以前トライアンフ675に乗っていたノアだけに、3気筒の魅力は知り尽くしている。その中でもタイガー900 GT プロに搭載されている革新的な3気筒エンジンに興味津々のようだ。ノアが下した2台の3気筒エンジンマシンの評価に注目だ!
以下、文:ノア セレン/写真:関野 温

ヤマハ「トレーサー9 GT」VS トライアンフ「タイガー900 GT プロ」|比較のポイント

画像: YAMAHA TRACER9 GT ABS 総排気量:888cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒 シート高:820/835mm 車両重量:220kg 税込価格:149万6000円

YAMAHA TRACER9 GT ABS

総排気量:888cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒
シート高:820/835mm
車両重量:220kg

税込価格:149万6000円


画像: TRIUMPH TIGER 900 GT PRO 総排気量:888cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒 シート高:820/840mm 車両重量:222kg 税込価格:189万5000円~

TRIUMPH TIGER 900 GT PRO

総排気量:888cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒
シート高:820/840mm
車両重量:222kg

税込価格:189万5000円~

スペックは酷似しているのに、ずいぶん違う雰囲気

ご存知の方もいるかもしれませんが、僕はスズキのVストロームの超絶総合力を心から愛しています! なのでタイガーのフロント19インチとリア150幅の17インチは、Vストロームシリーズと同じというだけで「コレは良いバイク! 」という先入観があるんです。

フロント19インチは多少の不整地でもなんとかなりそうという安心感だけでなく、荒れたコンディションの舗装路でも懐深く応えてくれる面もあるからね! 加えてタンク容量も20Lで航続距離も見込めるし、これは英国版Vストロームじゃないの!?

対するトレーサー。スペックはソックリだけれども、こちらは前後17インチでサスストロークもオンロード寄り。もちろん、かつてのムルティストラーダや、今のKTM890SMTのようにアドベンチャーモデルの中にも17インチ仕様はあるけれど、トレーサーは誰がなんと言おうとロードモデル。

サスペンションが長くないから足がつきやすかったり、全体的にコンパクトだったり、よりダイレクトだったりする。やっぱりフロントホイール径の違いは、いろいろとメリット・デメリットがありそうだ。

ヤマハ「トレーサー9 GT」VS トライアンフ「タイガー900 GT プロ」|比較インプレ

画像: ヤマハ「トレーサー9 GT」VS トライアンフ「タイガー900 GT プロ」|比較インプレ

似て非なる2台のツアラー、トレーサーはライバル不在か

もう先に書いちゃおう。トレーサーはアドベンチャーじゃないぞ! スポーツ性よりも快適性を追求したカウルがついてて、タンデムや荷物の積載も考えたシート&キャリア類があって、距離を走ることを考えられているバイクだと、ついついアドベンチャーカテゴリーな気がしてしまうけどそうじゃない。

独自のポジションにいるのがトレーサーでヤマハでは「アジャイル(機敏)&ミニマリスト(最小限)・トラベラー」とうたっている。トレーサーはアドベンチャーというよりは、ホンダのCB1300スーパーボルドールなどの、かつて各社から出ていたカウル付ビッグネイキッドをモダナイズしたようなツアラーなのだ。

これを踏まえて2台の違いを比べてみると腑に落ちやすいと思う。

そのトレーサーだが、元となっているのはMT-09だから動力性能的にはとっても元気いっぱいだ。120PSという最高出力だけでなく、トルクフルなトリプルが常用域から力強さを発揮するさまはかつてのビッグネイキッド群より排気量が少ないことを補っているかのようだし、軽量な車体がもたらす運動性もとても現代的。

画像1: TRACER9 GT ABS

TRACER9 GT ABS

とくに4パターンのライディングモードを最もシャープな「1」に設定するとMTシリーズのDNAを誇示するかのような活発さを見せてくれ、ツアラー然としたルックスからは想像できない高いスポーツ性を楽しませてくれる。

対するタイガーは、車体もエンジンもしなやかさが印象的だ。独自のTプレーンクランクは120度トリプルのスムーズさをあえて崩して独特のトルク特性を追求。これがオフロードだと本当にトラクションに有利に働くそうだが、ツアラー/アドベンチャーとして見た時でも、場面を選ばない付き合いやすさという意味で恩恵があると感じた。

他のトライアンフモデルでは120度クランクもあるのだが、そちらはけっこうガオッ!とスポーツをアピールするのに対して、Tプレーンはカドが取れていてアクセルの開け始めや、その直後からのトルクの立ち上がりに優しさがあるのも魅力。これはオフロードだけでなく長距離ランにも向いた性格に感じた。

画像1: TIGER 900 GT PRO

TIGER 900 GT PRO

タイガーはハンドリングも優しい。サスが良く動くということと、19インチホイールをはじめとする車体の設定がそうさせるのだろう。その良く動くサスを特別意識せずに、ブレーキもソコソコに「ほらヨッ」とコーナーに放り込んでしまえば、バンク角が増えるほどにグイグイと内側に向いて、コーナーのアールに関わらず思いのほか積極的にクリアしていく。車体のピッチングを意識せずともオンザレール+αで曲がっていくのはBMWのテレレバー的な感覚もあって面白い。

対するトレーサーはフレームからしてビシッと筋が通っている頼もしさがあるし、足まわりも格段にロード向け。全体的に重心が低く、高速道路でもワインディングでも常にビシーッビシーッと走ってくれるダイレクトさが魅力。ただ一方で舗装林道など状況が悪くなると電サスにもかかわらず路面に弾かれるような感覚もあって、その弾かれ感が車体の振れにつながらないように、しっかりとしたニーグリップを求められた場面もあった。

結局振出しに戻ってしまう。タイガーはトライアンフ渾身のアドベンチャーだ。660から1200までラインアップするタイガーシリーズの大本命と言えるベストバランスに思えるし、それこそVストローム(650/800)などと同じガチンコのカテゴリーでスキもない。対するトレーサーは新世代ツーリングスポーツであり、舗装路でスポーティにツーリングを楽しむには最高のパッケージ。むしろ直接的なライバルが存在しないのが不思議なぐらいだ。

画像: 高い完成度の王道アドベンチャー トライアンフ「タイガー900 GT プロ」は大きな車格と状況を選ばない懐の深さ、そして意外にスポーティにも走らせられるのが魅力。19インチは深く考えなくても確かな接地感でグイグイと曲がっていってくれるぞ!

高い完成度の王道アドベンチャー

トライアンフ「タイガー900 GT プロ」は大きな車格と状況を選ばない懐の深さ、そして意外にスポーティにも走らせられるのが魅力。19インチは深く考えなくても確かな接地感でグイグイと曲がっていってくれるぞ!

画像: フロント17インチとビシッとしたフレームは次世代ツアラーの提案 ヤマハ「トレーサー9 GT ABS」は重心が低く、タンクも細く、着座位置もスポーティなトコロ。バイクと一体になってグイグイと走る感覚はとてもオンロード的で、夢中になって攻めちゃう。

フロント17インチとビシッとしたフレームは次世代ツアラーの提案

ヤマハ「トレーサー9 GT ABS」は重心が低く、タンクも細く、着座位置もスポーティなトコロ。バイクと一体になってグイグイと走る感覚はとてもオンロード的で、夢中になって攻めちゃう。

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