2023年末にホンダから発表された二輪車用新機構「Honda E-Clutch」。新世代トランスミッションと言われるこのEクラッチの基本構造、メリット、運転方法、免許区分などについてお伝えしたい。
文:オートバイ編集部/写真:南 孝幸

ホンダ Eクラッチとは

画像: ホンダ Eクラッチとは

システム自体はシンプルで、クラッチレリーズの作動を電子制御で行なう機構!

上の写真はCB650R/CBR650Rのエンジンに装着されたEクラッチのカットモデル。赤く塗られているものがクラッチレリーズを動かすためのギアで、下に用意される2つの小型モーターを使って駆動している。

半クラッチが必要な発進時とシフトチェンジをする際の変速時ではクラッチを切る時間の長さや強さも異なるが、このシステムではECUから電気的にモーター駆動を制御することでこれに対応。部品自体が小型で点数も少ないことから、ケースカバーの張り出しも抑えられている。

ホンダ Eクラッチの特徴

画像1: ホンダ Eクラッチの特徴

発進から停止まで面倒を見てくれる夢のような機構

ホンダが2023年末に発表し「順次FUNモーターサイクルへ適用する予定」と発表した新技術がホンダEクラッチ。すでに新型CB650RとCBR650Rに搭載され、国内発売されることがアナウンスされてはいるが、名前だけを聞いても何のことだかわからない人も多いかもしれない。実はこのEクラッチ、ライダーの利便性や快適性を大きく変えてくれる、かなり革新的な技術なのだ!

このEクラッチのシステムを簡単に説明すると、ライダーの代わりにバイク側でクラッチ操作を電子制御で行うもの。これを使えば、ライダーは発進から変速、加速、停止までクラッチレバーの操作を行う必要がないのだ。

画像: ▲大阪モーターサイクルショー2024で日本初公開された「CB650R Eクラッチ」。

▲大阪モーターサイクルショー2024で日本初公開された「CB650R Eクラッチ」。

すでにホンダには完全なオートマチックモードも備えるDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を多機種に導入しているが、このEクラッチシステムはDCTとは異なり、シフトチェンジに関してはライダー自身がアップ、ダウンの操作を行なう必要がある。

ライダーの操作感覚としてはクイックシフターに近いもので、発進や停止に際してクラッチレバーを握る必要がない、と言えばわかりやすいだろうか。チェンジペダル操作をする必要はあるが、まるでセミATのような感覚で走ることができるのが特徴だ。

画像: ▲大阪モーターサイクルショー2024で日本初公開された「CBR650R Eクラッチ」。

▲大阪モーターサイクルショー2024で日本初公開された「CBR650R Eクラッチ」。

ちなみに、クイックシフターではシフトダウン対応のものはエンジンの回転数を合わせるためにブリッピングも行なうが、今回650シリーズに採用されたEクラッチでは、スロットルが電子制御ではないため、急激なシフトダウン時にはスリッパークラッチが対応する仕組みになっている。

また、このシステムの構成はノーマルのマニュアルトランスミッション車とまったく同じなので、クラッチレバーは付いており、通常作動時であっても、ライダーがクラッチレバーを握れば、瞬時に普通のマニュアルトランスミッション車に戻るのも特徴だ。そのため、運転に際しては、AT限定免許ではなく、当該排気量に対応するMTの自動二輪免許が必要となる。

画像2: ホンダ Eクラッチの特徴

Eクラッチシステムの構造は意外にシンプルで、クラッチを操作するレリーズ部分にギアとカム、モーターからなる電動操作ユニットをつなげ、これらをECUを介してコントロールすることで、最適なタイミングでクラッチ操作を行なうもの。通常のMT車であれば基本的にはどのモデルにも搭載可能で、部品点数が少なく、構造もシンプルなことからコスト的にも有利で、DCTより比較的安価に装着できるので、さまざまなモデルに採用しやすいというメリットもある。

クラッチレバー操作がいらないだけでも、そのラクチンさ加減は大違い。今後の展開が楽しみな新世代トランスミッションだ。

文:オートバイ編集部/写真:南 孝幸

This article is a sponsored article by
''.