市販車で2万回転の高回転型4気筒を達成
250ccとしては世界初となる水冷4気筒エンジンを搭載し、83年3月に登場したGS250FW。そのネイキッドバージョンとして85年3月にリリースされたGF250。この2機種を擁して、スズキは250ccクラス4気筒化の口火を切る。その後のオートバイブーム、ロードレースブームの急激な盛り上がりとライバルの台頭を受けて、87年にデュアルヘッドライトのフルカウルフォルムに、超ショートストロークタイプの新設計4バルブエンジンを包んだGSX-R250にフルモデルチェンジ。さらに、89年にはアルミフレームを採用したGSX-R250Rへと進化していく。
スズキの4気筒クォーターの特徴は、悪く言えばアンダーパワー、よく言えば一般公道において誰もが走りを楽しめる点にあった。このGSX-R250Rも、エンジン内部パーツの軽量化に始まり、吸気バルブの大径化、エアクリーナー容量の拡大、ダウンドラフトタイプの4連スリングショットキャブレターやエアクリーナーダクト周囲にフレッシュエアを供給するSCAI、エキゾーストパイプ部に円筒形の連結チャンバーを設けたSPES、湾曲させることで冷却効率を高めたラジアルフローラジエターの採用など、当時最先端のテクノロジーを投入してブラッシュアップ。
車体関係もツインスパータイプのアルミフレームにφ41mm正立フォーク、スタビライザー付きアルミスイングアーム、フローティングマウントのリアブレーキキャリパーなど、当時のライバルを1ランク上回る構成を備えていたが、基本的なセッティングは扱いやすさ重視。経験の浅いライダーでもエンジンを回し込んで走る醍醐味を味わうことができた。
Impression
アルミダイヤモンドフレームに強靱な足回りは健在!
87年デビューの初代GSX-R250のことはあまり印象に残っていない。レプリカルックではあったが、ライバル車に比べて特に速いわけでもハンドリングが優れているわけでもなく、中途半端な立ち位置だったように思う。しかし89年のモデルチェンジでエンジンの吸排気系を一新し、フレームもアルミのダイヤモンド型となったGSX-R250Rは格段にスパルタンな仕上がり。圧側と伸び側の減衰力調整機構を備えた前後サスペンションやトキコ製の強力な制動力を誇るブレーキキャリパーにもスズキの本気度を感じたし、事実SP250Fレースでも高い戦闘力を見せ付けた。
しかしスポーツ性能を追求すればストリートでの扱いやすさは犠牲にせざるを得ない。そこでスズキは共通のプラットフォームで役割を分担させる手法を取り、ネイキッド版のコブラをラインアップしてストリートユーザーに応えた。これでGSX-Rは街乗り適性という足かせが外れ、ピュアスポーツモデルとして速さを追求することができたのだ。
試乗車は整備前の状態でペースを抑えての走行を余儀なくされたが、フロントから素直に向きを変え、コーナー出口ではリアタイヤからトラクションが伝わって安心してアクセルを開けられる。当時、他社のレプリカモデルほど神経質さがなく、ライダー主導でギリギリまで攻め込めたことを思い出した。
そしてもうひとつの魅力が当時のレーシングマシンを彷彿とさせるサウンド。高回転では吸気音と甲高い排気音が混ざり、低中回転域ではしっかりトルクが出ている太くて柔らかな音質。回転域によってはっきりと表情が変わるのも、250cc4気筒の魅力だ。
【GSX-R250R】 1989年2月 specifications
エンジン型式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量:248cc
内径×行程:49.0×33.0mm
圧縮比:12.5
最高出力:45PS/15000rpm
最大トルク:2.6kg-m/10500rpm
燃料供給方式:キャブレター[BDST32]
変速機型式:常噛6段リターン
全長×全幅×全高:1990×695×1080mm
軸間距離:1380mm
シート高:730mm
乾燥重量:143kg
燃料タンク容量:13L
タイヤサイズ(前・後):110/70R17・140/60R18
当時価格:59万9000円