2025年3月14日から16日にかけて、アルゼンチンのテルマス・デ・リオ・オンドにてMotoGP第2戦アルゼンチンGPが行われた。開幕戦ではマルク・マルケス(Ducati Lenovo Team)とアレックス・マルケス(Gresini Racing MotoGP)による史上初の兄弟ワンツーフィニッシュが達成された。今最も強力なマルケス兄弟を止める存在は出てくるのだろうか。

2027年からピレリがMotoGPクラスのタイヤサプライヤーに

開幕戦と第2戦の間にビッグニュースが飛び込んできた。ピレリがMoto2、Moto3クラスに続いて最高峰クラスであるMotoGPのタイヤサプライヤーになることが発表されたのだ。

SBK(スーパーバイク世界選手権)をはじめ、Moto2、Moto3にもタイヤを供給しているピレリだが、2027年からミシュランに代わり、MotoGPクラスのタイヤサプライヤーになることが決まった。

MotoGPやSBKなどロードレース最高峰のプロモーターであるドルナは、主催している下位カテゴリーにもピレリのワンメイクレースを展開。ピレリは昨年からMoto2とMoto3にもタイヤを供給している。

今回の発表には各カテゴリーで同じタイヤが使われることでステップアップの環境を整える目的があるとのこと。ピレリといえばグリップ力に優れており、昨年のMoto2とMoto3では軒並み従来のレコードが破られるという事態となった。

2027年といえば排気量が1000ccから850ccに変更される年でもある。そのため、最高峰クラスでレコードブレイクが頻発するかはわからないが、タイヤ変更による影響は大きそうだ。

グリップ力に優れる反面、ミシュランに比べライフが短いピレリ。空力全盛の今のMotoGPクラスへタイヤを供給するにあたり、ピレリがどのようなスペックを用意するのかに注目が集まりそうだ。

また、現在MotoGPクラスのタイヤサプライヤーであるミシュランは、2026年までこれまで通り供給することも併せて発表されている。

マルケス兄弟強し! スプリントは開幕戦と同じ並びの表彰台に

マルク・マルケスが圧倒的な強さで優勝を飾った開幕戦から早2週間。第2戦の舞台は2年ぶりの開催となった南米アルゼンチンのテルマス・デ・リオ・オンドである。

経済的な不安定が続いたことで中止となっていたアルゼンチンGPだったが、今シーズンから復帰。2023年以来のMotoGP開催に、サーキットには多くのファンが押し寄せ盛り上がりをみせた。

そんなアルゼンチンのファンを熱狂させたのがマルク・マルケス。3勝を挙げているサーキットで予選では唯一36秒台を叩き出しポールポジションを獲得してみせた。

マルクに続いたのが弟のアレックス・マルケスだ。テスト、そして開幕戦では昨年のチャンピオンマシンを駆り好調をアピールしたアレックス。今回も速く、兄マルクにコンマ2秒をつけられるも堂々に2番グリッドを獲得した。

そんなマルケス兄弟に続いたのが、なんと苦戦が続いていたホンダ。しかも、ワークスではなく、サテライトチーム所属のヨハン・ザルコ(CASTROL Honda LCR)だ。

昨年苦戦が続くホンダに移籍するも、ホンダ勢トップという活躍を見せたザルコ。テストから着実に進化を果たしたホンダだったが、いきなりフロントローに割って入ったことはサプライズと言えるだろう。

スプリントは上空に雲が覆うもののドライコンディションに。気温19度、路面温度24度という気象条件の中、12周のスプリントレースがスタートした。

画像: 磐石のスタートを決め、早くもレースの主導権を握った「マルケスブラザーズ」。

磐石のスタートを決め、早くもレースの主導権を握った「マルケスブラザーズ」。

マルケス兄弟がスタートを決めると、予選4番グリッドのフランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)、7番グリッドのファビオ・クアルタラロ(Monster Energy Yamaha MotoGP Team)、そして5番グリッドのペドロ・アコスタ(Red Bull KTM Factory Racing)が続き、フロントロースタートのザルコは6位までポジションを落としてしまった。

3位に浮上したバニャイアだったが、トップのマルク・マルケスと2位のアレックス・マルケスが早くも抜け出し、上位2台に喰らいつくことができない。3周目にはすでにトップ2から約1秒もの差をつけられてしまった。

一方、スタートで順位を下げていたザルコだったが、周回を重ねるごとにポジションを上げていき、終盤には4位にまで順位を回復。その前のバニャイアが単独走行を強いられる中、2位のアレックス・マルケスは懸命に兄の背中を追う。

画像: 兄マルクと互角の走りを見せたアレックス・マルケス。

兄マルクと互角の走りを見せたアレックス・マルケス。

毎周コンマ3秒程度の距離を保っていたアレックス・マルケスだったが、どうやら限界での走りで走行を続けていたようで、最終盤には2位確保に切り替えることに。この結果、トップのマルク・マルケスは余裕をもってゴールを目指すことができた。

2位に1秒弱の差をつけたマルク・マルケスがスプリントを制しトップチェッカー。この時点ですでに49ポイントを獲得している。

2位にはアレックス・マルケス、3位にバニャイアが入り、奇しくも開幕戦と同じ並びでの表彰台となった。

画像: 開幕戦の再現となった第2戦スプリントのトップ3。

開幕戦の再現となった第2戦スプリントのトップ3。

4位にはスタートでポジションを落とすも、力強い走りで挽回したザルコが入り、ドゥカティ勢に割って入ってみせた。5位にはファビオ・ディ・ジャナントニオ(Pertamina Enduro VR46 Racing Team)、6位にマルコ・ベッツェッキ(Aprilia Racing)が入っている。

画像: アルゼンチンのファンと喜びを分かち合うマルク・マルケス。

アルゼンチンのファンと喜びを分かち合うマルク・マルケス。

開幕戦で衝撃の走りを披露した小椋藍(Trackhouse MotoGP Racing)は予選で転倒もあり15番グリッドからスタート。ポジションをキープしたままフィニッシュし、15位でチェッカーを受けた。

マルケス兄弟が連続ワンツーフィニッシュ達成!

