文:丸山淳大/写真:関野 温/モデル:mii
5つの定番トラブルとその対処法を紹介
トラブル1. レバーが折れてしまった!

多少なりとも残存部分が多いほうがラッキーだ
レバーは比較的に簡単に折れたり曲がったりすることで、レバーホルダーまでダメージが及ばないようになっている。レバーの応急処置にはタイラップと小型のスパナを使用する。
レバーを折ってもココロは折るな!
軽いタチゴケでも簡単に折れたり曲がったりしてしまうのがレバーだ。レバーが曲がった場合、無理に曲げ直すとほぼ確実に折れるので、ひとまずそのまま交換できる場所まで走るのが無難だ。
一方、折れてしまったときは、小型スパナなどを添え木にしてタイラップで縛ることで応急修理できることもある。また、バイスプライヤで残ったレバーを咥えて固定し、一時的に対処する方法もあるので、覚えておくと良いだろう。
〈対処法1〉小型スパナとタイラップを活用

小型スパナを常備しよう
レバーの添え木にするのにぴったりなのが小型のスパナ。車載工具に1本入れておくと良いだろう。また、ビギナーは交換用の予備レバーを携行するのもおすすめ。

〝添え木〟にしてレバーを固定する
スパナを車体側に残った根本と折れたレバー先端部に渡すようにして4箇所ぐらいタイラップで縛る。しっかり固定できたら余剰部分はカットする。切り口で怪我しないように!

あっという間にレバーが復活!
折れた箇所にもよるが、今回の場合はしっかり握れて不安なく操作できるだけの強度が確保できた。このまま恒久仕様にできそうだが、あくまで応急的な修理となる。
〈対処法2〉バイスプライヤをレバー代わりに!

レバーの残存部分を挟み込んでロック!
残ったレバーにスペースが残っていれば、バイスプライヤを固定してレバー代わりにすることもできる。顎の開きをレバーの厚みに合わせて調整して、グリップを握り込めばロックされる。

ロックを解除するまでガッチリ喰らいつく
ロック解除のレバーを触らない限り外れることはないので、非常時の代用レバーとして機能する。ただ、レバー代わりに使用するのは小型のバイスプライヤが適している。

ペダルの代用にもなるよ!
転倒時はペダルが折れることも少なくない。そんな時にもバイスプライヤを残った部分に固定してペダルの代用として使うことができる。ひとつあると非常に役立つことが多い工具だ。
トラブル2. ボルトが脱落してる⁉

普段からボルトの増し締めを心がけよう
ツーリング先の休憩時に愛車を眺めながらたそがれている時なんかに、ふとあるべきボルトがないのに気づいたりするものだ。そんな時は慌てず騒がず対処。タイラップやステンワイヤーなどを適材適所で使い分けて固定しよう。
ただし、エンジンマウントやブレーキキャリパーなど、重要なボルトが失われているケースではそのまま走り続けるのは難しい。同じ強度のボルトをなんとか入手するか、レッカーを依頼したい。
〈対処法〉タイラップまたはステンワイヤーを使用

外装部品やナンバーはタイラップを使え!
ナンバーは常に振動を受けるのでボルトが緩むことも少なくない。すでにボルトがなくなっていたらタイラップで固定しておけば安心。もう片方のボルトが緩んでいないか確認しておこう。

熱が加わる部分はステンワイヤーを使用
マフラーのサイレンサーマウントボルトも緩みやすいボルトのひとつ。高温になることもあるので、タイラップではなくステンワイヤーを使う。ハンドルグリップの固定にも使える。
トラブル3. バッテリーが上がった!

バッテリー端子と端子を合わせて電力いただきます
後付け電装パーツがあれこれ付いているバイクはバッテリー上がりにも気をつけたい。FI車は押しがけが不可能な場合も多いので、セルモーターが回らなければ自力での始動は困難となる。モバイルタイプのスターターを使うか、同行者や付近の人にバッテリーのジャンプをお願いするのが最善策となるだろう。
ジャンプコードを常時車に積んでおくという昭和時代の慣習も失われつつあるが、いざという時のためにコードを繋ぐ順を覚えておくと良いかも。
〈対処法〉 ジャンプの要請、またはスターターを使用

ジャンプ時はショート(短絡)に注意!
バイクのバッテリーは端子が小さいので、ジャンプコードのワニ口では挟みづらいかもしれない。プラスマイナスをショートさせないように、上図の順番で繋ぐことが望ましい。

こちらがジャンプコード。赤が(+)、黒が(ー)端子となっている。

モバイルバッテリー型のスターターは何かと便利!
ソロツーリングの道中、ひと気のない山道でバッテリーが上がった時でもこれさえあれば助けいらず。ただし充電が必要なので事前準備を忘れずに。
トラブル4. ガス欠してしまった!

