文:太田安治、オートバイ編集部/写真:南 孝幸
ホンダ「GB350 C」インプレ(太田安治)
のどかに走りを楽しめる穏やかなフィーリング
GB350のデビューは2021年春。丸みを帯びたデザインと常用速度域で扱いやすいエンジン特性が評価され、エントリーユーザーからリターンライダーまで幅広い層から支持されるヒットモデルとなった。
1970年前後のCBシリーズを想わせるGB350に対し、今回加わった「C」は、前後のディープフェンダー、フロントフォークのインナーチューブカバー、白いパイピングを施したセパレートシートなど、1950~60年代のフォルムを外連味なく再現したレトロな仕様。昔風に「単車」と呼んでも違和感のない雰囲気だ。
乗り味は牧歌的と言えるほど穏やか。空冷の冷却フィンが美しいエンジンは最大トルクを3000回転で発生するとあって、ゼロ発進の力強さが印象的。街乗りでは3000回転前後を使うことが多いが、2~4速ギアの守備範囲の広さとスロットルのオン/オフに対するマイルドな反応により、マニュアルミッションに不慣れなライダーでも操作に戸惑うことなくスムーズに走れるし、逆に多くのオートバイを乗り継いできたベテランなら、シングルエンジンが生むトルクを体感してギアを選び、スロットル開度を調整してパルス感を楽しむ、という楽しみ方ができる。
最もロングストロークの「味」が濃く出るのは5速・60~70km/hあたりで、2000回転台からスロットルを大きく開けて加速すると「パパパッ!」という排気サウンドが耳に心地よく響く。100km/h巡航でも不快な振動はなく、高速道路クルージングも快適。
ただし120km/h区間ではパワー的に余裕がなく、上り坂や風向きによってはスロットル全開を余儀なくされる。同様に勾配やコーナー曲率のきつい峠道を爽快に走り抜けることも難しいが、エンジンが頑張ってパワーを出している状況を愛おしく感じるのも事実。これはGBシリーズの不思議な魅力だ。
「C」はスチール製前後フェンダーや頑丈なステー類を採用しているため、車重はスタンダードのGBより7kg重い。取り回しや極低速域ではスタンダードと比べて僅かに粘っこさを感じるが、乗り比べて気づく程度。20km/h以上になると違いは感じなかった。
コーナーではリアタイヤのバンクに少し遅れてフロントタイヤの舵角が付き、大らかにラインをトレースしていく。キャラクター的に前後サスペンションがフワフワとソフトに動くセッティングをイメージしていたが、意外に締まったロードスポーツモデルらしい設定。これは乗り心地と旋回時/加減速時の姿勢変化のバランスに拘った結果だろう。
ライバルはロイヤルエンフィールドのクラシック350だが、前後サスペンションの作動性、疲れにくい振動の質、メカニカルノイズの少なさはGBに分がある。エントリーユーザーが安心して乗れるのもGBの方だろう。
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