バイクに付属する取扱説明書には必ずポジションの調整方法が明記してあるが、実際に行っている人は少ない。ポジションの合わないバイクは疲れやすくなるし、なにより上手くライディングできないもの。だから調整が必要だ!
文:丸山淳大/モデル:mii/写真:関野 温
※この記事は、月刊『オートバイ』2024年10月号に掲載したものを一部編集して公開しています。

自分に適したライディングポジション調整に挑戦!

画像: 自分に適したライディングポジション調整に挑戦!

バイク選びをも左右するポジションを最適化

クルマは運転前に必ずシートの位置を合わせ、ハンドルの高さを合わせ、最後にミラーを合わせると教習所で習うものだが、バイクは買った時のまま一切調整していないという人も多いのではないだろうか。バイクもある程度、体型に合わせてポジションの調整ができるので、これをやらない手はない。自分の体型に合わせてポジション調整すれば操作性は確実に向上するはずだ。

すでに免許を取得し、絶賛愛車選び中のmiiちゃんの最大の懸案事項は足つきと取り回しだ。これがハードルとなり、250ccか? はたまた高速に乗れない原付二種か? の二択で思い悩んでいるそうだ。

そんなmiiちゃんの気持ちがなかなかわからないのが、バイクは両足べったり、好きな食べ物は脂べったりのおじさんコンビ。スズキVストローム250を題材に、miiちゃんの体型でどこまでポジションを最適化させられるかやってみた。

新橋モーター商会 看板娘 miiちゃん

画像: 「ハンドルとレバーが少し遠くて足がつかな~い‼」(mii)

「ハンドルとレバーが少し遠くて足がつかな~い‼」(mii)

ソロキャンプ動画が大人気のYouTube チャンネル「mii camp【女子ひとり徒歩キャンプ】」で活躍中のmiiちゃん。最近、バイクの免許を取ったばかりの超初心者だけど、持ち前の負けん気で日夜レンタルバイクを借りて猛特訓中!

ブレーキレバー

画像: ブレーキレバー

工具不要で調節できる便利なダイヤル式レバー

小排気量車では装備されないケースも多いが、Vストローム250のブレーキレバーは5段階のダイヤル式調整機構を備えている。

これは最も一般的なタイプで工具無しで調整が可能だ。誰でも簡単に自分の好みのレバー位置に合わせることができる。ブレーキレバーのフィーリングはグローブの厚さによっても異なるので季節の変わり目などのタイミングで見直すのもおすすめだ。miiちゃんは最もレバー位置が近い「5」が良いようだ。

画像: 調整ダイヤルはレバーの根本に近い部分にあり。レバーを反対に引いた状態でダイヤルを回転させる。グリスが切れるとスムーズに動かなくなるので定期的に注油しておきたい。

調整ダイヤルはレバーの根本に近い部分にあり。レバーを反対に引いた状態でダイヤルを回転させる。グリスが切れるとスムーズに動かなくなるので定期的に注油しておきたい。

調整したブレーキレバーの位置

画像: 【ダイヤル1】一番遠い

【ダイヤル1】一番遠い

画像: 【ダイヤル5】一番近い

【ダイヤル5】一番近い

調整ダイヤル「1」と「5」をレバー先端部で比較すると約2cmの違いがあった。ブレーキがロックする前にグリップに当たって握り込めないのは危険なので「5」に合わせる際は要確認。

ブレーキペダル

画像: ブレーキペダル

ペダルが上に向きすぎても、下に向きすぎてもダメ

リアブレーキペダルの高さも多くの機種で調整できる。ディスクブレーキ車の場合、ブレーキロッドの長さを変化させることでペダルの高さを調整する構造となっており、基本的にスパナ2本で作業可能。

足首の角度が90度になるのが基本となり、長身のライダーは足首が鋭角になりがちなので、ペダルを下げる方向。小柄のライダーはペダルをしっかり踏み込めるように上げる方向へ調整を行う傾向にあるが車種によっても大きく異なる。


【作業のながれ】

画像: Vストローム250の場合、ペダルの高さ調整には10mmと12mmのオープンエンドスパナが必要になる。ナットをナメやすいのでしっかりした工具を使う。潤滑浸透スプレーの使用も有効。

Vストローム250の場合、ペダルの高さ調整には10mmと12mmのオープンエンドスパナが必要になる。ナットをナメやすいのでしっかりした工具を使う。潤滑浸透スプレーの使用も有効。

画像: ペダル側のロックナットを緩めて、マスター側のナットを回すことでブレーキロッド長が変化し、高さ調整を行うことができる。調整後はロックナットを確実に締め付けておく。

