事前テストから絶好調の水野のパニガーレに大事件発生!

公開事前テスト・「プレテスト ラウンドZERO」から10日、ついに2025年の全日本ロードレースがスタートしました! 4月下旬という、例年になく遅い開幕とはなりましたが、昨年のように3月上旬にスケジューリングして、天候が崩れでもしたら寒くて危険、という2輪レースの特性を考えると、こっちの方が安全ですね。これも昨年のように、レース前のテストでけが人が出るようなこともなく開幕を迎えられることは気持ちのいいものです。

この開幕戦は「もてぎ2&4」としての開催で、2輪はJSB1000クラスのみの開催。金曜からスタートしたフリープラクティスから初夏を思わせる陽気が続き、土曜の公式予選までが終了。日曜は朝から曇り空となりましたが、決勝レース終了まで雨に降られることなく終了しました。やっぱりドライコンディションでのレースは気持ちがいいです!

画像: 他のマシンが続々とグリッドにつくなか、マシンを大至急で修復するチームカガヤマのメカニックたち。この間に水野はひとり歩いてグリッドに向かっていました。

他のマシンが続々とグリッドにつくなか、マシンを大至急で修復するチームカガヤマのメカニックたち。この間に水野はひとり歩いてグリッドに向かっていました。

水野涼(DUCATI Team KAGAYAMA)→高橋巧(Honda HRC Test Team)→浦本修充(オートレース宇部レーシングチーム)というフロントローの顔ぶれで始まった決勝レースは、スタートから大波乱!なんと、決勝レース前に、ピットアウトからコースインしようとした水野のパニガーレV4Rにトラブルが発生してしまったんです!
ピットを出ようとして、エンジンがかかっているマシンに水野が跨って、クラッチレバーにぎってローギアへ、クラッチレバーをリリースしてもマシンが前に進みません!
「なんか、クラッチが切れっぱなしになっちゃったんです。それでメカのみんなにマシンを預けて、僕は歩いてグリッドへ。サイティング(注:ピットアウトしてから1周してグリッドにつくラップ)していなくても、ウォームアップ(注:一度ついたグリッドから1周してスタートラインにつくラップ)に出られるのは知っていたんで、あわてても仕方ないし」(水野)

画像: スタートでは水野がホールショットを奪い、2列目から中須賀と長島がジャンプアップ! 長島が一時トップに立ちます。

スタートでは水野がホールショットを奪い、2列目から中須賀と長島がジャンプアップ! 長島が一時トップに立ちます。

マシンにまたがって、ウォームアップのGOサインを待つライバルたちの中、マシン不在のポールポジションの横にしゃがみ込む水野。傍らには加賀山監督が寄り添い、ライダーケア。水野も笑顔だし、すこしも慌てたそぶりは見えませんでした。心中穏やかではなかったかもしれませんけどね。
そして、無事ウォームアップランのスタート前に、手押しでグリッドに運ばれる水野のパニガーレV4R。そのマシンは、予選でタイムを出したメインマシンではなく、スペアマシン、または2号車と呼ばれる車両でした。
「うちのマシンは、メインとスペアっていう区別はなくて、チームにどっちも同じ仕様に仕上げてもらっているんです。2台とも先週の事前テストでも、このレースウィークでも乗ってるんで問題もありませんでした。でも、ウォームアップに出て、レースがスタートしてすぐ、ん?なんかフィーリングちがう?って思ったんで、それで、あぁ2号車なんだ、って気づいたくらい」(水野)
今シーズン、水野はここまで公開事前テスト「プレテスト・ラウンドZERO」の両日、レースウィーク初日のフリー走行、そして公式予選とすべてトップタイムをマーク。俗にいう「スイープ」の状態で、何もかもうまくいっている状態だったのです。それが、決勝レース前に大事件!という流れだったんですね。

