以下、文:横田和彦/写真:南 孝幸
ホンダ「CB650R」VS カワサキ「Z650RS」|比較インプレ
ツーリングからスポーツ走行まで自分の力を発揮できる!
今回は650ミドルネイキッド対決なのだが、興味深いのは両車のアプローチの違いだ。2024年4月にモデルチェンジしたばかりのCB650Rは、次世代へと続くネクストスタンダード的なデザイン。上部がスラントしたLEDヘッドライトやタンク横にある特徴的な造形の吸気チャンバー、跳ね上がったテールカウルなど近未来的な雰囲気に仕上がっている。
対してZ650RSは、丸型ヘッドライトに2連メーター、高めのバーハンドルと昔ながらのバイクらしいオーソドックスな構成。ティアドロップタンクからテールカウルへのラインに往年の名車のイメージを折り込んでいるところもカワサキらしい。
エンジン形式にもそれぞれのメーカーのこだわりを感じる。CB650Rはクラス唯一の直列4気筒で、Z650RSは熟成の並列2気筒。これが両車のキャラクターの差となるポイントでもある。
CB650Rのセルボタンを押すと、流れるように並ぶ4本のエキパイがまとまった先にあるショートサイレンサーから連続した排気音が吐き出される。レスポンスも軽快で気分が盛り上がる。このサウンドはイイよねぇ!
走り出すとバーハンドルを上から抑え込むようなストリートファイターポジションがイイ感じ。リラックスできるのと同時に、ワインディングでは上体をひねるようにバンクさせていける。なんとも今時でスポーティな挙動だ。車重は重いが、それが車体を路面に押し付けてくれるようでバンク中の姿勢も安定している。そのためライダーは安心してコーナーに飛び込んでいける。
ただ高速道路などでアクセルを開けていくと、7000回転を越えたあたりからガソリンタンクの前下にあるエアクリーナーボックスが共振しはじめるような感じで、回転が上がると振動も増えていく。4気筒だから終始滑らかだと思いきや、ワイルドな味もあるなぁと実感。
個人的には4気筒の持ち味である高回転域まで抜けていくようなフィーリングが少しスポイルされているようでちょっと残念。ビシッと芯が通ったようなオンザレール感があるハンドリングに好感を持っていただけに、もう少し高回転域での振動が減っても良いのではと感じた。
またがるやいなや「おおっ、ハンドルが高い! 」と思ったのがZ650RSだ。背筋が伸びるような、なんともクラシカル感あるポジション。ガソリンタンクもスリムでニーグリップしやすい。さっそく走り出そうと車体を起こすと軽さに驚いた。
CB650Rよりも17kgほど軽い理由のひとつはエンジン型式だ。スリムで部品点数が少ない並列2気筒はカワサキ・ミドルモデルの伝統的なパワーユニット。熟成度も高く、低〜中回転域はトルクフルでありながら軽快に吹け上がり、高回転域での伸びも良い。装着されているタイヤが細めなこともあって、挙動は想像以上にクイック。
そのためミドルクラスとは思えないほどの軽快な走りを見せる。ワインディングではライン取りの自由度があり、コーナーリングスピードも高めでキープできる。立ち上がりでアクセルを開けると、ツインサウンドとともに後輪が路面をリズミカルに蹴飛ばして加速していく。
いいねぇ! さすが現代のザッパー、かなり好きな走行フィーリング! なんだけど個人的にはハンドルはもうちょっと低いほうがコントロールしやすいかな。ノーマルだとちょっと縦に長い感じがしちゃうんだよね。でもバーハンドルは交換しやすいから、好みのポジションを探すのも楽しめる。
2台を乗り比べたところ、高い安定感が味わえるCB650Rに対して、Z650RSは軽快なライトウェイトスポーツという印象。どちらも捨てがたいんだけど、今のボクがミドルネイキッドに求めている姿に近いのは、Z650RSではないかと感じた。でも4気筒の排気音や吹け上がり感も捨てがたいんだよねぇ。
タイヤサイズの違いも挙動に大きく影響する!
高剛性の車体に180サイズのリアタイヤを備えたCB650Rは、バンクさせるときの感覚がワイドなタイヤに沿って接地面が大きく動く現代的なもの。
対してZ650RSは正立フォークを備えた車体がしなやかにしなり、160という細めのリアタイヤの効果もあってわずかな荷重移動でも軽くシャープにバンクしていく。限界値はCB650Rの方が高そうだが、Z650RSのレトロ感あるハンドリングはすぐに馴染むフレンドリーさがある。