うまくいったら気分はマッドマックスだ!?
ついうっかり給油タイミングを逸してしまうことは良くある話。ガス欠になった際、もし同行者がいたならばガソリンを少し分けてもらうことで、ピンチを脱することができるかもしれない。
バイクのタンクからガソリンを抜き出すにはポンプが必要になると思われるかもしれないが、実は耐ガソリンのホース1本でガソリンを抜く方法があるのをご存知だろうか!? 「サイフォンの原理」を利用すればいとも簡単にガソリンを移すことができるぞ!
〈対処法〉耐ガソリンホースでサイフォンの原理を使う

ストローの端を指で押さえて持ち上げる要領で
ホースを燃料タンクのなるべく奥まで差し込んでから、端を折り曲げ、そのままの状態でホースを持ち上げる。するとホースの中で液面を保ったまま上がってくるはずだ。

燃料のお裾分けにはガソリン携行ボトルを使うと便利!
燃料タンク内の液面よりホースの液面の高さが低くなったところで、ホースの折り曲げを伸ばすと、タンクのガソリンが自動的に吸い出されていく。止める時は再びホースを折ればOK。
トラブル5. タイヤがパンクした!


パンク修理キットで実際の作業に挑戦!
チューブレスタイヤの場合、タイヤに刺さった異物を見つけてもすぐには抜かず修理ができる場所まで移動することも検討しよう。ただし、空気が完全に抜けている場合や盛大に空気が漏れている時は、現場で修理するかレッカーを呼ぶかの二択となる。
空気と共に液体修理剤をエアバルブから注入するスプレータイプは便利だが、あくまで応急用ととらえよう。穴に直接シール材を打ち込むタイプがおすすめだ。いずれにしてもパンクしたタイヤは早めの交換が吉。
〈対処法〉パンク修理キットを使おう

DAYTONA
パンク修理キット
品番:90407
税込価格:5500円

意外と貫通していないことも…
チューブレスタイヤのクロスカブ110でパンク修理を実践。異物を抜く時は刺さっている方向をよく確認する。あまりにも斜めに刺さっている場合は修理不可な場合もあるぞ。

勇気を持って穴をグリグリしよう!
異物を抜いた穴にリーマーを抜き挿しして、穴を拡大しつつ、形をきれいに整える。穴を広げるのは少し怖いと感じるが、しっかり奥まで挿し入れた方が成功率が高くなる。

シール材は使い切ったら追加購入できる
タイヤの穴を塞ぐためのシール材は角型のタイプ。表面保護のための青い剥離紙を剥がしてから針に糸を通すような要領で、挿入治具となるT型フックの先端にセットする。

ラバーセメントの寿命は短いので注意!
付属のラバーセメントをシール材に塗布する。これは接着剤であると同時に挿入時の潤滑剤の役目を果たすことになるので、かなり多めに塗るのが作業成功のコツとなる。

しっかり奥までシール材を打ち込む
パンクの穴めがけてシール材を打ち込む。タイヤの空気が抜けていると変形してうまく入らないので、かなり力が必要になる。体重を使って押し込もう。作業中はバイクが倒れないように注意したい。

タイヤの内側から観察してみた
打ち込んだシール材をタイヤの内側から見ると写真のような状態となっている。T型フックを根本まで挿し入れたら、引き抜く。フック先端は先割れになっているので、シール材だけがタイヤに残る。

余剰シール材を切り落とす
タイヤ表面にはみ出たシール材を付属のカッターで切り落としておく。タイヤ表面と同一面で切るのではなく、少しだけ余分を残しておく。これで穴が塞がって空気が漏れなければ作業は成功だ。

シール材がタイヤに残ってエア漏れを防ぐ
タイヤの内側から見てみるとシール材がループ状になっているのがわかる。これで、タイヤが回転する時の遠心力を受けても抜けにくくなるわけだ。挿入時にシール材が破断したら作業は失敗。

圧縮ボンベでエアを注入
圧縮ボンベで空気を注入する。ボンベの缶は凍るほど冷たくなるので注意。修理箇所から空気の漏れがなければ修理は成功だ。パンク修理は応急処置なので、早めのタイヤ交換が推奨される。
まとめ:店主 マルの結びの一言

準備だけは整えておいてあとは出たこと勝負で対処!?
今回のツーリングトラブル対処法はあくまで一例であり、実際には全く想定外のトラブルに見舞われることもある。私はそれが怖いのでバイクには乗らずに〝いじる〟ことにします!?
miiちゃんはトラブル対処法もサクッと習得し、ロードサービスにも加入するそうなので、バイクを買う前から準備万端。「Z世代」らしい手際の良さだ。「Z」って言ってもカワサキとか空冷とかじゃないんだよ~って、そんな寒いダジャレを言うハチ黒さんには、頭にジャンプコードを繋いでお仕置きだ‼
文:丸山淳大、mii/写真:関野 温