迎えた決勝は土曜日同様上空に雲が覆うもドライコンディション。前日と同じグリッドからスタートとなるが、スプリントレースでフェルミン・アルデゲル(Gresini Racing MotoGP)に巻き込まれ転倒したミゲール・オリベイラ(Prima Pramac Yamaha)が欠場している。

画像: スタートで勝負に出たバニャイアだったが、アレックス・マルケスから2位の座を奪うことはできなかった。

スタートで勝負に出たバニャイアだったが、アレックス・マルケスから2位の座を奪うことはできなかった。

25周の決勝レースは、ポールシッターのマルク・マルケスがホールショットを奪う。2番グリッドのアレックス・マルケスに4番グリッドスタートのバニャイアが襲いかかるも順位は変わらず。

後方ではベッツェッキがクアルタラロにターン1で接触し転倒。一方、15番グリッドスタートの小椋はオープニングラップで10位までポジションを上げた。これにより上位グループの後方でレースを進めていくことになった。

トップを走るマルク・マルケスだったが、4周目のターン1でラインを外しワイドに膨れたところをアレックス・マルケスに先行されてしまう。その後方ではフランコ・モルビデリ(Pertamina Enduro VR46 Racing Team)がバニャイアを攻略し3位に浮上した。

アレックス・マルケスが先行するという開幕戦と同じ流れになるも、今回はアレックスのペースが良い。ファステストラップも刻む好走を見せ、兄マルクとの優勝争いを演じていく。

画像: 開幕戦と同じく兄弟対決が勃発した第2戦。

開幕戦と同じく兄弟対決が勃発した第2戦。

マルケス兄弟によるトップ争いはこう着状態が続く中、残り周回が少なくなるとマルク・マルケスが仕掛ける。高速コーナーではリアが流れる場面もみられ、マルク・マルケスの方がタイヤが厳しいように見てとれた。しかし、8度の世界王者はそこからさらにペースを上げていく。

そして残り5周のターン5、ブレーキングでマルク・マルケスが弟のアレックス・マルケスを攻略しついにトップに浮上。そこから一気にスパートをかけたマルクが1秒以上の差をつけて開幕連勝を達成した。

マルク・マルケスは今回の優勝でグランプリ通算90勝を達成。地元の英雄アンヘル・ニエトに並ぶ歴代3位の勝利数となった。

画像: 同郷の英雄であるアンヘル・ニエトに並び、歴代3位の勝利数を挙げたマルク・マルケス。

同郷の英雄であるアンヘル・ニエトに並び、歴代3位の勝利数を挙げたマルク・マルケス。

最高峰クラス初優勝が見えていたアレックス・マルケスが開幕戦に続き2位を獲得。史上初兄弟ワンツーをアルゼンチンでも達成し、マルケス兄弟の強さが際立った2025年シーズンのスタートとなった。

3位には2021年以来となる久しぶりの表彰台となったモルビデリが獲得。ミディアムタイヤを選択したライダーが多いなか、ソフトタイヤで好走したモルビデリがワークスのバニャイアを抑える好走を見せた。

小椋藍は最終的に8位フィニッシュし、開幕戦に続きトップ10フィニッシュを果たした。しかし、レース後に承認されていないソフトウェアを使用していたとして、レース結果から除外されることが発表されている。

2025 MotoGP 第2戦アルゼンチンGP 決勝結果

画像: ドゥカティを駆る3チーム3名のライダーが表彰台に上がったアルゼンチンGP。

ドゥカティを駆る3チーム3名のライダーが表彰台に上がったアルゼンチンGP。

画像: resources.motogp.com
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ストップ・ザ・マルケスは無理!? 第3戦はアメリカズGP

第3戦は現地時間3月28日から30日にかけてアメリカ・テキサス州のあるサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)で行われるアメリカズGP。ここは言わずと知れたマルク・マルケスが圧倒的な勝率を収めている得意中の得意とされるサーキットだ。

世界中の有名なサーキットのコーナーが採り入れられたトラックで、最大41mもの高低差と左回りという特徴を持つCOTA。このサーキットでマルク・マルケスは無類の強さを誇っており、これまですでに7勝を挙げている。

現在最強のマシンを手にしたマルク・マルケス。第3戦は誰が止めるかではなく、2位以下に一体何秒差をつけてしまうのか、という見方になってしまうかもしれない。しかし、何が起こるかわからないのがモータースポーツ。

もしこのマルク・マルケスの庭とも言えるサーキットで優勝を奪いとるライダーが現れるとしたら、それはシーズンの行方さえも左右しかねないことになる。予想通りの結果に終わるのか、それとも波乱が待っているのか。第3戦からも目が離せない。

レポート:河村大志

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