文:横田和彦/写真:赤松 孝
ヤマハ「トリシティ125」インプレ(横田和彦)
フロントの絶大なる接地感が比類なき安心感をもたらす
フロント2輪という独創的なレイアウトのトリシティ125。2014年にデビューしたときは自然な乗り味に驚いた。「一般的なスクーターに乗っている人が違和感なく乗り換えられる」ことを重視したという開発者の言葉に納得したものだ。そして通常のスクーターよりもフロントの接地感が抜群に高く、安定感が高いことを体感した。
デビュー当時から基本スタイルが大きく変わっていないので気付きにくいが、トリシティ125は2023年に各部が大幅にアップデートされている。新しい排ガス規制に適合させた新エンジンの採用や、大型スポーツモデル・NIKENで実績があるLMWアッカーマン・ジオメトリを専用設計してフロントまわりのバランスを最適化、新設計のフレームやリアショックの採用、専用アプリを介したスマートフォンの連携機能など、走行性能と機能面が向上しているのだ。
またがると足元のスペースがわずかに広がっている。構造上それほど大きくはできないが、できるだけ広げて快適にしようという努力が感じられる。走り始めると、やはり車重があるため軽快、とはいかないが、新エンジンはトルクがアップしていて十分な加速力を発揮する。
振動は少なくアクセル操作に対する反応も良好だ。低燃費に貢献するアイドリングストップ機能も嬉しい新装備。信号待ちで止まるとスッとエンジンが停止、青信号と同時にアクセルを開けると即座に再始動し、ほとんどタイムラグなく加速する。
新しく導入されたLMWアッカーマン・ジオメトリの効果か、ハンドリングのスムーズさが増したように感じるが、一般的なスクーターと比べればフロントにマスがあるゆったりとした挙動。しかしその特性はすぐに理解できるのでコントロールは容易。車線変更なども上品な動きで優雅にこなしてくれる。
そしてコーナーではフロントから路面に吸い付くような手応えが伝わってくるので、荒れた路面でもバランスを崩しにくく安心感がある。途中、わざと段差があるところを狙って軽くバンクしながら進入してみたが、車体姿勢をほとんど乱さずに抜けることができた。これには剛性バランスを最適化した新しいフレームやリアサスペンションの効果も大きい。路面状況が変わりやすい市街地では大きなアドバンテージだといえよう。
フロント2輪という独創的なメカニズムによりクラスを超えた高い安定感を持つトリシティ125は、季節や天候、路面の変化にめっぽう強いスクーターであることが再確認できた。スマホ連携といった便利な機能も追加され、シティコミューターとしての完成度も一層高まっていると感じた。
ヤマハ「トリシティ125」カラーバリエーション
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