レポート:西野鉄兵
ホンダ「NX400」ツーリング・インプレッション
2泊3日のツーリングで走った走行距離は847kmでした。東京から中央道を使って南信州へ。長野県阿智村でキャンプをしつつ、周辺の峠を走って、最終日は静岡県浜松市まで南下。その後、新東名と東名を使って東京へ帰りました。
「NX400」はいつでもどこでも頼もしく感じました。一言でまとめるなら“ちょうどいいの一歩先”。その理由をソロツーリングライダー目線で、項目別にそれぞれ簡潔にお伝えしたいと思います。
積載性
キャリアは備わっていないものの、リアシートの積載性は◎! バイク用シートバッグなら最大級のものが難なく積めます。またロックストラップを使った積載も同じように簡単にできるでしょう。
ノーマル状態でもソロのキャンプツーリングは余裕でこなせましたが、純正アクセサリーとして、リアキャリア、トップケース、サイドのパニアケースなどが用意されています。フルパニアにすればタンデムでも泊まりがけのツーリングが楽しめますね。
高速道路の快適性と巡航速度
新東名高速の120km/h区間でも余裕たっぷり。体重73kgの私と装具+キャンプ道具で100kgを超えていたにもかかわらず、6速120km/hは6000回転ちょっと。最高出力46PSは9000回転・最大トルク3.9kgf・mは7500回転で発生するため、数値上もかなり余裕がありました。
6速のカバー範囲が広いのもいいところ。70km/hくらいから120km/hまで力強く加速します。とくに100km/hから120km/hへの加速が頼もしく、250ccクラスでは前をゆくクルマを追い抜くか悩みそうな場面でも、ひょいとパスできます。
スクリーンの恩恵も大きく、長時間の走行でも疲れにくい! 小雨がパラついたときに、上半身がほとんど濡れなかったのはありがたかったです。
水冷DOHCの2気筒エンジンは振動少なめ。2気筒のテンポのいい鼓動は感じられるものの、とにかくスムーズにふけあがります。
そしてサスペンションがいい! ショーワ製のSFF-BP倒立フロントフォークとリアのモノショックは、路面の細かな段差による衝撃をハイスピードで吸収してくれているのが伝わってきました。
それらと鋼管ダイヤモンドフレームを組み合わせた車体は絶妙で、高速道路ではしっかり芯の通った頼もしい硬さを感じました。なんだか以前、VFR800Xで長距離を走ったときのことを思い出しました。
高速道路で一番心地よく感じた速度域は110~120km/h。日本の公道ならどこでも安心して制限速度で走れます。
峠道での安心感
キャンプ道具を満載した状態でもスポーティな走りを楽しめるのは、嬉しいことです。ライディングポジションの自由度が高く、狭い峠道では、リーンアウトでコーナーの先をのぞきながら走りました。
ホイール径は前19・後17インチ。前後17インチのネイキッドの敏捷性にはかなわないものの、常識的な速度で目を三角にすることなく走るのが好きな人にはおすすめできます。
タイヤはダンロップのトレイルマックス ミックスツアー。オンロードを主にしたアドベンチャータイヤです。見た目の印象では、けっこうポコポコするのかと思ったのですが、舗装路で不快な感じはなく、グリップ力も申し分なく感じました。
フラットダートの走破性
高速道路では硬さが頼もしく感じたにもかかわらず、不思議なことにフラットダートではしなやかさを強く感じました。
はじめに未舗装路に入ったときは多少躊躇したものの、一度いけることが分かれば、オフロード走行もひとつの楽しみに。今回はキャンプ場の敷地などで草地と土の道、ちょっとした砂利道をちょこちょこ走りました。
フラットダートなら、わざわざスタンディングする必要もありません。
トラクションコントロールが搭載されているのも大きな安心感に繋がっていました。
本格的な林道走行は腕がないとなかなか厳しいと思いますが、オンロード中心の普通のキャンプツーリングでは、フルパッキング状態でもまず困ることはなさそうです。
足つき性と扱いやすさ
「NX400」のシート高は800mm。175cm・73kgで短足とよくいわれる私の場合、空荷だと少しかかとが浮きます。キャンプ道具を積むことで、ちょうど両足かかとの靴底が接地しました。
多少の傾斜があっても跨った状態で前後に動かせるので、SAや道の駅の駐車場で止める場所や向きを考えることはありませんでした。
跨った状態で両手をハンドルから離してジャケットのポケットからモノを取り出したり、スマホをいじったりできる、ぎりぎりめいっぱいのサイズ。これ以上大きかったり、シートが高かったりすると、不安に感じます。信号待ちのときに目薬をさすのが楽で助かりました。
ハンドルがよく切れるのも特長です。降りた状態での取り回しのしやすさはもちろんのこと、Uターンもしやすい車種です。
気になる小道や看板を見つけた際、ちょっと寄り道を楽しみたいですよね。それが億劫だと思わずに済む上限の車格だとも思いました。