文:宮崎敬一郎、オートバイ編集部/写真:南 孝幸、島村栄二
BMW「R 12」インプレ(宮崎敬一郎)
あらゆる走りをこなす美しきオールラウンダー
R12はBMWのヘリテイジファミリーに加わったクルーザー。このファミリーは空油冷ボクサーエンジン搭載し、最新の技術でネオクラシカルな雰囲気をベースにまとめ上げたモデルたち。GS風だったり、スクランブラー、カフェレーサーなど、スパイスを効かせて足まわりや外装をアレンジしている。
このR12が演出しているのはクルーザーテイスト。しかし、コテコテのクルーザーでもスポーツクルーザーでもない。やはりその根底に流れるのは、ベースであるR nineT譲りの扱いやすさ。実用的なネイキッドスポーツの取り回しや、オールマイティな走りをこなせるキャラクターだ。
R nineT同様、搭載するエンジンは、空油冷ボクサー最後のDOHC4バルブ。ライディングモードはBMWの巨大クルーザーR18などと同じでシンプルなもので「Rock」と「Roll」の2種類。このR12の場合は前者が普通に元気のいいレスポンス。後者は極めて穏やかな応答になっている。はっきりと味付けに差をつけた設定で、後者は一般的な「レイン」に相当するほど穏やかだと思えばいい。
このエンジンに合わせてフレームも新作されている。さらにR12はクルーザーテイストの演出で、フロントには19インチの大径タイヤ、リアには深いフェンダーと16インチの極太タイヤを採用。さらにクルーザーっぽく、少々リア下がり気味のシルエットとするなど、演出も念入りだ。
低く見せるための演出も相まって、前後サスのトラベル量は少なめで、それを補うためにバネは奥で強いタイプ。結果、少々乗り心地は硬め。決定的にトラベル量の少ないボバー系クルーザーよりはずっと動きにゆとりがあるものの、ある大きさ以上の衝撃に対しては、いきなりドカンっと強い衝撃を伝えてくる。まぁ、これは仕方のないところだ。
基本的な車格がR nineTと同様に、リッタークラスとしては小ぶりなため、ハンドリングはどうしても鈍重さを感じてしまうようなクルーザー的なものではない。これで扱いやすくなっているのだが、前輪が大径でリア下がりになっているため、フロントの応答がダルめになっている。比べて言うのなら、これが他のR nineTシリーズの兄弟たちとの違い。ただ、これについても、そういったタッチだというだけで、峠道では一般的なスタンダードバイクと変わらない機動力でスポーティな走りもできる。
このR12はクルーザーテイストを車体全体にちりばめられているが、その実態はほぼスタンダードバイク。だから、コミューターとして街中で使ってもストレスはないし、ツーリングの途中で出くわす峠道だって自在に身を翻すので、ワインディングでスポーティな走りを楽しむことだってできる。R12はあらゆる走りに適応できるオシャレなビッグバイクなのだ。