文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸、森 浩輔
KTM「250 DUKE」インプレ(太田安治)
爽快な走りと優しさも身につけた絶妙な進化
KTMのデュークシリーズに共通するのが猛々しいとさえ感じる乗り味だ。スロットルワークにダイレクトに反応するエンジンと高剛性の車体、締まった前後サス、攻めの姿勢を取るほどに車体との一体感が増すライディングポジション……。390、250、125の「スモールデューク」であっても本来のパフォーマンスを引き出せるかどうかは乗り手のスキル次第。
それだけにフルモデルチェンジを受けた2024年型250デュークはどこまで尖ったのか? と気持ちを引き締めて走り出したが、僕の予想は完全に外れてしまった。エントリーユーザーでも気楽に操れる優しさを身に付けていたのだ。
最初に前モデルとの違いを感じたのはハンドリング。前後サスペンションは初動がスムーズで、高い荷重が掛かっても途中から突っ張る感触がない。加減速での車体姿勢変化が過剰にならない減衰力を与えつつ、ストローク量を有効に使う設定。初期旋回の切れ味は薄れたが、公道では間違いなく扱いやすくて乗り心地がいい。同時に前モデルが苦手にしていた荒れた路面での安定性、高速コーナーでの接地性も高まった。
エンジンは前モデルの硬質な回転フィーリングが消え、スロットルの微妙な開閉に対する反応も自然になった。レスポンスが活気付くのは5000回転以上だが、それ以下の回転域での粘りが増し、単気筒エンジンで出がちな高いギア・低めの回転からスロットルを開けた際のギクシャク感も減っている。
トップエンド近辺で吹き詰まる感覚も解消されたが、持ち前の中高回転域でのパンチ力は失われていない。結果、各ギアの守備範囲が広がり、市街地での扱いやすさが大きく増していることが新設計エンジンの特徴。
ミッションも硬さが取れてスムーズにシフトチェンジでき、各ギアのレシオ配分も文句なし。アップ/ダウン両対応のシフターがオプション設定なのは残念だが、シフトチェンジが小気味よく決まるし、駆動系への負担も減るので僕なら迷わず装着する。
250ccクラスはエントリークラスとしての立ち位置だけではなく、ベテランライダーのダウンサイジングやセカンドバイクとしての需要も多い。そこで重要になるのがライディングポジションの余裕。ステップが高くて後退した位置にあり、膝の曲がりが強かった前モデルに対し、新型は下半身の窮屈さが解消されている。
しかもシート高は30mmもダウン。サスペンションの沈み込み量と併せ、足つき性は800mmという数値から想像する以上にいい。KTMファンの小柄なライダーにとっては待ち望んだ改良となっている。
全体的にはストリート適性優先のモデルチェンジだが、スポーツモデルらしい爽快さをしっかり確保しているところにKTMの確固たるフィロソフィーを感じる。スキルのあるライダーほど、この乗りやすさとスポーツ性の絶妙な比率に感心するはずだ。