同じスタイルでレギュレーション上限スペックを体感

市販車のシルエットをそのままに、排気量以外は大きく手が入ったスーパーカスタム的なマシン群が覇を競った’80年代のAMAスーパーバイク。日本車の進化とその先が投影されたマシン群や魅力あるライダーたち、そして彼らの激闘とも言える走りが強く印象に残り、今も多くのファンがいる。

当時の4気筒750cc/1000cc市販車群がベースだから当時の車両をベースにさまざまなレプリカ・カスタムも生まれてきたが、この車両もそんな1台だ。AMAスーパーバイクの’88年開幕戦、デイトナ200マイルで優勝したケビン・シュワンツの’88GSX-R750Jのレプリカとして作られたもの。オーナー・橋本さんにとってはその’88デイトナ・シュワンツレプリカの2号機となる車両で、その1号機は実車にも使われたのと同様のサブオイルクーラーや、自作の各部ステッカーなど、細かいレプリカ度が目を惹いた1台だった。その車両は今も愛用していて、エンジンはSTDだった。

画像1: 同じスタイルでレギュレーション上限スペックを体感

そこに、増車という形でこの“2号機”が加わったのだ。ベースは同じ’88GSX-R750Jで、ルックスは1号機とほぼ同じ。だが、内容が異なる。注目はエンジンで、750ccを上限としていた当時のAMAスーパーバイクで、車両オーバーホールの都合上認められていた1mmオーバーサイズピストン仕様、769ccにしたのだ(同じ頃の全日本選手権では排気量1%プラスが上限での756ccまでを認可)。その、レギュレーションで認められた1mmオーバーサイズピストンを組むことを当初から想定して2号機の製作を考え、飯田さんに作業を依頼した。現役から35年という時間が経つこともあって、ピストンは国内外どこを探してももうない状態。それでも橋本さんと飯田さんはそれ、おそらく世界で入手可能な最後の1セットと思われる純正オーバーサイズ品を4個揃いで探し当て、ようやく手に入れて、このように完成に至った。

早速エンジンを組み上げて実測したところ、その1mmオーバーサイズが効いてノーマル実測の後軸68〜69PSが105PSになったという。

画像2: 同じスタイルでレギュレーション上限スペックを体感

「クランクでは120PSくらいでしょう。トルクも元の6.7kg-mから7.2kg-mくらいに上がり、ノーマルでは7000rpmからパワーの出る2ストみたいだったR750Jが、1200みたいにスタートからぐっと前に出るようになったんです」と飯田さん。もちろん同店でのヘッドチューン、同じくGSX-R750J用に設定のないTMR-MJNキャブレターを組み合わせられるようにしたことも効いているはずだ。

車体側に関しても1号機のスタイルを踏襲しつつ、スイングアームに補強を加えたりホイールをMAGTANにしたりというスープアップも行う。さらにサイレンサーをカット加工したり、ウインカーを超小型のキジマNANOにするなどでレプリカのレベルをより高めている。飯田さんがカスタムに考える“走る、曲がる、止まるをきっちりこなして安心して乗れ、かっこいい(所有欲も満たす)”。

少し前にこの欄で紹介した飯田レーシングファクトリーGS1200SS・2号機同様に、橋本さんの’88GSX-R750J×2台にもそれはしっかりと現れている。橋本さんは1号機・2号機それぞれの違いも楽しんでいるのだが、それもいい。

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純正同配置のメーターはパネルをカーボンに変更、ヨシムラ・プログレス2マルチテンプメーターを追加。ハンドルはバトルファクトリー特注の垂れ角0度、フロントマスターはニッシン・ラジアル。ウインカーはカウルのノーマルウインカー用穴を埋めた上で超小型LEDのキジマNANOに換装済みだ。

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ステップは当然ながらヨシムラ。カウルステッカー類はオーナー・橋本さんが自作したもの。

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キャブレターはTMR-MJNにGSX-R750J用がないため他機種用のTMR-MJNφ36mmをスピゴット延長加工等行って装着している。

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排気系はヨシムラ・ステンレスエキパイに飯田レーシングファクトリーワンオフφ60.5mmテールパイプと同じくワンオフのφ100mmアルミサイレンサーをセットしサイレンサー前端をカット加工。このテールパイプ&サイレンサー(エンブレムは除く)は同店で製品化の予定もあるとのことだ。

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エンジンはスズキ純正の1mmオーバーサイズピストンを4個揃いで探し当ててバリ取り加工やリングへのWPC加工を行って組み、769cc仕様に。バルブもWPC加工しスプリングは新品、面研ほかファインチューンも行い後軸105PSを実測と、純正状態での69PSから50%近くパワーアップして当時のレースチューンを実感。車体左側にWPステアリングダンパーも備える。

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フロントフォークはφ43mm純正にWPスプリングを組む。フロントブレーキは純正ニッシン4Pキャリパーのピストンにカシマコートを施した上でサンスター・カスタムディスク(φ310)を組み合わせた。

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リヤサスは純正スイングアームに飯田レーシングファクトリーで'88デイトナレーサー同様の上側スタビを追加した上でオーリンズショックをセットする。

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リヤブレーキは純正対向2Pキャリパーにサンスター・カスタムディスク(φ240)の組み合わせ。3.50-17/5.50-17サイズのMAGTAN JB1ホイールにはミシュラン・パワーGPの120/70ZR17・180/55ZR17サイズを履かせる。

取材協力:飯田レーシングファクトリー

レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部

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