同じ旅バイクとはいえ、タイガーとトレーサーとでは目指す方向性がかなり異なる。果たしてスポーツライディングが大好きな横田は、予想どおり前後17インチのトレーサー9 GTを高評価するのだろうか!?
以下、文:横田和彦/写真:関野 温

ヤマハ「トレーサー9 GT」VS トライアンフ「タイガー900 GT プロ」|比較のポイント

画像: YAMAHA TRACER9 GT ABS 総排気量:888cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒 シート高:820/835mm 車両重量:220kg 税込価格:149万6000円

YAMAHA TRACER9 GT ABS

総排気量:888cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒
シート高:820/835mm
車両重量:220kg

税込価格:149万6000円


画像: TRIUMPH TIGER 900 GT PRO 総排気量:888cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒 シート高:820/840mm 車両重量:222kg 税込価格:189万5000円~

TRIUMPH TIGER 900 GT PRO

総排気量:888cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列3気筒
シート高:820/840mm
車両重量:222kg

税込価格:189万5000円~

ホイールサイズの違いは得意ステージの差に!

いかにライダーへの負担を最小限に抑えて、長距離をラクに走るか。そんなツアラーモデルの基本に加え、走る道のコンディションを問わない車体造りをしているのが“アドベンチャー”で、スポーティな挙動の車体を組み合わせたのが“スポーツツアラー”だとボクは勝手に思っている。

明確な区分けはないように思うんだけど、この線引きはそんなにハズしていないと思っている。

その視点で見ると、フロントのタイヤサイズはかなり大事。ワインディングでは17インチ車がスポーティな挙動をみせるから、舗装路をメインにルートを決めるような人であれば17インチ車がオススメ。タイヤの種類も豊富で選べるしね。

対して19インチ車は路面のギャップなどの外乱に強いのがメリット。だから出先でちょっとした林道も走りたいって人に向いている。

でもそれはあくまでも机上のハナシ。実際の乗り味はホイールサイズだけで決まる訳じゃない。言うまでもなくサスペンションの設定やエンジン特性など車体全体のバランスが重要になる。では今回の2台はどんなフィーリングなんだろう!?

画像: (左)TIGER 900 GT PRO:19インチ、(右)TRACER9 GT ABS:17インチ

(左)TIGER 900 GT PRO:19インチ、(右)TRACER9 GT ABS:17インチ

ヤマハ「トレーサー9 GT」VS トライアンフ「タイガー900 GT プロ」|比較インプレ

画像: (左)TRACER9 GT ABS、(右)TIGER 900 GT PRO

(左)TRACER9 GT ABS、(右)TIGER 900 GT PRO

3気筒エンジンのバイクだが、キャラはぜんぜん違うじゃん!

直列3気筒エンジンは四輪では比較的多いのだが、二輪では近年増えてきたエンジン型式。といっても現在ラインアップしているのはトライアンフとヤマハのみ。巷では「2気筒と4気筒のイイトコ取り」みたいな表現がされている。基本的には間違ってないそうなんだけど、実は直列3気筒の中にも個性がある。それを決めるのが「爆発間隔」だ。

トレーサー9 GTは3つあるクランクピンを120度ごとに取り付けた一般的な等間隔爆発方式だが、タイガー900 GT プロは90度ずつひねって配置。Tプレーンと呼ばれる不等間隔爆発を採用している。そのためアクセルを開けるとわずかにバラつくような排気音だ。

しかし、走り出すとトルクがなめらかに生み出されることを体感。振動も思ったほどではなく、回転を上げていっても微振動程度だ。パワーの盛り上がり感はなかなかエキサイティングだが、コントロールから逸脱しない手の内感がある。なにより足まわりの動きがしなやかで車体とのマッチングが良い。

荒れた路面であっても挙動が柔らかいので、不安を感じさせない。そしてハンドリングは「オフロードモデルをベースにしたツアラーモデル」ということが明確に伝わってくる安定志向。といってもダルいわけではなく、ライダーの意思どおりに動くので安心感が高い。乗り始めてから短時間でバイクとの信頼関係が構築できるフレンドリーなキャラクターなのだ。

