文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
トライアンフ「デイトナ660」インプレ(宮崎敬一郎)
気負わずに楽しめる完成度の高い1台!
トライアンフが誇る「デイトナ」ブランドが復活した。だが、今回は以前の675や765などとはキャラクターがかなり違っている。
以前のデイトナはスポーツ性能を追求したSS。軽量コンパクトで、120~130PSのパワーや高剛性フレーム、フルアジャスタブルのハイグレードサスなど、スポーツ性能を追求した妥協のない造りが特徴。
だが、このデイトナ660は違う。エンジン、フレームの基本レイアウトはネイキッドのトライデント660のものを踏襲するが、パワーは10PS以上アップの95PSに強化されており、このクラスのスタンダードスポーツとしてはトップレベルのパワーを獲得している。
フレームはピボットまわりにパネルを装着し、極太のツインチューブ風に仕立てられている。その下はトライデントと同じ鋼管パイプだが、キレイに成形されていてツインチューブと錯覚しそうだ。外観やデザインに関して安っぽさを感じさせるパートはない。それでいて、国産の同クラススポーツと同等か安いプライスを実現しているのは見事だ。
足まわりは最近採用モデルが増えたショーワ製SFF-BPフォークをフロントに採用。リアはプリロードのみ調整可能なモノショックだが、作動性の良さは折り紙付き。
このサス、特にフロントの衝撃吸収力とスタビリティの良さはとても上質。けっこう荒れた路面でも70~80km/hくらいまでなら強く弾かれることもなく、しっとりとした乗り心地を維持する。すばらしい作動フィールだ。良路にあるウネリくらいなら限界速度まで快適に処理してくれるはずだ。
フロントの荷重も増えたようで、トライデントよりハンドルの節度が格段に増している。例えるならオンザレール感覚なのによく曲がり、安定した旋回もでき、必要とあらばダイレクトな応答もできる。操作に難しさは全くなく、イージーだ。ツーリングでも、スポーツライディングでも使い勝手がいい。
搭載される3気筒ユニットはよく粘る。これがかつてのデイトナと違って非常に扱いやすい。ライディングモードでもっとも敏感なレスポンスの「スポーツ」を選択しても、滑りやすいペイントだらけのウエットなワインディングをストレスなく走り切れた。
このドライバビリティの良さは大きな魅力。回した時の力も十分に強力で、7500~1万2000回転を維持して走れば、本格的なSSでも侮れないペースで走れてしまう。また、その時のトリプルらしい、唸るような高回転域の咆哮も官能的。これも魅力だろう。
プライスやスペック、キャラクターでみると、ライバルはホンダのCBR650Rあたり。デイトナ660はそれを念入りに研究しているようだ。3気筒エンジンやハンドリングで個性をアピールしつつ、扱いやすさ、乗り心地を含めた完成度も高い。背伸びせず楽しめる、クオリティの高い俊速ミドルスポーツと言える。
トライアンフ「デイトナ660」カラーバリエーション
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