文:中村浩史/写真:柴田直行
スズキ「Vストローム 800」インプレ(中村浩史)
アドベンチャー的ルックスでストリートランも苦にしない
同じスズキのロードスポーツモデル、GSX-8S/8Rと同時開発された、軽量コンパクトなミドルクラスツアラーがVストローム800だ。兄貴分のVストローム1050/1050DEと同様に、800が前19/後17インチのキャストホイール、800DEが前21/後17インチのワイヤースポークホイールを採用する。両車を比べれば、やはり800DEの方がオフロード適性は高い。試乗したのは、中でもツーリング向けといえる800だ。
まずエンジンは、スズキがこの先10年、20年は熟成を続けていきたい、という新設計の水冷並列ツイン。GSX-8S/8Rと同じエンジンを搭載する。車体までを共通化したモジュールモデルで、基本骨格は同じだ。ただし、ファイナルレシオがショートに設定されて、ライディングポジションが大きく違うことから、まったく違うモデルに仕上がっている。
そしてこの新世代並列ツインはとにかく評価が高い。スロットルレスポンスが鋭く、低回転からスムーズにトルクが出て、高回転側ではさらにパワーが出てくるキャラクター。のんびり走るには振動なく快適で、スポーティに走ろうとすれば、800ccとは思えないパワーが湧き出してくる。
常用回転域は3000回転も回っていれば十分で、キビキビ走りたい時には、5500回転あたりからもう一段、パワーが上乗せされる印象だ。回転域ごとのパワーの盛り上がりがきちんと感じられる、エキサイティングなキャラクターに仕上げてあるのが特長だ。
アドベンチャー的なルックスとはいえ、このエンジンキャラクターはシティランもイージーにし、車体のコンパクトさが生きる、小さくクルクルと、扱いやすいスポーツバイクと言えるだろう。
この点が、兄貴分のVストローム1050/1050DEと大きく違うポイントで、兄貴分が活動レンジをハイスピードや超長距離にフォーカスしているのに対し、渋滞路でも苦もなく扱えるのが800/800DEのサイズや重量、そしてシート高というわけだ。
とはいえ、ハイスピードのクルージングもきちんと快適にこなすのが新世代モデルらしいところで、いざ高速道路に乗り入れて、トップギア120km/hでは約5400回転。このすぐ上からはパワーが湧き出てくる回転域となるから、スピードコントロールがイージーなのも、800/800DEの秀でた魅力になっている。
クルージング時のハンドリングは、直進安定性を担保しながら軽快さも持ち合わせたタイプで、これぞミドルクラスならでは。一日に500km以上走るなら1050、一日300kmぐらいというなら800、という役割分担ができている印象で、ロングセラーの1050がカバーする領域を、新世代の800がさらに広範囲に包み込んでいる印象だ。
そしてVストローム800は、新世代のツーリングスポーツらしく電子制御スロットルを採用し、加えてスズキ独自の電子制御システムSIRSを搭載している。これは出力特性を3段階に選択できるドライブモードセレクター、トラクションコントロール、シフトUP+DOWN両方向のクイックシフト、そして2段階のABS制御などが主な機能。冒頭に書いた、よりオフロード適性の高い800DEでは、リアタイヤのみABSを解除できるようになっている。
全方位にわたって、これといったウィークポイントが見つけられないほど完成度が高いVストローム800。アドベンチャー&ツーリング的ルックスでありながら、ストリートランも快適にカバーする利便性、そして足着きを含む捌きの良さはリッタークラス以上のアドベンチャーモデルにはない強み。欲を言えば、Vストローム1050に採用されたクルーズコントロールが欲しくなる。Vストローム800は、それほど長距離ランも快適なのだ。
スズキ「Vストローム 800」カラーバリエーション
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