各社共に展開するヘリテージ系モデルの中で、ヤマハはWGPをアイコンに選びXSR900 GPをリリースした。公道試乗を経て中野真矢氏がサーキットでその実力をテイスト。絶妙な「ちょうど良さ」に惚れ込んだ。
文:ノア セレン/写真:安井宏充/ライダー:中野真矢
画像3: ヤマハ「XSR900 GP」サーキットインプレ(中野真矢)

サーキットでも楽しみたい雰囲気含めたベストバランス

レーシーなルックスに高揚しながらコースイン。ヘリテージモデルとはいえ、レースシーンをイメージしたスタイリングとMT-09由来のCP3エンジンが提供するパフォーマンスはサーキット走行も存分に楽しませてくれるはずだ。

「サーキットを走っても、目に入ってくるルックスがたまりませんね。カウルの存在感、カウルのステー類など、TZRを思い起こさせてくれました。公道ではちょっと前傾が強いかなとも思いましたが、サーキットでは本当にしっくりくる」と、走り以前にサーキットにもハマるそのスタイリングやコクピットの演出にご満悦の中野さん。R1やR6といった純スポーツと比べるとネックの位置が高く、どこか公道向けのセットアップに感じる部分もあったとか。

「公道ではXSR900と乗り比べていたこともあって、ポジション含めてずいぶん前下がりだなぁと思っていましたけど、サーキットの視点で見るとそれでもフロントが高いですね。あまり調子に乗ってペースを上げていくと、ちょっとフロントは気にかけてあげたい。でもXSR900 GPの良いところは十分に調整ができるサスがついているところ。ノーマルのバランスでも十分ですが、その先を求めるならじっくりセットアップも楽しめるのが魅力です」

画像4: ヤマハ「XSR900 GP」サーキットインプレ(中野真矢)

周回を重ねるごとに「もう少し」「もう少し」となっていくのはサーキット走行の常。最初はストリートモードで走っていた中野さんだが、XSR900 GPとシンクロすると、途中からコーナー出口に盛大なブラックマークがつくようになって……。

「ストリートモードは本当に良くできていて、スムーズで使いやすくかつ速くも走れちゃう。ですけどそのうち欲が出て、やっぱりもっと速く走るにはスポーツモードかな? とモードを切り替えました。ストリートモードでは純正装着のブリヂストンS23で十分良いバランスだったのですが、スポーツモードになるとスライドが起きて、ブラックマークだらけになっちゃいました(笑)」

画像5: ヤマハ「XSR900 GP」サーキットインプレ(中野真矢)

全てにおいてちょうど良い。サーキット走行会も楽しみたい。ストイック過ぎずに楽しめる。とXSR900 GPのサーキットでの立ち位置を絶賛していた中野さんだが、走りは常に工夫していて、1周1kmほどの短めのコースにもかかわらず1~4速までを駆使していた。

「高回転域を回し切るよりもトルクを使った方がスムーズだったり、色々試してました。シフトダウンしてからコーナーに進入した方が気持ち良かったりもするし。アクセルの開け口がとてもスムーズなのでスポーツモードでも1速から開けていけますね。この部分が唐突なバイクはコレができないですから。……うん、本当に気持ちがイイ。キャブセッティングがバッチリ出てるような感覚ですね(笑)」

画像6: ヤマハ「XSR900 GP」サーキットインプレ(中野真矢)

さすがレーサーである。「無理せず楽しめる」と笑顔で言っていても、気持ちはパフォーマンスを引き出す方向へとシフトしているのだ。そんな気持ちに応えるよう、タイヤの空気圧を走行ごとにチェック。最終的には温間で前後230kPaほどに落ち着き、またコーナー出口でしっかりとフロントをインに向けてアクセルを開けていけるようリアのプリロードを段階的に調整。ノーマルに対して4クリック締め込むに至った。

「フロントのしっかり感が出てきてだいぶ良くなりましたね! プリロードをかけたのはサーキット走行においては正解でしょう!」

ではワンランク上のタイヤを履きますか、RS11でも? と水を向けると「いやいやいや、これで良いんですよ」との反応。どうやら中野さんの中では「このちょうどいいバランスを崩さずに楽しみたい」ということらしい。

画像7: ヤマハ「XSR900 GP」サーキットインプレ(中野真矢)

「本当に扱いやすいんですよ。ネック位置こそ高めですけど前輪荷重もしっかりあるし、多少無理してもバタバタしないし。R1やR6だともっとライダーに色々要求してきますけど、XSR900 GPはそうじゃない。良いあんばいです」

世の中のヘリテージモデル、ネオクラシック系モデルの中ではかなりパフォーマンス系でありサーキットも意識していると思われるXSR-GPだが、あらゆる乗り方やあらゆるライダーを懐深く楽しませるバランスは高い次元にある。せっかくの「GP」なのだから、当時を回想してサーキット走行も楽しみたい。

ヤマハ「XSR900 GP」主なスペック・燃費・製造国・価格

全長×全幅×全高2160×690×1180mm
ホイールベース1500mm
最低地上高145mm
シート高835mm
車両重量200kg
エンジン形式水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒
総排気量888cc
ボア×ストローク78.0×62.0mm
圧縮比11.5
最高出力88kW(120PS)/10000rpm
最大トルク93N・m(9.5kgf・m)/7000rpm
燃料タンク容量14L
変速機形式6速リターン
キャスター角25゜20′
トレール量110mm
ブレーキ形式(前・後)ダブルディスク・シングルディスク
タイヤサイズ(前・後)120/70ZR17M/C(58W)・180/55ZR17M/C(73W)
燃料消費率 WMTCモード値21.1km/L(クラス3・サブクラス3-2)1名乗車時
製造国日本
メーカー希望小売価格143万円(消費税10%込)

文:ノア セレン/写真:安井宏充/ライダー:中野真矢

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