以下、文:横田和彦、丸山淳大/写真:南 孝幸、関野 温
ヤマハ「RZ250RR」(1984年)|車両解説・スペック

YAMAHA
RZ250RR
1984年モデル
総排気量:247cc
エンジン形式:水冷2スト ピストンリードバルブ並列2気筒
シート高:790mm
車両重量:147kg(乾燥)
発売当時価格:43万9000円

YAMAHA
YZF-R25 ABS
2023年モデル
総排気量:249cc
エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒
シート高:780mm
車両重量:169kg
税込価格:69万800円
RZ250RR(1984年) | YZF-R25 ABS(2023年) | |
全長×全幅×全幅 | 2095×670×1190mm | 2090×730×1140mm |
ホイールベース | 1385mm | 1380mm |
車両重量 | 147kg(乾燥) | 169kg |
エンジン形式 | 水冷2スト ピストンリードバルブ並列2気筒 | 水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒 |
排気量 | 247cc | 249cc |
最高出力 | 45PS/9500rpm | 35PS/12000rpm |
最大トルク | 3.5kgm/9000rpm | 2.3kgm/10000rpm |
変速機形式 | 6速 | 6速 |
タンク容量 | 20L | 14L |
タイヤサイズ前・後 | 90/90-18・110/80-18 | 110/70-17・140/70-17 |
オーナー・イシッチの車両解説

要整備個所も多いけどまだまだ現役!
このRZ250RRは父が新車で購入して今までフルノーマルで乗り続けています。通勤にも使っていたため走行距離は10万kmを超えエンジンは3代目。リアサスは抜けているしブレーキは効かないしと、正直整備が必要な部分は多いです(汗)。各種消耗品はまだ入手可能なので、のんびり乗る分にまだまだ現役です。

ヤマハ「RZ250RR」(1984年)|インプレ(横田和彦)

2ストはパワーバンドに入ると一気に吹け上がるのが魅力!
80年代前半、バイク好きな若者の話題の中心は「乗るなら4スト400ccか、2スト250ccか」だった。というのも当時、教習所で取れたのは中型免許(現在の普通二輪免許)まで。大型バイクに乗るためには平日に管轄の試験場に行き、実技試験を受けて「限定解除」しなければならなかった。またこれが超厳しくて、合格率は数%という難関。社会問題だった暴走族対策などの理由があったんだけど、ともかく大型バイクに乗るためのハードルがめちゃめちゃ高かったのだ。だから必然的に興味は400cc以下のバイクになった。
そこで注目されたのが4スト400と2スト250の対決だ。全域でパワフルなエンジン特性の4スト400に対して、軽量でパワーバンドに入ってからの吹け上がりが鋭い2スト250は良きライバル。特に2スト250は車検がないということもあって、若年層に好まれる傾向があった。そして貧乏学生だったボクも2スト250であるRZ250を購入。その後継モデルが今回乗ったRZ250RRだ。
フレーム形状やサスペンションの仕様、2ストの弱点である低回転域のトルクを補う排気デバイス・YPVSが追加されるなど各部が進化しているが、両車の基本はかなり近い。チョークを引いてキックを踏み込むと、並列2気筒エンジンはボコボコボコッと不機嫌そうに目覚める。少し暖気してからアクセルを開けると回転にあわせてマフラーから盛大に白煙が……。実は今回の車両、あまり状態がよろしくない。長期間保管していた車両を急きょ走れるようにしてくれたのだ。そのためブレーキ(効きが甘い)やステム(ガタあり)、リアサス(オイルが抜けてダンパー効果なし)、タイヤ(古い)といった不安点も。そこで過去の経験も織り交ぜながらレポートしたい。

2ストエンジンの魅力のひとつは、パワーバンドに入った瞬間に一気に吹け上がっていくところ。その爽快な加速フィーリングは、軽量な車体との組み合わせで4スト400を凌ぐほどだ。そう、2スト250の武器は車体の軽さとパワーバンドに入ったときの爆発的な加速である。
それを活かして上位のマシンに食らいつき華麗に抜き去る、ってのが2スト乗りの美学だった。そんな難しい特性の2ストマシンを自在に乗りこなすライダーは、尊敬の眼差しで見られたものだ。RZ250RRもそんな走りを身上としたモデル。今回乗ったマシンのエンジンは中回転付近でちょっとボコついたけど、爽快な吹け上がりの片鱗は体感できた。
ハンドリングは2スト250としては安定志向。前後18インチタイヤであることが理由のひとつだ。実はこのバイクは後年の過激なレーサーレプリカに変化する過渡期のモデル。そのため2ストながら街中でも乗りやすいと評判だった。
それに比べると前後に17インチタイヤを備えた最新のYZF-R25のハンドリングの方がシャープな印象。といっても決して過激ではなく、曲がりたいと思ったライダーの意思を素直に反映してくれる挙動だ。そこは両車に共通している特性だと感じた。

軽量な車体に高回転域でパワフルなエンジンを搭載した2ストモデルには苦手なシチュエーションがある。それは交通量が多い幹線道路をゆるゆると走ったり、仲間たちとのんびり走るツーリングに行くこと。低めの回転数で長時間走るとマフラーからモウモウと白煙を吐いたり、次に大きくアクセルを開けてもすぐに回転がついてこなかったりするのだ。
RZ250RRにはYPVSが搭載されているけれど、それも万能ではない。そんなピーキーなエンジン特性や、ガソリンのほかに定期的に2ストオイルを補充しなければいけないという煩雑さ、燃費の悪さなどの諸条件はユーザーに敬遠される原因にもなった。
2ストロークエンジン搭載モデルの生産が終わって久しい。環境負荷が大きいので仕方ないが、可能であればもう一度2ストの胸のすくような加速フィーリングを体感したいという想いもある。とはいうものの、今回乗った貴重なフルノーマルのRZ250RRを現役当時のバリッとしたコンディションに戻すには、いったいどのくらいのコストと時間がかかるのかまるで見当がつかない。やっぱり調子がいい絶版車と暮らすには、強い情熱とお金と余裕が必要なんだなぁとしみじみ感じた。

スチールフレーム+軽量な並列2気筒エンジンの組み合わせは、軽やかなハンドリングを実現。前後18インチホイールを備えた足まわりは熟成が進んでいて、高い安定性も兼ね備えている。

RZ250RRとYZF-R25の共通項は、街乗りでの快適性とスポーツ性を両立していること。この2台がヤマハのスポーツDNAでつながっていることは間違いない。