画像1: TRACER9 GT ABS

TRACER9 GT ABS

走り出してすぐに「コイツはなかなかパワフルだぞ」と感じさせてくれたのがトレーサー9 GTだ。前傾シリンダーの直列3気筒エンジンは、これまでにもXSR900や同GPなどで体験してきた馴染みがあるもの。初めてじゃないんだけど、乗るたびにハイパワー感に驚かされる。この直列3気筒エンジンはモデルチェンジのたびに低〜中回転域での雑味が消えて洗練されてくるイメージなのだが、その分パワフルさが際立ってくる。

等間隔爆発なので振動が少ないかと思いきや、アクセルを大きく開けて回転を一気にグワーッと上げると、それなりにビリビリとくる。パワーに満ち溢れている感じだ。ただしクルージングに入ると荒々しさは影を潜めてスムーズに。さすがはGT(グランツーリスモ)だ。そのとき電子制御サスペンションはコンフォートモードがお薦め。さらにクルーズコントロールを使えば非常に快適な旅ライディングが味わえる。

両車とも旅バイクとしての完成度は高いが、長距離移動という点で見るとタイガー900 GT プロの方が優雅にこなせて好感をもった。しかしボクは出先でワインディグに遭遇すると嬉しくなっちゃう人。そこでの走りがバイクの印象を変えてしまうこともある。

タイガー900 GT プロは先にも言ったように挙動がしなやか。ブレーキングでのノーズダイブが自然で、コーナーリングのキッカケがつかみやすい。19インチのフロントタイヤはライダーが幅広のハンドルに入力することで狙ったラインをトレース。リアタイヤに伝わるトルクを感じながら気持ちよく立ち上がる。終始不安を感じない走りだ。

画像1: TIGER 900 GT PRO

TIGER 900 GT PRO

対して電サスの設定をスポーツモードにしたトレーサー9 GTは、コーナーの進入でフロントブレーキを強めにかけて17インチのフロントタイヤに荷重し、体重移動でクイッとバンクさせる。広すぎないハンドル幅とステップ位置がロードモデルで曲がるときのように体重移動をサポート。

そしてタイガー900 GT プロよりもコンパクトに旋回すると、鋭くパワフルに吹け上がるエンジン特性を活かして、豪快に立ち上がっていく。その一連の流れが実にスポーティでエキサイティングなのだ。「さすが、スポーツバイク由来のツアラーだなぁ」と実感。この感覚はスポーツライディング好きにはたまらない。

ライダーが操っている手応えが得やすいタイガー900 GT プロか、ロードスポーツのようなシャープな挙動のトレーサー9 GTか。ああっ、悩ましい!

画像: トレーサー9 GTは鋭くコーナーリング! 前後17インチホイールやアルミダイキャスト製の軽量フレームなどロードスポーツモデルと同レベルの装備を誇るトレーサー9 GT ABS。走りもロードスポーツに近く、峠道をシャープに駆け抜けていく。

トレーサー9 GTは鋭くコーナーリング!

前後17インチホイールやアルミダイキャスト製の軽量フレームなどロードスポーツモデルと同レベルの装備を誇るトレーサー9 GT ABS。走りもロードスポーツに近く、峠道をシャープに駆け抜けていく。

画像: すべてが優しい挙動でコントローラブル、親しみやすいツアラー タイガー900 GT プロはアクセル操作に対してなめらかにトルクが出る並列3気筒エンジンと、軽やかに凹凸を越えるサスペンション、確実に効くブレーキが高いレベルで融合する。また、大径フロントタイヤによってライダーが荷重移動するとバイクがわずかにあとからついてくるようにバンクする。しかし動きは自然なので「行きたい」と思った方向にスッと向いてくれるイメージだ。

すべてが優しい挙動でコントローラブル、親しみやすいツアラー

タイガー900 GT プロはアクセル操作に対してなめらかにトルクが出る並列3気筒エンジンと、軽やかに凹凸を越えるサスペンション、確実に効くブレーキが高いレベルで融合する。また、大径フロントタイヤによってライダーが荷重移動するとバイクがわずかにあとからついてくるようにバンクする。しかし動きは自然なので「行きたい」と思った方向にスッと向いてくれるイメージだ。

This article is a sponsored article by
''.