製作過程もオープンにして作業の見本ともなる車両
自らのGS1200SSに手を入れてきたことを原点にショップ開店に至り5年。多くの油冷モデルオーナーが車両製作や整備を依頼しているという飯田レーシングファクトリー。代表・飯田さんがプライベーター時代からもう20年以上、手を入れながら乗り続けてきたGS1200SSカスタムは、ショップのデモ車1号機として、周知される存在でもある。多くの油冷向けパーツや手法を試し、それをユーザーに提供するベースともなっていた。
ショップの活動とともにその存在が周知されたこともあり、少し前に飯田さんはTOT(テイスト・オブ・ツクバ)参戦も視野に入れた、GS1200SSのデモ車2号機を作ると公言。それがこのほど、聞いていた予定よりも早く仕上がった。それがこの車両だ。現在の状態と、その持つ意味を飯田さんに聞こう。
「この2号機は元々新しいプロモーション用で作る予定でした。1号機では油冷でやっておくこと、油冷に乗るうちに気が付いたことをほぼ全部、ヨシムラ8耐レーサーのスタイルとともに作り込んでいきました。2号機は同じようにヨシムラ耐久レーサーリスペクトなのですが、より走りを追求しています。保安部品を外せばそのままTOTに出せるくらいの作りにはなっています。
1号機はお店を出す前に出来ていたので実際の作業や加工の内容が分からないという声もあったんです。それで2号機では新たに作るということもあって、製作過程も当店のブログとインスタグラムで全部見せました。分解にフレーム補強、ステーほかワンオフパーツの製作にフィッティングなど。
すると油冷のオーナーさんが“こういうことができるんだ”“こうやって作るんだ”と内容に納得されて、イベント等で2号機の現車を見に来るとともに、作業やパーツの依頼をしてくださった。そこに意味はありました」
生産終了して時が経ち、整備やカスタムのための行き場(ショップ)が少なくなっている油冷ユーザーが、自身の車両に行える作業を具体的に感じ取った。その意味ではプロモーションは成功だ。飯田さんとショップにも、それ以上の収穫があったという。
「この2号機では、軽くすることと熱対策もコンセプトにしたんです。軽いことは取り回しも走りにも、各部の負担という面でも、いろいろな面で有利になります。2号機では刀鍛冶さんのGS1000Rタイプボディキットのカーボン製を使って外装も軽い。フレームはネック下への大型ガセット追加、左右メインフレーム後半部の下側にハーフパイプ追加、ほかにリヤショックマウントまわりの補強を入れています。それで装備190kg程度。乾燥で176〜177kgで、乗った感覚は400ccクラス並みの軽さになっています。
熱対策は、エンジンが1216cc仕様(1、2号機とも)なので放熱量も増やしたい。サブオイルクーラーが要るなと加えています。メインは純正で、サブは1号機はフロントカウル下に置いたのですが、2号機ではそこにスペースがなくて、ならばこうすると面白いかなとホンダRCB(’70年代〜’80年代序盤のファクトリー耐久レーサー)を参考にしてヘッドライト上に置くようにしたんです。
これでサブクーラーなしより15℃油温が下がりました。スクリーン内側なので導風用の穴が要るなと考えてスクリーンに穴開けしています。これが2段だと冷えなくて今の3段、少し広めの間隔で開けてみると効果が出ました。今後の車両に生かしていけると思います」
軽さはただ軽いのでなく、重心も意識して車両の芯を作るように。エンジンへのスリッパークラッチの組み込みに、バーエンドの重さのこと、作動後のディスクからの離れも考えたブレーキパッドの選択と、車両コントロールや乗車感覚を考えた車体構成も詰めてあり、それらで得たノウハウは今後お客さんの車両にも反映される。
飯田さんがカスタムに考える“走る、曲がる、止まるをきっちりこなして安心して乗れて、かっこいい(所有欲も満たす)”を体現し、作る様子もデモンストレーションにひと役買った2号機は、今後もテストを重ねていく予定。つまりこれをベースに、また新しい油冷の姿、もっとよく走る油冷車の姿が発信されていくということだ。
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Detailed Description 詳細説明
ヘッドライト上、ライダーから見てメーターの奥には4.5インチ×7段のサブオイルクーラーをマウントし、油温が従来より15℃下げられたという。
オリジナルでマウントパネルを作成し、スタックST200タコメーター/ヨシムラPRO-GRESS2テンプメーター/モトガジェット・モトスコープミニ速度計/モトサインミニ/PLX空燃比計等で構成されるメーター。スクリーンにはサブオイルクーラー用の通気用ホールが開けられる。
ステムは飯田レーシングファクトリー製「オリジナルφ43正立ステムKIT」。7075材製で市販中。カウル/サブオイルクーラーステーはワンオフされている。ロアフォークブラケット前側にオーリンズ・ステアリングダンパーもセット、左右マスターはブレンボCNCレーシング。
外装はアルミインナータンクも含めてカスタムファクトリー刀鍛冶の「GS1000Rタイプボディキット(カーボン)」を使い、ステー類は飯田レーシングファクトリーワンオフ。ミラーはマジカルレーシング・レーサーレプリカミラー・タイプ3ヘッドを使う。
フレームの補強はネック下に逆V字状ガセットを追加、メインフレーム後半下側にハーフパイプ追加(左右)の計3カ所。シートレール部は新造していて、シートやフェンダーレス等は飯田レーシングファクトリーオリジナル。これら作業の進行や内容は更新頻度の高い同店ブログに随時上げられた。
外観は刀鍛冶外装キットの選択でも分かるようにヨシムラGS1000R(1980年の鈴鹿8耐優勝車)イメージでまとめる。ウインカーは超小型LEDのキジマNANOでリヤは写真のようにナンバーホルダー左右にセット。フロントは下側カウルステー両側にセットしている。
エンジンは飯田さんのGS1200SS・1号機同様にφ81mmピストンによる1216cc仕様で、この2号機ではワイセコピストンを使う。カムもヨシムラST-2、ロッカーアームはGSX-R750RKの軽量タイプをセット、バルブリテーナーはチタン。TSSスリッパークラッチも組まれ、外観はセラミックコート仕上げ。ヘッドカバーボルトにはm-tech&βチタニウム チタンヘッドカバーボルトセットを使った。
吸排気はサイドリンクのTMR-MJNφ40mmキャブレター+ワンオフのチタン輪切りマフラーという組み合わせだ。写真の真ん中上あたり、フレームの下側にハーフパイプ補強が加わっているのが分かる。
キジマNANO・超小型LEDウインカーは、フロント用はカウルステーの前(写真ではヘッドライトの後ろ下、カウルサイド固定ボルトの前)に固定される。
フロントフォークはオーリンズFF521で、フロントブレーキはブレンボGP4-MSの新型フィン付きキャリパーにサンスター・ワークスエキスパンドディスクφ320をセットした。
リヤブレーキはブレンボGP2-SSキャリパー+サンスター・プレミアムレーシングディスクφ250。前後ホイールはO・Zレーシングのアルミ鍛造、GASS RS-Aの3.50-17/6.00-17サイズとする。
リヤサスはGS1200SS純正スイングアーム下側にスタビ追加、エンドピースに飯田レーシングファクトリーの新作スタンドフック&ベースセット(GS1200SS/INAZUMA1200/750/400用、4万9500円)を組んだものにオーリンズ・グランドツインをセットする。ドライブチェーンはEK ThreeDだ。