文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
ハーレーダビッドソン「ストリートグライド」「ロードグライド」インプレ(宮崎敬一郎)
驚くほどの機動力と上質で滑らかな乗り味
ストリートグライドとロードグライドはハーレーのツーリングファミリーの中ではベーシックモデルだが、ジェントルな装いで、ロングラン適性の高い豪華な装備をまとっているのがこの2モデルの特徴だ。
古くはFLHエレクトラグライドの時代から受け継ぐバットウイングフェアリングの「ストリートグライド」、近年登場したシャークノーズフェアリングを持つのが「ロードグライド」で、両者の違いはこのフェアリング。前者はステアリングクランプマウントで後者はフレームマウント。それによるハンドリングの違いが走りの違いを生んでいる。
ストリートグライドはツーリングハーレーとしてのアイコニックシルエットを保っている。これは古典的なハーレーファンには譲れない魅力だ。
一方のロードグライドは、仮に160km/hを超えるような状況でコーナリングしたとしても、路面の荒れなどを越えても全く車体が振られることもなく、フットワークする時の応答がよりダイレクトなのが特徴。街中や高速走行での違いがロングランでの得意とする走りを色分けするのだが、それよりも決定的な違いがあるのだ。
この両車には、さらに上位のグレードとして、昨年モデルチェンジしたばかりのCVO(カスタム・ビークル・オペレーション)がある。絢爛豪華な装備と上質なフィニッシュでまとめられ、そちらは200万円ほど高価な560万円強もする超高級車だ。
今回フルモデルチェンジを果たしたこの2台、フェアリングは先に登場したCVOたちに近い意匠となり、エンジンはこれまでより強力なミルウォーキーエイト117に進化。これまでの114より幅広く強力なトルクバンドを獲得している。
猛烈にパワフルな可変バルブ採用の121エンジンを持つCVOほどではないが、これまでより車体が軽く感じるほどの機動力を生み出す強力なトルクを生んでいる。そしてこれがすばらしく扱いやすい。
ライディングモードは好みで3モード+任意設定のカスタムを選べる。スポーツモードにしても、同じ117を積むローライダーSやブレイクアウトのような荒々しさはない。ツーリングモデルらしく応答は極めて紳士的。吹け方からして滑らかだ。
しかも、この巨体にもかかわらず、ハンドリングが自然。物理的なマスの重さはあるが、走り出してしまえば身のこなしは素直で従順に従う。意外に許容バンク角もクルーザークラスにしては深めで、交差点や峠道でも神経質になる必要はない。
パルスを発しつつドコドコ言うばかりがハーレーではない。この2台は、大陸型のツアラーの中ではトップレベルに快適で、力強く、扱いやすい。どちらを選ぶかは、走りでの微妙なキャラの違いと、シルエットの好みで決めればいいだろう。