文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
KTM「990 DUKE」インプレ(太田安治)
軽快なフットワークと驚くほど快適な乗り心地
KTM社のDUKEシリーズは125から1390まで幅広くラインアップされているが、排気量が異なっても、機敏な運動性とアグレッシブなルックスを身上とするネイキッドスポーツというコンセプトは共通。この990はもともとミドルクラスのモデルだったが、フルチェンジされた2024年型は並列2気筒エンジンのボア×ストロークを共に拡大。排気量は947ccとなり、「ミドル」のジャンルに収まらないスペックとなった。
しかし、引き締まったルックスと軽い車重により、大型車的な威圧感はない。ハンドル切れ角が大きく、取り回しとUターンが楽で、足つき性も825mmという数値から想像するよりいいから気軽に乗り出せる。
今回は市街地→首都高速→東名高速→峠道というコースで試乗したが、どのシチュエーションでもフットワークは軽快そのもの。アップライトなポジションもあって渋滞路走行が苦にならず、レーンチェンジ時の反応も至って素直。6速・100km/h時は約4000回転で、不快な振動やメカノイズを感じさせずタララッ…と軽く穏やかに回るから、長時間のクルージングも実に快適だ。
そしてエンジン以上に快適性に寄与しているのが前後のWP製サス。作動初期の引っかかり感が全くなく、少ない荷重変化にも忠実に反応してしなやかに動く。高架道路の継ぎ目や峠道の減速帯を通過する際のバタ付きの少なさは特筆もの。
ストリートライドに合わせたバネとダンピングの設定、標準装着のタイヤであるBS製のS22とのマッチングも良く、座り心地のいいシートとあわせ、ストリートファイター的なルックスからは想像できない優しい乗り心地を提供してくれる。
だが、本領を発揮するのはなんと言ってもワインディング。特に5000回転から8000回転でのパンチ力は強烈で、後ろから蹴り飛ばされるようにダッシュする。「パフォーマンス」モードにしてウイリー制御の介入を抑えると、コーナー立ち上がりのたびにフロントホイールが浮き上がる元気さだ。8000回転を超えると加速の勢いは落ち着くが、1万回転オーバーまでスムーズに伸びていくから、峠道なら2速だけで走り切れる扱いやすさも備えている。
低中速コーナーが続く峠道ではハンドリングの素直さが光る。ブレーキングからフルバンク状態まで軽く自然な手応えで持ち込めるうえ、接地感も深いバンク角での安定性も高い。この旋回中に荒れた路面に出くわしても弾かれにくい特性は、WP製サスの上質な動きに加えて、高荷重を受けると微妙に捻れるスイングアームが効いている。
正直、1390スーパーデュークRやリッターSSだと、僕のスキルと体力では扱いきれない。電子制御に頼らなくても何とかライダー主導でいられるギリギリのパフォーマンスと、街乗りやツーリングにも使えるフレンドリーさが990の魅力だ。