内燃機関(ICE)の可能性を追求した「FUNコンセプト」
2024年11月5日、世界に衝撃が走るコンセプトモデルがホンダから発表されました。その名も「ICEコンセプト」。EVやらハイブリッドやらが取りざたされがちな昨今ですが、このバイクは内燃機関(ICE)の可能性を追求し、ガソリンエンジンならではのパワーフィールや楽しさを追求したコンセプトです。
もちろん、未来に向けた多様性もちゃんとフォローしていて、EM1e:やCUVe:などのBEV(バッテリーEV)モデルもしっかり開発しているホンダ。今回のミラノショーでもEVのFUNモデルコンセプトとアーバンコンセプトを発表しましたが、その一方で、ガソリンエンジンの楽しさも忘れていませんよ、とばかりに、こうしたコンセプトを開発しているのは本当にスゴイこと。いつも僕らをアッと言わせるホンダに拍手を送りたいと思います!!
独創のV3エンジン+電動過給機を採用! 果たしてその排気量は?
今回初お披露目された完全新設計エンジンは、水冷のDOHC4バルブ・V型3気筒。エンジン挟み角は75度で、前後長を切り詰めることで、コンパクトなサイズを実現しています。排気量についての発表はありませんでしたが、かねてからの噂によれば、850~900cc近辺らしい、とのこと。コンパクトで十分なトルクがあって、3気筒ならではの独特のパルス感も楽しめる、飽きの来ないエンジンとなりそうです。
しかも! これだけではなく、ホンダはこのユニットに、二輪車用としては世界初の電動過給機を組み合わせています。なぜ電動なのか…というのも大きなポイントで、排出ガスを使ってタービンを回すターボや、クランク軸の回転から動力を取り出すスーパーチャージャーと違って、電動とすることで好きなタイミングでタービンを回す、つまり過給を行なうことができるわけです。
これにどういうメリットがあるかと言うと、低中回転域から過給してトルクを増強することもできるし、高回転域で作動させて大排気量車をもしのぐパワーを出すこともできる、すなわちマシンのキャラクターに合わせたパワー特性、しかもかなりの高性能に仕立てることができるわけです。それでいてサイズはコンパクト。もう今から楽しみで仕方ありません!
ちなみに、過給機を搭載する場合、エアボックスに充填する混合気の温度が圧縮により上がってしまうため、四輪の高性能モデルの場合だと、そうした温度を下げ、充填効率を高めるためにインタークーラーを使用したりするのですが、今回のコンセプトはコンパクトなサイズを重視して、パイピングの取り回しが複雑になり、スペースを取ってしまいがちなインタークーラーを必要としない設定とされているのも特徴のひとつです。
トレリスフレームを使った車体は非常にスリム!
このV3ユニットを搭載する車体関係ですが、フレームは(詳細未発表なので推測ですが…)鋼管トレリスフレームにピボットプレートを締結した構成として、コンパクトなエンジンの利点を最大限に活用しています。
見てください! このスリムな車体! 車重などは当然発表されていませんが、これだけシンプルでコンパクトな構成ならば、軽量な車体を目指しているのは一目瞭然です!
ちなみにフロントフォークはショーワ製のSFF-BPでフルアジャスタブルタイプ、リアのスイングアームは片持ちのプロアーム。リアショックはリンクを持たない直押し式でプリロードと(おそらく)伸び側の減衰調整が可能。タイヤは前:120/70ZR17、後:200/55ZR17で、ピレリのディアブロロッソIVを履いています。
久々復活のホンダV3、複数のバリエーション展開にも期待!
ホンダV3…と言えば、1980年代を彩った、数々のマシンを思い浮かべる方もいるかと思います。F・スペンサーのライディングで栄光をもたらしたGPマシン・NS500をはじめ、独創のテクノロジーで話題を呼んだ2スト250スポーツのMVX250F、そして本格2スト400レプリカのNS400R…。今回登場したこのICEコンセプト、もし市販車が2025年にデビューすれば、実に40年ぶりの「ホンダV3復活!」となるわけです。
コンセプトモデルと言えど、ここまでの完成度ですから、ひょっとしたら市販車の登場も近いかもしれません。カウル付きスポーツ、スポーツネイキッドは容易に想像できますが、アップライトなポジションのクロスオーバータイプのスポーツツアラーや、ネオクラシックスタイルも似合いそうです。夢にあふれたICEコンセプト、さらなる情報は月刊『オートバイ』2025年1月号でたっぷりご紹介しますのでお楽しみに!
V3エンジンコンセプト・プロモーションビデオ
ICEコンセプト・フォトアルバム
レポート:松本正雅