以下、文:ノア セレン/写真:南 孝幸
ホンダ「CB650R」VS カワサキ「Z650RS」|比較インプレ
こんなに違う2台に、共通して流れる「ロッパンらしさ」
ナニコレ面白い! CB650Rは4気筒で95PS、倒立フォークにラジアルマウントキャリパーや180のリアタイヤなど今風の装備が満載。 それに対してZ650RSは正立フォークにピンスライドキャリパー、リアタイヤも160とワンサイズ細くて、ずいぶん昔から使われている定番の68PSパラツイン。それなのにZの方が値段が高い!?
書き出しソコか! というツッコミが聞こえてきそうだが、ストイックなまでにベストバランスを追求するロッパン愛好家はコストにも厳しいのだ。ZはETCが標準装備されていたり、塗装が超上質だったりするけど、やっぱちょっと高くないか。逆にCBはちょっと安…くもないか。650というカテゴリーにおいて良心的かつ現実的な価格に抑えたホンダにまずは拍手。
引っかかっていたことを先に書いてスッキリしたぜ。まずはストリートで走り出す。CBは丸ライト風でテイスティさも持っていながら、ライポジはストリートファイター的でグラマラスなエクステリアゆえ、Zよりも大柄に感じられた。
しかし、低回転域でも扱いやすいしギアの入りも「さすがホンダ! 」と唸る精密さ。このスムーズさなら先日発表されたE-クラッチも要らないんじゃない? ってぐらい、クラッチにほとんど触らなくてもスコスコとシフトチェンジできてしまう。ハンドル切れ角も十分でストリートでも苦にならない。
Zに乗り換えると殿様ポジションになんだか懐かしい気持ちになる。サスの初期作動性も柔らかいし、足つきも数値以上に良好でまさに400ccの感覚。何の気兼ねもなくプラッと出かけたくなるような扱いやすさが好印象。
しかも熟成のパラツインはとてもトルクフルで、繋がり感のわかりやすいクラッチと合わせて日常的な速度域でもキビキビと思いのままの加減速が可能だ。乗り出すまでのハードルの低さ、毎日乗りたいと思わせる気軽さという意味ではZが一枚うわてか。
高速道路ではパワーで勝るCBが有利かと思いきや、必ずしもそうでもない。というのも常識的に使う速度域ではニンジャのパラツインも十分にパワフルだ。ただ高回転域まで回した時の爽快感はさすがマルチのCBが勝る。速度域が上がるほどに車体もビシッと感じられ、ワンランク上の作りが為されていると実感させられた。
ただ、2台とも高速道路を淡々と走るのはそんなに得意とはしないような印象もある。CBは防風性が皆無だし、Zはタンクが小さすぎて長距離ツーリングはちょっと難しく感じる。
2台がイキイキするのはやはりワインディングだ。振り回せる車格に十分なパワー、いやはや、楽しいこと! CBはバーハンドル仕様だが、兄弟車「CBR650R」の運動性をしっかりと感じさせてくれて、いつの間にかライダーはフロントタイヤに乗っかるような強い前傾姿勢をとっていて、グリグリとしたアグレッシブなコーナリングを楽しんでいた。
対するZは殿様ポジションゆえ後輪荷重が多めで、フロントを泳がせてスイスイとコーナーをこなすイメージ。路面が良いところならCB、舗装林道のようなところはZと得意なシチュエーションは分かれそうではあるものの、いずれの場面でも高い順応性を見せてくれるのはさすがベストバランスのロッパンクラスである。
むむう、一日乗って思ったのは、やはりこのクラスは万能だなという事。性能的に「足りない」と感じる場面もなければ、疲れが出てくる一日の終わりにサイズや重さによる、おっくうさを感じるようなこともない。装備の違いこそあれど、2台とも「良いバイク」であることに違いはないのだ。困ったことがあるとしたら、このクラスはライバルたちもみんな「良いバイク」だらけで、購入時には迷っちゃうこと。存分に悩みたいですな!
スペックオタクになってはいけないと自戒
「Zの正立フォーク! 10年前から変わってないじゃん」なんて最初は毒づいていたが、走ってみれば倒立のCBに対して劣ってる感じはなかった。そしてそれはブレーキも一緒。ラジアルマウントのCBに対してさすがにピンスライドではちょっと見劣りするだろう、なんて思っていたのに効きは十分。650らしく「実をとる」のはZの方かな?