以下、文:ノア セレン、丸山淳大/写真:南 孝幸、関野 温
ヤマハ「FZR750」(1987年)|各部をチェック(ノア&マル)
▶ノアが選ぶ車両の極品ポイント
1.足つき性

回帰したいよね低いシート、ステップに膝がつくぜ!
近年のスポーツバイクはみんなシートが高くて、それに連動してマシンを操るハードルも高くなってるけど、80~90年代はスポーツバイクもシートが低かった。ライダーをどこに座らせるかは時代によって考え方が違うものの、公道で乗ることを思えば低いシートは大歓迎。
ちなみにタンデムシートは少し尻上がりで落ちにくくなってるのも優しさか!?

2.タイヤ

誰か偉い人、細身タイヤの良さをマジで説いてくれ!
今やスポーツバイクのリアタイヤは180幅が当たり前だけど、細身タイヤはヒラヒラしていて接地感がわかりやすくてとても良い! タイヤだけではないだろうけどFZRのハンドリングはホント最高。XSR900 GPもリアを160にしたらもっと良くなるだろうな。誰か偉い人、声をあげて下さいよ~!
▶新橋モーター商会 店主・マルの全方位チェック
1.エンジン

前傾のメリットはともかく乗ったら良かったジェネシス
目玉は思いっきり前のめりの前傾5バルブの「ジェネシスエンジン」である。前傾したシリンダーヘッドに真下を向いたダウンドラフトキャブレターが乗っかって、その上にエアクリーナーボックスが乗った80年代ヤマハ革新の三階建て。
ハーフカウルのFZ750は、その大事な“具”をあけっぴろげに見せつけていたが、FZR750ではフルカウルの中に隠し持っており、より狂気性を感じさせる。知らぬ人ならカウルを外して二度見だ。現在乗ってみるとパワーは下から力強く、高回転まで淀みなく回る。
扱いやすさと気持ち良さを併せ持っており、好印象。この前傾5バルブエンジンはFZX750やFZR1000にも搭載されたが、いかんせん現存台数は少ない。部品の入手に苦労してお別れする悲しい未来が見え隠れ。
2.フレーム

三角+箱型=デルタボックス、中古車は表面の点サビに注目
さらに目玉となるのが「デルタボックスフレーム」である。改めて調べるとフレームヘッドパイプ上下とピボットを結ぶ線が三角形になることから“デルタ”と名付けられたそうで、スズキの“デカ”ピストンに次ぐギリシャ語シリーズであった。
このフレームはヘアライン仕上げで、保管状況が悪いとやがて点サビが発生する。この点サビがクセ者で、磨くとヘアラインの模様が崩れるため、見て見ぬふりをするか、ポリッシュで鏡面にするかの2択に迫られる。ポリッシュすると一気にカスタム車風の派手感が出てしまうので、清純派を留めたい昨今の風潮からもよろしくない。
ナナハン国内仕様なので速度警告灯がまだあるのも良い。警告灯のないFZR1000のメーターなどを流用されていると悲しい。


3.デザイン

昭和のスーパースポーツは日常使いできる親しみやすさあり
現行スーパースポーツは、サーキット性能をひたすら突き詰めているようだが、実は乗りやすかったりもする。でも恐ろしく速いので、イメージ的には明るく腰の低い格闘家みたいな感じで逆に怖い。衰えた視力と曲がらない関節を抱えたオジサンとしては腰が引けるばかりである。

FZR750は耐久イメージの丸目二灯の上に走行風をエアクリボックスに取り入れるFAI(フレッシュ・エア・インテーク)の口が開いていて、イカツめな顔にやや身構えるが、タンデムや荷物の積載に便利なダブルシートを装備。ちゃんと私のツーリングのことも考えてくれてるんだ! と、ヤンキー彼氏の優しい一面みたいなギャップに心の安寧を得る。

余談だが、このテールレンズはTRXとかRZVとかの共通部品で見覚え大いにアリ。
文:ノア セレン、丸山淳大/写真:南 孝幸、関野 温