文：北岡博樹／写真：岩瀬孝昌
超高回転型4気筒エンジンの『ローギア1速』に戦慄した……
ひょんなことなら乗ることになったカワサキの400ccスーパースポーツ『Ninja ZX-4RR KRT EDITION』なのですが……乗る前にもっていたイメージと、実際に走り始めてからの感触があまりに違いすぎて混乱ぎみ。
こいつは只ものじゃねぇ……という気配だけは察することができましたが、街中ではそれ以上のことはわかりません。まぁ、スーパースポーツだもんね。街中を走るバイクじゃないし。
先の【前編】でもお伝えしましたが、ZX-4RRはクラッチミートさせるエンジン回転数がすこし高めなことに感覚が馴染めば、街中でも普通に乗れます。特にギクシャクすることも無し。
なんならスムーズで快適なシティクルージングも楽しめるレベルです。
ライダー身長176cm
そう思う理由のひとつがライディングポジションでした。うえの写真のように着座位置を見定めてキッチリ構えると、そこそこの前傾姿勢です。
でも600ccとか1000ccクラスのスーパースポーツにありがちな『ライディングポジションで既に土下座状態』ではありません。それなりに、ですが街乗り中は上半身も起こせます。
ライダー身長176cm
あとは足つき性も良いです。シート高800mmは低いわけじゃないけど『高すぎる』というほどでもない。車両重量が189kgという軽さなのも手伝って、短時間の街乗りで疲れを感じるようなことは無さそうです。
それにしても400ccとはいえ重いはずの4気筒エンジンで装備重量189kgって……スゴいなぁ。まぁ今回のZX-4RR KRT EDITIONはお値段にして実に118万8000円（10％税込）なので、それくらいは当然なのかもしれませんが。
ワインディングへ向かう途中に色気が出た……
すこし脱線しましたが、話は戻ってワインディングへ向かう途中。
高速道路に乗った時のことです。
これがちょっとスゴかった。
スピードの感覚が狂う。実際の話、高速道路クルージングでの乗り心地も悪くなくてツーリングも楽しめそうだと感じます。スーパースポーツらしさを感じるサスペンションのセッティングだけど、不快な突き上げなどは皆無。
リア側に対してフロントがすこしソフトに設定されているのも手伝って、快適なクルージングが楽しめます。防風性能もお見事！ 超高速域でのエアロダイナミクスが追求されているのだと思いますが、それが副次的に高速道路に快適さをもたらしています。
だけど困るのが先に言ったスピード感です。
バイク自体は高速道路のクルージング速度でも余裕ありすぎ。高回転を使わなくてもしれっとスピードが出てる。いや……出すぎてる!?
乗り手側はトバしてるつもりが無いのに、いつの間にか法定速度を超えてしまいそうになるんです。これはちょっと気を付けないと『無自覚に免許が危なくなる』と感じます……
高回転域まで回さないうちはサウンドも控えめだし、エンジンは存在を消したかのごとくシュルシュルと回転数だけが上がっていきます。そこに加えて、車体のしっかり感がとにかく強くて……一般的なバイクと『速度感』が違う。
俺は棲んでる領域が違うんだぜ？ とバイクが無言で伝えてくるような……
そこで、ふと思ったのです……余裕がありすぎて色気が出たというか。
このバイク、レッドゾーン15000回転なんだよな……
例えば1000ccのスーパースポーツって1速ローギアでもとんでもないスピードが出るんだけど、400ccのスーパースポーツってどうなるんだろ？ 純粋に興味津々なんだが。
……気になったので実験してみた。
いちばん左の走行車線で前後のクルマを確認して、安全を確保。トップギア6速から様子を見つつ慎重に1速ずつギアを下げていく。回転数も見ながらで……
5、4、3、2……1速ローギア！
レッドゾーン手前！
メーター読み……
89km／hだと!?
嘘だろ……いやこれ単純に「速度だけ」で言うならギア1速で高速道路を走れるし……
さすがにレッドゾーン付近で回し続けたらエンジンに良くないので実験は一瞬で終了しましたが……とんでもねぇな。本当に400ccかよ。
だって考えてみてください？ この後ワインディングに行くんですよ？ みなまで言わずとも……わかりますよね!?
峠の走り程度なら……
ローギア1速だけで足りちゃうじゃないかあああぁぁぁーーーーっ！？
レースのDNA……ZX-4RRの真髄はMAX80馬力のパワーじゃなかった!?
