文:太田安治、オートバイ編集部/写真:赤松 孝
アプリリア「RS457」インプレ(太田安治)
コーナーもストリートも楽しい絶妙なサス設定
イタリアのアプリリアはスクーターからオフロード車、アドベンチャー、ロードスポーツまで幅広くラインアップするが、中でもフルカウルをまとった生粋のロードスポーツとして位置付けられるのが「RS」シリーズ。
1100ccのRSV4と660ccのRS660はヨーロッパや日本国内でスポーツ志向のライダーから高く評価されているが、今回加わったのがRS457だ。457という車名からRS660のスケールダウン版を想像しがちだが、エンジンから左右分割式のアルミフレーム、前後の足まわりまで完全に新設計されている。
並列2気筒エンジンのピークパワーはEUのA2免許上限値に合わせた47.6HP。A2免許は出力規制のみで日本の普通二輪免許のような排気量制限はないので、どこか半端に感じる457ccでも不都合はない。ただ、日本では大型二輪免許が必要になる。
約48PSという出力は国内のニンジャ400やCBR400Rと同等。ところがパワーフィーリングはかなり異なる。特にゼロ発進が力強く、クラッチとスロットルの操作に気を使わずに済む。ストリートユースなら3000回転台でシフトアップしてもスムーズに速度が乗り、6速・40km/hからでもグズらずに加速する。試乗後に調べると3000回転で最大トルクの82%を発揮するというから、吸排気系も中回転域に合わせた設計になっているのだろう。排気量の余裕と合わせ、600ccエンジン並みのトルクを感じる。
ただし、RS660のような高回転域で弾けるようにパワーが出るキャラクターではない。1万回転までストレスなく回るが、70000回転からは意図的にパワーを抑えているようでフラットな加速感が続き、エキサイティングさは薄め。だがこれが路面の荒れた部分の多い峠道では実に扱いやすく、積極的に開けられる楽しさを生んでいる。
もうひとつ、想像と違っていたのが車体の剛性バランスだ。RSV4とRS660はレース志向のハイグリップタイヤを装着して本格的なサーキットを走らせたときに真価を発揮する剛性が与えられていて、前後サスペンションも締まったセッティング。
対してRS457はフレームにガチガチ感がなく、サスペンションもストリートユースでストロークを有効に使える設定。ギャップ通過時の突き上げが少ないので乗り心地が良く、400ccや250ccの一部モデルと同じタイヤ幅なのでハンドリングも軽い。
RS660の走行適性はサーキット60%、ワインディング30%、ストリート10%というイメージだが、この457はワインディング50%、ストリート40%、サーキット10%といったところ。6速・100km/h時は5000回転で、不快な振動もなく、高速クルージングも快適にこなせる。
この内容で85万8000円は間違いなく安い。MotoGPでも活躍するアプリリアを駆る悦びを手軽に楽しめる一台だ