ブームの真っ最中で実現した究極のスーパースポーツ

1980年代に空前のブームとなったのが市販車ベースのオートバイで戦うロードレース。中でも改造範囲が少ないSPクラスは、市販車のポテンシャルがレースの成績に直結し、その成績が市販車のセールスを左右するとあって、サーキットでの戦闘力を高めた新型モデルが毎年のように投入された。この繰り返しが「レーサーレプリカ」の性能を凄まじい勢いで引き上げた最大の理由だ。

画像: ブームの真っ最中で実現した究極のスーパースポーツ

SPクラスは2スト250㏄と4スト400㏄が中心だったが、入門レースとして人気があったのが、4スト250㏄のSP-Fクラス。当初は単気筒のSRXや2気筒のVTが主役だったが、4気筒のヤマハFZ250フェーザーが圧倒的な速さを見せたことで、各メーカーが4気筒車を続々と投入、たちまち4気筒車だけのレースに様変わりする。

その中でも、最も完成度が高いと言われ、セールス面でも大成功を収めたのが、CBR250Rのフルモデルチェンジで90年に登場したCBR250RR(MC22)だ。

低重心と剛性の高さを狙った独自形状のアルミフレームに、1万9000回転からレッドゾーンという超高回転・高出力型の4気筒エンジンを組み合わせたCBRは、車名に「RR」が付いていることを納得させる速さを見せ、SP-Fレースで大活躍した。

画像: マシンの性能を感性の領域まで体感できる「スーパーレスポンス・クオーター」をテーマに開発され、ボディも非常に軽量でコンパクトだった。写真のマシンは1990年式の初期モデル。

マシンの性能を感性の領域まで体感できる「スーパーレスポンス・クオーター」をテーマに開発され、ボディも非常に軽量でコンパクトだった。写真のマシンは1990年式の初期モデル。

だが、CBRの素晴らしさはサーキット適性だけではなかった。素直なハンドリングと低中回転域からスムーズに反応する4気筒特有のエンジン特性で、サーキットとは無縁のビギナーや女性ライダーにも大好評を博したのだ。僕自身も乗りやすさとエキサイティングさの二面性に感心した。

昨年、個人所有車のCBR250RRを富士スピードウェイで走らせる機会があったが、燃料系に問題を抱えながらも最高速は175㎞/hオーバー。最新の2気筒モデルは160㎞/hを超える程度なので、動力性能の差は簡単に埋まらないほど大きい。しかも、ハードブレーキングでも高速コーナーでも素晴らしいスタビリティで、とても25年以上も前に作られたオートバイとは思えない。最新モデルに混じっても、速さ、楽しさ、乗りやすさのどれもがトップレベルにある。

画像: 排気バルブにインコネルを採用するなど、最高の素材を惜しみなく投入したエンジンは、レッドゾーン1万9000回転という、F1なみの超高回転化を実現。

排気バルブにインコネルを採用するなど、最高の素材を惜しみなく投入したエンジンは、レッドゾーン1万9000回転という、F1なみの超高回転化を実現。

画像: 剛性バランスの設定自由度が高い、独特な形状のLCGツインチューブフレームを採用してマスの集中化を徹底。タイヤは前後ラジアルが標準だった。

剛性バランスの設定自由度が高い、独特な形状のLCGツインチューブフレームを採用してマスの集中化を徹底。タイヤは前後ラジアルが標準だった。

ただ、現在の排ガスや騒音規制の厳しさを考えるとこのパフォーマンスの再現は難しいだろうし、たとえ規制をクリアできても、アルミフレーム+4気筒エンジンというパッケージングでは100万円近い価格になるかも知れない。初代CBR250RRは、空前のバイクブーム、過熱するレプリカブームの最中だったからこそ世に出てこれたのだ。

個人的には、エントリーユーザー向きとか世界戦略車という既存250㏄車の枠を超え、日本の技術を世界に見せつける250㏄モデルの登場を願っている。だから今は「RR」の名が再び与えられた新型のポテンシャルが気になってしょうがない。

画像: スピードメーターを別体式としたレイアウトは、レーシングユースを意識したデザイン。当時のブームをうかがわせるアイテムだ。

スピードメーターを別体式としたレイアウトは、レーシングユースを意識したデザイン。当時のブームをうかがわせるアイテムだ。

画像: ストローク量に応じて減衰力をリアルタイムで変化させるダンパー機構や、φ276㎜のダブルディスクなど、装備は非常に豪華。

ストローク量に応じて減衰力をリアルタイムで変化させるダンパー機構や、φ276㎜のダブルディスクなど、装備は非常に豪華。

画像: スイングアームを湾曲させ、エキゾーストパイプをより重心位置へ近づけてレイアウトすることを可能にした「ガルアーム」を採用。

スイングアームを湾曲させ、エキゾーストパイプをより重心位置へ近づけてレイアウトすることを可能にした「ガルアーム」を採用。

主要諸元(1990年3月当時)
全長×全幅×全高 1975×675×1080㎜
ホイールベース 1345㎜
シート高 725㎜
車両重量 157㎏
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量 249㏄
ボア×ストローク 48.5×33.8㎜
圧縮比 11.5
最高出力 45PS/15000rpm
最大トルク 2.5kg-m/12000rpm
燃料供給方式 VP20キャブレター
燃料タンク容量 13ℓ
キャスター角/トレール 24度/89㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 ダブルディスク・ディスク
タイヤサイズ 前・後 110/70R17・140/60R17

CBR250RR (MC22)HISTORY

画像: 1990年3月 水冷直4エンジンは前年登場のCBR250Rベースに大改良、レブリミットを引き上げてよりパワフルな超高回転型エンジンに。LCGフレーム、ガルアーム、ブレーキやサスのグレードアップで車体も一新、ハイレベルな走りを可能とした。

1990年3月
水冷直4エンジンは前年登場のCBR250Rベースに大改良、レブリミットを引き上げてよりパワフルな超高回転型エンジンに。LCGフレーム、ガルアーム、ブレーキやサスのグレードアップで車体も一新、ハイレベルな走りを可能とした。

画像: 1990年6月 カラーリングに新色が追加されたが、メカニズムや諸元に関する変更点はない。

1990年6月
カラーリングに新色が追加されたが、メカニズムや諸元に関する変更点はない。

画像: 1991年1月 再びカラーリングに新色を追加。これまでのトリコロールとは大きくイメージを異にする、ブラックをベースとしたカラーリングだ。車体色以外の変更はなし。

1991年1月
再びカラーリングに新色を追加。これまでのトリコロールとは大きくイメージを異にする、ブラックをベースとしたカラーリングだ。車体色以外の変更はなし。

画像: 1992年5月 シリーズのフラッグシップモデルであるCBR900RRと共通デザインの、スポーティなブラッシュパターンを多用したカラーリングを採用。

1992年5月
シリーズのフラッグシップモデルであるCBR900RRと共通デザインの、スポーティなブラッシュパターンを多用したカラーリングを採用。

画像: 1994年6月 カウルサイドに「ファイアーブレード」のロゴを採用。最高出力の自主規制値の変更に合わせ、バルブタイミングやマフラーを変更、最高出力は45PSから40PSになった。

1994年6月
カウルサイドに「ファイアーブレード」のロゴを採用。最高出力の自主規制値の変更に合わせ、バルブタイミングやマフラーを変更、最高出力は45PSから40PSになった。

文:太田安治

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