文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2024年10月16日に公開されたものを一部編集し転載しています。
全日本電動車初勝利を成し遂げたのも、実は成田匠でした
トライアル世界選手権では以前より電動車の活躍が報じられていましたが、全日本でレギュレーション整備により電動車が正式参加できるようになったのは、昨年の2023年のことでした。そして今年の4月14日、玖珠トライアルヒルズで開催された2024全日本トライアル選手権第2戦のIAクラス、電動車として初の勝利を成田匠は記録しました。
成田 匠選手のコメント
「電動車が全日本トライアルという公式な大会、そしてガソリン車と同じ土俵で勝負して優勝できたことはとても嬉しく、歴史的なことだと思います。10年以上、電動車で色々とチャレンジして苦労もしていますが、それは次世代の環境状況に合わせた乗り物が必要だと感じているからです。こうして結果を残したことで、高いポテンシャルを持った市販の電動車があると皆さんにも認知され、車両を選ぶ際の選択肢も増えると思います。引き続き自分のノウハウを活かしながらEMの可能性を追い求めていきたいと考えていますし、電動車の楽しさを次の若い世代にも伝えていければと思います」
EMの日本正規代理店を営む成田の全日本IAクラスでの活躍は、日本のトライアルファンに電動車の可能性を示す伝道活動ともいえるでしょう(ダジャレすみません)。
1971年生まれのベテランが、歴史の1ページを書き加えました
第6戦までのIAクラスのシリーズの経緯ですが・・・成田は第1戦は4位、そして第2〜4戦は3連勝してランキングトップの座に立っていました。しかし6月下旬、レディースの大会のコース設営を頼まれてそれをおこなっていた際、猛烈な酷暑ゆえに熱中症になってしまい、その後遺症もあって第5戦広島大会は欠場する予定だったそうです。
ポイントリーダー不在によるノーポイントで、IAのタイトル争いをするライバルたちに得点が並ばれることも考えられましたが、台風の影響で第5戦は中止で代替開催もなしということになり、今年のIAクラスは第6戦と最終第7戦を残すのみということになりました。
第6戦のIAクラスで勝利したのは、2位に7点差(減点17)をつけた本多元治(ホンダ)。一方成田はクリーンは最多の12を記録するも、減点25で3位にとどまりました。しかしこの時点でランキング2位の平田貴裕(スコルパ)に対するリードが32点まで拡大したため、最終戦(SUGO大会)を待たずして成田のIAチャンピオン獲得が決定しました。
最高峰クラスのIASクラスではないものの、全日本格式のモータースポーツで長い期間を経て熟成されたICE(内燃機関)搭載車を相手に、電動車がタイトルを獲得したのはこれが史上初の出来事となります。これはとてもスゴイことだと思うのですが、あまり話題になっていない印象なのがちょっと寂しいですね。
IASのタイトル争いは、ますます混戦模様に・・・
今年の全日本IASクラスではヤマハ勢の電動車「TY-E 2.2」が大活躍して、タイトル争いを繰り広げています。そんな状況のなか、ファクトリーチームのHRCが藤波をライダーとして起用し、電動車のRTL ELECTRICを参戦させるというニュースは、トライアルファン以外からも注目されました。
第6戦は2003年のSUGO大会以来の全日本参戦となる2004年世界王者の藤波と、ファクトリー車のRTL ELECTRICのポテンシャルを見たい多くの観衆がつめかけた大会となりました。1ラップ目、藤波は首位になりましたが、ICE搭載車に乗る2位の小川友幸(ホンダ)とのギャップは2点という僅差。しかし2ラップ目で藤波は好走を披露し、2セクションで行われるSS(スペシャル セクション)の前に優勝を確定的なものにして、最終的には2位に減点で10の差をつけて圧勝しました。
2位はヤマハTY-E 2.2を駆る黒山健一が入賞(減点58)。3位に小川(同70)。ランキング首位だったTY-Eライダーのひとり、氏川政哉は5位(同78)という結果になりました。第6戦を終えてのランキングのトップに立ったのは黒山(91点)。2位の小川と3位の氏川は87点と同ポイントという状況です。
第7戦SUGO大会は、10月27日に開催されます。ホンダとヤマハの電動車対決、そしてタイトル争いの行方がとても楽しみな一戦となるでしょう。月末を楽しみに待ちましょう!
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)