文:太田安治、オートバイ編集部/写真:森 浩輔、南 孝幸
BMW「CE 02」インプレ(太田安治)
EVのメリットを遊び心に活かした個性派モデル!
オートバイのEV化はスクータータイプから始まった。エンジンを電動モーターに置き換える、またはインホイールモーターを使い、シート下スペースにバッテリーを収納すれば既存の車体構成を大きく変えずに製品化が可能なこともあって、アジア地域では125ccクラスのスクーターと似たサイズ/構成のモデルが主流になっている。
だがBMWのアプローチはまったく違う。2017年に登場した「Cエボリューション」は同社の大型スクーター・C650と同等の車格で、2022年に発売された「CE 04」は250ccスクーターに近いサイズ。そして今回登場したCE 02は前後14インチの太いタイヤを装備し、ファットバイクと呼ばれる自転車にも似た、今までにないネイキッドスタイルで登場した。
これまでのBMWのEV 2車種に比べると車格は圧倒的にコンパクト。132kgの車重で不安なく取り回せ、スリムな車体で足つき性もいい。最高出力は15PSで、日本では軽二輪に区分され、AT限定普通二輪免許で乗れ、高速道路も走れる利便性も備える。
起動トルクが強力なモーターの特性に加え、クラッチや変速機を介さないこともあって発進加速はダイレクト。BMWは「0~50km/h加速は3秒」と発表しており、250ccスクーターと同時にスタートすると動き出しから50km/hに達するまでに大差を付ける俊足ぶり。ただし50km/hを超えると加速の勢いが弱まり、約100km/hで速度リミッターが介入する。電費も悪化するから、長時間の高速道路走行は避けた方が無難だろう。
パワーモードは3種類。加減速フィーリングが自然なモードは「サーフ」だが、回生充電を行わないため航続距離を稼げない。「フラッシュ」は加減速がダイレクトだが、回生による減速も強力で、低速域では扱いにくさもある。街中をキビキビ走るなら回生充電を行う「フロー」にしておけば間違いない。
特筆すべきは極低速域での巧みな出力制御。モーターの特性上、発進時の加速は唐突になりがちだが、CE 02は過去に乗ったどのEVよりも穏やかに動き出し、歩くような微速でのコントロールもしやすい。エンストとも無縁だからUターンも安心して行える。
CE 02が得意とするのは市街地を機敏に駆け回るようなシチュエーション。125ccモデルと同等以下の軽量な車体、500ccクラスのエンジンと同等の超強力なトルクが生む加速力はもちろん、ダブルループと呼ばれる剛性の高いフレームと前後14インチの太いタイヤ、実効ストローク量の多い前後サスという組み合わせでギャップに強く、ブレーキ性能も秀逸。
フランス発祥のスポーツ「パルクール」の躍動感をイメージして「Eパルクーラー」のペットネームが与えられているように、圧倒的な運動性能を楽しめる。EV独自のメリットを、実用性ではなく遊び心に活かした超個性的なモデルだ。