2024年の大晦日、米国MBPD(マンハッタン ビーチ警察)は、公式Facebookページに違法運用されたE-モーターサイクルの取り締まりに関する投稿をしました。規制内容は国や地域によって様々ですが、新しい電動モビリティ(E-モーターサイクル、E-バイク)を正しく使ってもらうことを啓蒙することに、苦労しているのはどこの地域も一緒みたいですね?
文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)
※この記事はウェブサイト「ロレンス」で2025年3月2日に公開されたものを一部編集し転載しています。

E-バイクとE-モーターサイクル、その違いはペダルの有無だけではありません

西海岸ロサンゼルス郡の街、マンハッタン ビーチのローカルニュースを報じる「MBニュース」の報道によると、MBPDはクリスマス以来、所轄地域のE-モーターサイクルを押収したと発表しました。押収の理由はシンプルなもので、これらが公道で合法的に使われていないから・・・でした。

画像: 昨年末、MBPD(マンハッタン ビーチ警察)が押収したE-モーターサイクル。 www.facebook.com

昨年末、MBPD(マンハッタン ビーチ警察)が押収したE-モーターサイクル。

www.facebook.com

E-モーターサイクルとE-バイク・・・日本でもこの2つの違いをちゃんと理解できている人は少数派かもしれません。今回のケースで槍玉に挙げる挙げられているのは、時速60マイル≒96.56km/hで走ることも可能で、3~6kWの電動モーターを搭載しペダルを漕がなくても走れる、E-モーターサイクルの不正な利用です。彼の地ではタラリア、SUR-RON、Eライド プロなどのE-モーターサイクルが、人気を博しています。

米国で古くから人気のオフロード遊びでの使用を念頭に作られたこれらE-モーターサイクルは、カリフォルニア州ではヘッドライト、テールライト、ミラー、ウインカーなどの保安部品を付け、ナンバープレート登録をしないと公道走行不可です。また当然、乗る者は免許が必要になります。

ちょっと前まで、米国の取り締まり当局はペダルの有無でE-モーターサイクルとE-バイク(免許不要の電動アシスト自転車。欧米ではペダルとエレクトリックの合成語である、ペデレックと呼ばれることも多い)を見分けて、公道で違法運用されているE-モーターサイクルを見分けていました。しかし近年は、E-モーターサイクルにペダルを追加するキットが増加しているため、そのキットを装着するE-モーターサイクルとE-バイクを、ぱっと見で区別することが難しくなっています・・・。

画像: Kit de pedales Premium para Sur Ron | Premium Pedal Kit for Sur Ron www.youtube.com

Kit de pedales Premium para Sur Ron | Premium Pedal Kit for Sur Ron

www.youtube.com

MBPDのfacebookページの投稿より
「街中で青少年が乗っている、E-モーターサイクルに出くわすことが続いています。保護者の皆さん、これらの(子供たちへの)クリスマスプレゼントが合法的かつ、責任を持って使用されていることを確認してください。タラリア、SUR-RON、Eライド プロ、その他類似のE-モーターサイクルの、市道、歩道、ストランド(海岸や砂浜)での運転は安全でも合法でもありません。
 
※( )内はLawrence編集部注

1960年代の昔からモータリゼーションが進んでいた豊かなアメリカでは、ホンダモンキーのようなミニバイクなどを親から子供へのクリスマスプレゼントとして贈るというトラディションがあったりします。上の引用文が示すとおり、最近の米国の恵まれた子供たちにとっては、これらのE-モーターサイクルが人気のクリスマスプレゼントになっているのでしょうね。

画像: 昨年末、MBPDに押収されたE-モーターサイクル。彼の地の場合、違法運用で押収されたE-モーターサイクルを引き取るには、レッカー業者への支払い、30日分の押収費用、押収車両解放料、無免許運転罰金・・・などなど、合計で1,000ドル以上!! を支払うことになることもあるそうです。 www.facebook.com

昨年末、MBPDに押収されたE-モーターサイクル。彼の地の場合、違法運用で押収されたE-モーターサイクルを引き取るには、レッカー業者への支払い、30日分の押収費用、押収車両解放料、無免許運転罰金・・・などなど、合計で1,000ドル以上!! を支払うことになることもあるそうです。

www.facebook.com

なおカリフォルニア州では、750W未満のモーターを備えるE-バイクを3つのクラスに分類していますが、最も高速域まで電動アシスト範囲がある「クラス3」(時速28マイル≒45km/hまでアシスト)は、運転者が16歳以上であることやヘルメットの着用などを義務つけています。

ただ、E-バイクやE-モーターサイクルを、法令を守らず使う米国のユーザーは少なくないようです。その問題に対し米国では、学校でのE-バイクに関する安全教育や、警察による安全キャンペーンなどでユーザーの意識向上を試みているようです。

便利で魅力的な乗り物ではありますが、法令遵守、安全第一で付き合いたいですね

一般的な自転車よりも体力を使わないで乗れるE-バイクや、ICE(内燃機関)搭載車に比べ静粛性や扱いやすさに優れるE-モーターサイクルは、電動化時代の魅力的なプロダクツに違いありません。しかし、その特性を理解してそれらを安全に楽しんでもらうために、各国の当局は啓蒙に頭を悩ませているようです。

電動アシスト自転車商品の元祖、ヤマハPASシリーズを生み出した日本では、電動アシスト自転車とぱっと見では見分けるのが難しい電動車の違法運用が、問題になっているのは多くの知るところです。昨年5月、警視庁は「電動アシスト自転車と称する違法自転車について」と題して、アシスト比率など日本の電動アシスト自転車の基準を満たしていない車両に関する注意を公表しています。

画像: 電動アシスト自転車の「型式認定TSマーク」。警視庁は、このマークを表示する製品を購入すると安心・・・と説明しています。 www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp

電動アシスト自転車の「型式認定TSマーク」。警視庁は、このマークを表示する製品を購入すると安心・・・と説明しています。

www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp

ちなみに日本の電動アシスト自転車=駆動補助機付自転車の基準は、アシスト範囲は24km/hまで。アシスト比率は10km/h未満は最大で1:2、10〜24km/hと速度が上がるにつれ比率が減少・・・となっています。

警視庁が道交法違反だから乗るなよ!! とお怒り(推察です?)なのは、日本独自の電動アシスト自転車の基準を満たさない、諸外国の規格で作られた製品などについてですが、E-バイクやE-モーターサイクルが世界各国で盛んに生産されるようになった今、どれが適法に使われている電動アシスト自転車で、どれが違法運用されている車両かどうかを、日本の現場の警察官が瞬時に判断するのは、とりわけ走行中の状態の場合はとても難しいことのように思えます。

昨年11月1日に施行された改正道路交通法では、日本の電動アシスト自転車基準を満たさない電動車は、ヘルメット着用、運転免許、保安部品、ナンバープレートなどが必要な「原付」と同じ扱いにすることが明文化されています。つまりこれはペダルの有無は関係なく、電動自転車アシスト基準を満たさない製品は、原付同様の要件を満たす必要がある・・・ことが、違反ユーザーや車両販売業者に対して、最後通告的に突きつけられた改正ともいえるでしょう。

近年の都市部でのE-バイクの事故や違反の増加を受けての改正ですが、これが目論見どおり事故や違反の減少に結びつくか・・・今後の動向を見守りたいです。

文:宮﨑健太郎(ロレンス編集部)

This article is a sponsored article by
''.