ペダル側のロックナットを緩めて、マスター側のナットを回すことでブレーキロッド長が変化し、高さ調整を行うことができる。調整後はロックナットを確実に締め付けておく。

調整したブレーキペダルの位置

画像: ペダル位置が一番低い位置

ペダル位置が一番低い位置

画像: ペダル位置が一番高い位置

ペダル位置が一番高い位置

ブレーキペダルが最も低い位置と最も高い位置とではペダル先端分に近い部分で約2.5cmの違いがあった。下げすぎると強く踏み込みづらくなったり、バンク時につま先を路面に擦りやすくなる。

miiちゃんの場合、純正位置から0.5cmくらい上げるのがベストだった。ペダル位置はシートの高さやライディングシューズによってもベスト位置は変わってくる。

\ 注意しよう /
ブレーキペダルの位置を変更したらブレーキスイッチの点灯タイミングも調整

多くの機種が採用する機械式ブレーキスイッチはブレーキペダルに連動してスイッチをオン・オフする構造なので、ペダルの高さが変われば、必ずブレーキランプの点灯タイミングが変化する。そのため必ず確認が必要だ。

画像1: バイクのライディングポジションを最適化! レバーやペダル、リアショックのプリロード調節方法を紹介【新橋モーター商会】
画像: ブレーキスイッチの写真は他機種のものだが、Vストローム250も調整方法は一緒。樹脂製のナットを回転させて最適な点灯タイミングに調整する。

ブレーキスイッチの写真は他機種のものだが、Vストローム250も調整方法は一緒。樹脂製のナットを回転させて最適な点灯タイミングに調整する。

クラッチレバー

画像: クラッチレバー

ワイヤー式クラッチレバーは調整ボルトを回すだけ

スムーズな操作のためにクラッチレバーの調整も欠かすことができない。多くのワイヤー式クラッチ車の場合、レバー根本部分のアジャスターで調整を行う。

作業にはロックナットを緩めるためのプライヤーがひとつあればOK。手が小さい場合、なるべくレバーの遊びを増やしてレバーを近くにしたいが、限度を超えるとクラッチが切りきれなくなる。

一方、遊びをゼロにすると常時半クラ状態になることもあるので注意が必要だ。

画像: 写真が調節ボルト。調整後はロックナットを確実に締め付けよう。

写真が調節ボルト。調整後はロックナットを確実に締め付けよう。

調整したクラッチレバーの位置

画像: クラッチレバーが一番遠い位置

クラッチレバーが一番遠い位置

画像: クラッチレバーが一番近い位置

クラッチレバーが一番近い位置

ロックナットを緩めて、アジャスターを伸ばせば(緩めれば)遊びが少なくなってレバーが遠くなり、反対に縮めれば(締め込めば)遊びが多くなってレバーが近くなる。

雨が入らないようにアジャスターのワイヤーの切り欠きを下に向けておくのがポイント。Vストローム250の場合、レバー端部で2.5cm程度の調整幅があった。

チェンジペダル

画像: チェンジペダル

チェンジペダルには「リンク式」と「スプライン式」がある

リアブレーキ同様、チェンジペダルの高さも調整ができる。チェンジペダルはリンク式とスプライン固定式に大別できて、それぞれ調整方法が異なる。Vストローム250はリンク式チェンジペダルなので、チェンジロッドの長さを変化させて調整を行う。

足でシフトをしっかり送り込めないとギア抜けを起こすが、ギア抜けを頻発させるとミッションの故障を招くので、そうした意味でもしっかりとチェンジペダルの調整を行いたい。


【作業のながれ】

画像: Vストローム250の場合、10mmのオープンエンドスパナを2本使用する。シフトロッドの車体前方側ナットが正ネジ、後方側が逆ネジ(右回しで緩む)となっているので、両方とも手前側に回して緩める。

Vストローム250の場合、10mmのオープンエンドスパナを2本使用する。シフトロッドの車体前方側ナットが正ネジ、後方側が逆ネジ(右回しで緩む)となっているので、両方とも手前側に回して緩める。

画像: 緩んだらロッドを回転させる。手間に回すとペダルが低く、奥に回すと高くなる。調整後は確実にロックナットを締めておく。

緩んだらロッドを回転させる。手間に回すとペダルが低く、奥に回すと高くなる。調整後は確実にロックナットを締めておく。

調整したブレーキペダルの位置

画像: 一番低いペダル位置

一番低いペダル位置

画像: 標準のペダル位置

標準のペダル位置

画像: 一番高いペダル位置

一番高いペダル位置

Vストローム250の場合、シフトペダル先端部の最低と最高で5cm近くの調整が可能だが、現実的には2cm程度の幅だろう。

身長161cmのmiiちゃんはブレーキ側同様、スタンダートより少し上げたところがシフトアップ時もダウン時にも操作性が良いようだ。身長180cmのマルは標準より下げないとシフトアップ時に足首が辛い!

番外編:スプライン式シフトペダルの調節方法は?

画像2: バイクのライディングポジションを最適化! レバーやペダル、リアショックのプリロード調節方法を紹介【新橋モーター商会】

細かな調整はできないが不満があるなら試してみたい

オフロード車や小排気量を中心に多く採用されるスプライン式のシフトペダルの場合、一旦ペダルを外し、ギザギザの山をずらして組み付けることでペダルを上下させることができる。

ただし、ひと山でも意外と大きくペダル位置が変わるので、細かな調整は難しい。ペダル位置に不満があるなら一度組み換えを試してみたい。

画像: 各部に干渉しない範囲でペダルを上げ下げした状態。

各部に干渉しない範囲でペダルを上げ下げした状態。

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