以下、文:横田和彦/写真:関野 温
スズキ「GSX-S1000GT」VS カワサキ「Ninja 1000SX」| 比較インプレ
同じコンセプトを持つ2台はフィーリングもソックリ!
今までにニンジャ1000SXは1000km以上も乗っている。その前の代のニンジャ1000も含めると2500kmくらい乗っているかもしれない。ここまできたら愛車と呼んでも差し支えない…なんて冗談はさておき、市街地から高速道路、郊外のワインディングと、普通にツーリングで行くシチュエーションはほとんど走った。それだけ乗って感じるのは「ニンジャ1000SXであれば大抵のことは快適にこなせる」ということ。
ポジションは軽い前傾で力まずリラックスでき、目線が高めなので周囲のクルマの流れを読みやすく安全に走れる。車体のディメンション設定も絶妙で、高速道路での直進安定性とワインディングでの運動性を見事に両立。
小柄なボクでも身体全体を使い、高い位置にあるハンドルを操り大柄な車体をねじ伏せるようにバンクさせていける。そんな走り方が昔のAMAスーパーバイクを彷彿とさせてくれるので、コーナーリングがメッチャ楽しい。
クローズドコースであればヒザのバンクセンサーをガリガリ削るようなアグレッシブな走りも可能。スポーツライディング好きなボクにとっても不満に感じるところがほとんどない完成度だ。
長年、ライバル不在で「大型スポーツツアラーといえばニンジャ1000一択」という時代が続いていた。そこに待ったをかけたのがGSX-S1000GTである。2021年の発表を見た瞬間「ニンジャ1000SXに真っ向勝負を仕掛けてきたな!」と感じた。これは面白くなってきたぞ〜と思いながらデビュー直後にGSX-S1000GTに試乗。すると…乗り味がかなり似ているじゃないか!
同じコンセプトでエンジン型式や車体サイズが近ければそうなるのも分かる。でも同時に乗り比べれば違いが明確にわかるはず…という想いを抱きながら対決の日を迎えた。
2台が並ぶとデザインこそメーカーの色が出ているが、ボリューム感にはあまり差がない。またがるとニンジャ1000SXはセパハン、GSX-S1000GTはバーハンだけど構成されるポジションは似ている。個人的にはややハンドルの絞り角があるニンジャの方がフィットするかなという程度の違いだ。シート高はGSX-S1000GTの方が10ミリ低いがライダーの姿勢はあまり変わらない。
エンジンを始動すると集合マフラーから直列4気筒エンジン特有の重低音が響く。クラッチをつないでスタート。両車とも低〜中回転域でトルクがスムーズに生み出されるので、歩くくらいのスピードから100km/hオーバーまでコントロール性はバツグンに良い。
サスペンションの動きも上品で乗り心地もよく、長距離を走っても疲れなさそうだ。高速域では安定したクルージング体験ができ、ワインディングはスポーティに駆け抜ける…いやはや困った。驚くほどソックリじゃないか、この2台。今までの比較インプレの中でも例がないくらい差が少ない。
だがさまざまなシチュエーションで乗り込んでいくうちに、わずかながら違いが見えてきた。ひとつはエンジンの極低回転域からのフィーリングだ。ニンジャ1000SXの方がより低い回転域から優しくトルクが湧き出る感覚なのだ。それは排気量の差と、最大トルクの発生回転数の違いから生まれるものだろう。
そしてもうひとつはワインディングでの挙動だ。フロントブレーキを強めにかけながら路面が荒れた場所に入ったとき、GSX-S1000GTはガクンと車体が揺れた。だがニンジャ1000SXはサスペンションにもう少しだけ奥まで動く余地が残っていて最小限のブレで収まった。
これは倒立フォークのセッティングやブレーキシステムの違いから生じたものではないかと推測。モデルチェンジを繰り返し、性能を煮詰めてきたニンジャ1000SXに一日の長があるように感じた。ちょっとの差だけど、気持ちの依存度が変わるんだよね。
ディメンションやブレーキシステムが違う!
ホイールやタイヤサイズは同じだが、ニンジャ1000SXのキャスター角は24°、トレールは98mm、GSX-S1000GTは25°、100mmと違いがある。ホイールベースはニンジャの方が20mm短く車重も10kg重いのに両車のハンドリングはソックリ。ブレーキキャリパーはGTがブレンボ。ニンジャはマスターシリンダーにラジアルポンプ式を採用する。