文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸、島村栄二
ホンダ「NX400」インプレ(太田安治)
日本の道によく合った優等生オールラウンダー
ホンダのオートバイに「誰でもどこでも乗りやすい」というイメージを持つライダーは多いだろう。特にCB400SF/SBはその優等生的キャラクターが絶賛されたが、CBの生産終了によって新世代の優等生候補に挙げられているのがCBR400Rと、その兄弟車であり、2024年型で車名も「400X」から変更された「NX400」だ。
エンジン/車体の基本コンポーネンツはCBRと共通だが、フロントホイールは大径の19インチを採用。幅広で高い位置にセットされたハンドル、風防性能の高いフロントカウルと併せ、400ccクラスには少ないアドベンチャールックに仕立てられている。
まず感心するのはクルージングでの快適さ。前後サスの動きがスムーズで、路面のギャップを見つけて身構えても、何事もないように通過する。これはサスペンション設定と標準装着タイヤ、車体剛性、座面が広くて座り心地のいいシートの総合力。ギャップの多い市街地、高速道路高架部分の継ぎ目、荒れた舗装林道でも路面状況に過敏にならず、気持ちに余裕を持って走り抜けられる。
並列2気筒エンジンは180度クランクを採用。発進直後の2000回転台からレッドゾーンの始まる1万回転までフリクションを感じさせずに回転が上昇し、どの回転域でも不快な振動は出ない。高速道路の100km/hクルージング時は約5400回転で、「タララッ…」といった軽い排気音を響かせながら穏やかに回り、120km/h区間でもエンジンの「回っている感」はない。
逆に言えば、パワーの盛り上がりと鼓動感が希薄な大人しい特性なのだが、それ故に圧倒的に扱いやすく、パワー不足を感じるシーンもなかった。このエンジン特性は、まさにホンダらしい優等生キャラと言えよう。
今回は市街地から首都高速と東名・新東名高速を経由して富士山麓の峠道……という走り慣れたルートで試乗。往復自走すると相応に疲れるのだが、今回は明らかに疲労感が少なかった。理由は前述した乗り心地の良さとエンジンフィールに加え、ゆったりしたライディングポジションと大きめのカウル/スクリーンが生む高いウインドプロテクション効果。これはNXが誇るべきトータル性能だ。
こう書いているとクルージングに特化したオートバイだと受け取られそうだが、タイトコーナーの連続する峠道での運動性能は意外なほど高い。フロントタイヤが19インチなので初期旋回の鋭さこそないものの、コーナリング中の安定性が高く、バンク角も充分。フロントブレーキを使って車体姿勢をコントロールできるライダーなら、スポーツモデルに置いて行かれることはない。
大型カラーメーターも装備し、前モデルの400Xを1ランク、いや2ランク洗練させた印象。CB400SFに代わって教習車になるのも納得だ。日本の道に合ったオールラウンダーに仕上がっている。
ホンダ「NX400」カラーバリエーション
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