画像: 2周目の2コーナー脱出シーン。この後、水野がトップに立って後続を引き離し始めます。

2周目の2コーナー脱出シーン。この後、水野がトップに立って後続を引き離し始めます。

そして決勝レース。スタート直前のハプニングにも動じなかった水野がホールショット! 2列目から中須賀克行(ヤマハファクトリーレーシング)、長島哲太(ダンロップレーシングチームwithYAHAGI)が好スタートを見せて水野→長島→中須賀の順で3~4コーナーへ。3コーナー進入では長島がトップに立つシーンもありました。これは、トップグループの中では長島だけがダンロップタイヤを履いていて、他のブリヂストンタイヤのユーザーとは、ウォームアップ性能に違いがあるからなんです。もちろん、長島のスキルがあっての話です!
早い周回のうちに逃げたい長島、それを逃がしたくない水野、中須賀、4番手には野左根航汰(AstemoプロホンダSIレーシング)、5番手には名越哲平(SDGチームハルクプロホンダ)、6番手にスタートでやや順位を落とした浦本修充(オートレース宇部レーシング)、少し間を空けて高橋巧(ホンダHRCテストチーム)がつけます。

画像: スタート直後の混乱に慌てることなく、トップに立ってからは後続をじりじり引き離した水野。ちょっと、つけいるスキのない強さでした

スタート直後の混乱に慌てることなく、トップに立ってからは後続をじりじり引き離した水野。ちょっと、つけいるスキのない強さでした

しかし1周目のダウンヒルから90度コーナーで水野が長島をかわしてトップに再浮上! その後、2周目の1コーナーでややラインを外した水野を、ふたたび長島がかわして、V字コーナーでは野左根も水野をかわして2番手に浮上しますが、野左根はその直後のヘアピンで転倒。開幕戦をリタイヤで落としてしまいました。

画像: 水野に引き離されてからの2番手争いは中須賀が後続を抑え切りました

水野に引き離されてからの2番手争いは中須賀が後続を抑え切りました

レースは3周目の5コーナーで再び水野がトップに立ってからはやや展開に落ち着きを取り戻し、水野→長島→中須賀→浦本→名越→高橋、そしてこの開幕戦にスポット参戦している津田拓也(チームスズキCNチャレンジ)が続きます。
このあたりから水野が2番手以下との差を広げ始め、中須賀、浦本が長島をかわしてポジションアップ。このあたりがブリヂストンタイヤ勢とダンロップタイヤの差なのです。長島はこの後ずるずるとペースダウン。マシントラブルも発生、レース中盤にリタイヤしてしまいました。

画像: 序盤のペースをキープできなかった長島。後方の名越は調子を取りもどしたような走りでした。

序盤のペースをキープできなかった長島。後方の名越は調子を取りもどしたような走りでした。

レースは序盤から、水野が後続を引き離しながら独走態勢へ。5周を終えて2番手以下と2秒以上の差をつけていきます。注目はもう2番手争いですが、2番手を走る中須賀さえも、もう手がつけられない水野の速さ。中須賀の背後に浦本が迫り、その後方から高橋もジリジリと差を詰めていきます。
しかしこの後は、浦本がなんどか中須賀のドアをこじ開けようとトライしますが、絶対王者の牙城は高く、並びかけ、一瞬パスするも前に出るまでには至らず、中須賀の背後で周回。その後方の高橋も、レース後半の強さを見せることも出来ず、中須賀×浦本の戦いに加わるには至りませんでした。
結局トップを独走する水野は、2番手以下に大量7秒近くの差をつけて開幕戦優勝! レース中盤からは、ペースをセーブしているような走りでのこの差ですから、水野、圧勝!というレースでした。

画像: 24年の最終戦から3連勝目。「2回以上走ったサーキットでは負けなし」記録更新中です。

24年の最終戦から3連勝目。「2回以上走ったサーキットでは負けなし」記録更新中です。 

「事前テストからマシンも仕上がって上手く走れたんですが、ウィークに入って、4輪のタイヤラバーが乗ったことで路面のグリップ感も大きく変わって、セットアップもガラリと変えなきゃいけなかったんですが、それをチームがきちんとやってくれて、スタート直前のクラッチトラブルもきちんと消化してくれたんで、本当にチームに感謝! チーム全員で勝った優勝だと思います」と水野。
これで水野は、24年の最終戦から3連勝。パニガーレV4Rでの初優勝が去年の夏のもてぎで、2&3勝目が鈴鹿での最終戦。つまり「2度目以降のコースでは負けなし」記録を更新しているんです! 次戦のスポーツランド菅生大会も、昨年に続いての「2度目」ですから、この記録が続くと、残り全勝……なんてのもねらっているのかもしれません。

