンジンだが、パワー特性は鷹揚なもので、そのルックスにぴったりマッチしたもの。大きなピストンがゆったりと上下し、重めのクランクがユルユルと回る感覚がなんとも心地いい。もちろん、単気筒らしい鼓動はしっかり備わっているが、不快な周波数の振動や不要なメカニカルノイズはきちんと抑え込まれているのも高評価ポイントだ。
アイドリング回転近辺から太いトルクが出ているため、ゼロ発進のイージーさは特筆もの。タコメーターは装備されていないが、シフトアップのタイミングは排気音の変化を頼ればいいし、低めの回転からスロットルを開けてもギクシャクせずに「スタタッ!」と、リアタイヤの蹴り出し感をライダーに伝えながら力強く加速してくれる。
ちなみに、快適に走りを楽しめる速度域は40~70km/hあたり。高速道路での100km/h巡航でもパワー不足は感じないから、長距離ツーリングも十分楽しめる。
意外だったのはハンドリングの素直さ。以前に試乗した「メテオ」は直進性が強めで、バンクさせるとフロントタイヤがゆっくりと内側を向いてくるクルーザーらしい特性だったが、ハンターはロードスポーツらしい自然な反応で、前後荷重やスロットルワークをいっさい気にしなくてもスイスイと穏やかにコーナーを抜けていく。タイヤの接地感も高く、ミドルクラスのネイキッドモデルを駆っている感覚。ビギナーでも安心できるし、強風や雨といった悪コンディションにも強い。
試乗してみてつくづく感じるのは、ロイヤルエンフィールドの確固たるフィロソフィーと、それを実現する高い技術力。最初の一台にも、上がりの一台にも自信を持ってお薦めできるモデルだ。
ロイヤルエンフィールド「ハンター350」カラーバリエーション
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