文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事は「ロレンス」で2024年10月18日に公開されたものを一部編集し転載しています。
ヒーロー モトコープのラリーレイド挑戦は2016年から
ラリーレイド競技については有名なダカール ラリーくらいしかなじみがない人の多い日本では、残念ながらW2RC=FIM世界ラリーレイド選手権は報道量の少ないイベントになっています。成立は2022年と比較的最近のことで、1999〜2021年のFIMクロスカントリーラリー世界選手権が発展解消・・・4輪のFIAクロスカントリーラリーワールドカップ(1993年〜)と統合されて生まれた選手権です。
2022年からの過去2シーズン、マニュファクチャラーズタイトルはホンダが2連覇。ライダーズタイトルは2022年はサム サンダーランド(ガスガス)、そして2023年はルチアーノ ベナビデス(ハスクバーナ)が獲得。W2RCの対象となるのはラリーGPのクラスのみで、今シーズンは両部門制覇を狙うホンダと、インドのヒーロー モトコープの両ファクトリーの戦いという様相を呈していました。
なおヒーロー モトコープのラリーレイドにおけるファクトリー活動は、2016年のモロッコラリーから始まっています。かつての2気筒時代も現代の単気筒時代も、参戦時は常にダカール ラリーの優勝候補だったホンダを相手に、振興勢ヒーロー モトコープのエースとして戦ったのは、2019年に13位でダカール ラリーのベスト ルーキーに選ばれ、昨年からチームに加入したロス ブランチでした。
地元ボツワナのファンたちから"カラハリ フェラーリ"の二つ名が与えられているロス ブランチは、シーズン開幕戦のダカール ラリーと第2戦アブ ダビ デザート チャレンジでともに2位入賞。第3戦BPアルティメット ラリーレイド ポルトガルと第4戦デサフィオ ルタ 40 (アルゼンチン)ではともに5位に入賞と、優勝こそないものの安定したリザルトを積み重ねてきました。
ブランチは第2戦終了時にランキング首位に立ちましたが、リッキー ブラベック、エイドリアン ヴァン ベバレン、パブロ キンタニア、そしてトーシャ シャレイナという強力なラインアップを擁するホンダを相手に、首位の座を守り続けるのは容易のことではありません。
前戦のデサフィオ ルータ 40で優勝したブラベックは、ブランチとのポイント差を9点まで詰めていました。しかしブラベックは不運にも第1ステージで膝を負傷。モロッコラリーから脱落するとともに、タイトル争いからも脱落することになりました・・・。
"カラハリ フェラーリ"が、3人目の2輪ラリー世界王者に!!
タイトル争いのライバルが脱落したことで、ブランチを取り巻く状況はかなり優位なものとなりました。残りのステージは、チリ人の力強いチームメイト、"ナチョ"ことホセ イグナシオ コルネホに護衛についてもらうように並んで走り、タイトル獲得を強く意識したレース展開を実行しました。
優勝はホンダのトーシャ シャレイナで、ブランチは5位でゴール。その結果、ライダーズタイトルのランキングは、ブランチ、ヴァン ベバレン、シャレイナの順で1〜3位となり、見事ブランチがボツワナ人初のFIM世界選手権王者、そして3人目のW2RC王者に輝きました!
ヒーロー モトコープとブランチにとって、次の目標となるのは悲願のダカール ラリー初制覇でしょう。2025年のW2RCは、1月3日にサウジアラビアで開催されるダカール ラリーでスタートしますが、来シーズンは南米のデサフィオ ルタ 40 に代わり、アウス アフリカン サファリ ラリーが全5戦のなかに組み込まれることになります。同レースにW2RC王者としてアフリカ大陸に凱旋参戦するブランチにとっては、とても張り合いのあるシーズンになるでしょう。
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)