画像: レースが終わって表彰台に向かう中須賀は、コースオフィシャルさんに近寄ってタッチ&ゴー。こういうところが絶対王者と呼ばれる所以なんですね。

レースが終わって表彰台に向かう中須賀は、コースオフィシャルさんに近寄ってタッチ&ゴー。こういうところが絶対王者と呼ばれる所以なんですね。 

2位に入ったのは“絶対王者”中須賀。写真でもわかるように、中須賀YZF-R11は2025年型となってウィングレット付き。実はこのウィングレット追加を、セッティングで詰め切れないままだったのだそうです。
「ウィングがついたことで、たとえばコーナリング中にもフロントにグッと荷重がかかって、なかなかリアにウェイトを移せない。もちろん、ウィングがついたメリットも大きいので、早くそれを解消していきたいですね」(中須賀)

画像: 「全日本を走るマシンのなかで一番pワーがでてるはず」というM1000RRをうまく走らせた浦本。水野→中須賀の2トップに続く第3の男に力強く名乗りをあげました

「全日本を走るマシンのなかで一番pワーがでてるはず」というM1000RRをうまく走らせた浦本。水野→中須賀の2トップに続く第3の男に力強く名乗りをあげました

そして3位には、8年ぶりに全日本ロードレースに復帰、今シーズンBMW M1000RRをライディングする浦本。すでに紹介したように、浦本のM1000RRには、ワールドスーパーバイクチャンピオンマシンと同等のワークススペックを持つエンジンが供給されていて、その戦闘力が注目されていたんです。
「デビューマシンということで、時間がない中でチームがマシンを仕上げてくれて、3位で開幕戦を終えられるなんて上出来です。予選もフロントローにつけられたし、20周というレース距離もきちんと走り切れた。表彰台に乗ることができてうれしい半面、レースが終わってみたら悔しい気持ちもでちゃいますね」と浦本。
しかし、ハイパワーエンジンのニューマシンということで、1周のタイムが出ることは予想されましたが、決勝もそのスピードを大きく落とすことなく終われるとは、ちょっと予想外の展開でした。

画像: 楽しみな顔ぶれのトップ3。次戦は高橋欠場、この3人に迫るのは野左根か?名越か?

楽しみな顔ぶれのトップ3。次戦は高橋欠場、この3人に迫るのは野左根か?名越か?

水野→中須賀→浦本→高橋の順番は、ドゥカティ→ヤマハ→BMW→ホンダという順。全日本ロードレース史上、外国車が2台も表彰台に乗るのも初めてなら、上位4台に外国車が入ってがすべて違うメーカーなのもおそらく初めて。そんなエキサイティングで、新しい楽しみが増えた25年の全日本ロードレースなのです。次戦のスポーツランド菅生大会は、もちろんヤマハのおひざ元での開催ということで、ヤマハと中須賀の大反撃に期待!です。

画像: 事前テストから絶好調の水野のパニガーレに大事件発生!
画像: 6位入賞を果たしたチームスズキCNチャレンジの津田拓也。8耐を見据えての開幕戦スポット参戦だったチームスズキですが、第2戦菅生大会も「出場できる準備はしてあります」とのことでした。これはひょっとして!

6位入賞を果たしたチームスズキCNチャレンジの津田拓也。8耐を見据えての開幕戦スポット参戦だったチームスズキですが、第2戦菅生大会も「出場できる準備はしてあります」とのことでした。これはひょっとして!

写真・文責/中村浩史

This article is a sponsored article by
''.