集合されたアップマフラーと、ワイドなリアタイヤが「スズメ蜂」の証

ホンダは250ccネイキッドとして、まず91年にジェイドをデビューさせる。エンジンはCBR250RR系ベースに中低速トルク重視にディチューン、スタイルは89年にデビューしていた400ccネイキッドのCB-1にも似たオーソドックスなものだったが、96年に生産を終了。その後継モデルとして96年に登場したのがホーネットだ。

ホーネットはそのエンジンこそジェイドと同じく、CBR250RR系のカムギアトレーン採用の水冷直4を引き続き搭載していたが、車体に関しては基本的なデザインから一新。

ジェイドではダブルクレードルだったフレームは、極太の角型パイプをメインメンバーとしたユニークなモノバックボーンフレームへと変化。左右に大きく張り出したグラマラスな曲面のタンクなど、ボリューム感を感じさせるボディ、当時ロードスポーツでは珍しかったアップマフラー、そして180サイズという極太のリアタイヤの装着など、250ccとは思えない強烈な存在感を感じさせるスタイル。

それもそのはず、デザインやフレームの基本的な部分に関しては後に登場するホーネット600や900に流用されるなど、ビッグバイクとしても通用するように造られていたのだから。そのスタイルは注目度抜群で、一躍人気モデルとなっていった。

00年には外装色7パターン、ホイール色4パターンを組み合わせられるカラーオーダープランが用意され、03年モデルではシート形状やサスセッティング変更でシート高をダウン。05年にはヘッドライトのマルチリフレクター化と同時に、ツートーンカラー採用のDXを追加。終始高い人気を保ちながらも、07年モデルで生産は終了した。

画像: 集合されたアップマフラーと、ワイドなリアタイヤが「スズメ蜂」の証

Impression
モノバックボーンフレームに180/55-17のRタイヤを装備

250cc4気筒のネイキッドとして登場した「ジェイド」は地味なデザインのためか人気が今ひとつ盛り上がらず。代わって車体まわりを一新して登場したのがホーネットだ。

独自のモノバックボーンフレーム、CBR900RRと同サイズの極太前後タイヤは視覚的インパクトも大きかったが、96年の冬に伊豆で行なわれた発表試乗会では、そのハンドリングについてレポーターたちの意見が分かれた。

肯定派は「コーナリング中の接地感の高さ」を讃え、否定派は「直進から旋回姿勢に移行するまでのキレの悪さ」を指摘する。確かに車体重量に対してタイヤが太過ぎてゴロンとしたハンドリングだが、右に左にフルバンクさせたときの高い安定性はホーネット独自の魅力。ギャップ吸収性の悪さ、タイヤ代の高さというネガ要素はあるものの、僕はこの際立った個性を高く評価すべきと感じた。

極太タイヤのためタイトターンでは押さえ付けるように寝かしていないとラインが膨らむ傾向がある。だがハンドルを積極的に切ったり戻したりする操作に大きめの体重移動をプラスして振り回すように扱い、一気に寝かし込むリズムを掴めば、深いバンク角でのコーナリングを存分に楽しめる。単にラップタイムを追求するのではなく、ダイナミックに操るおもしろさを堪能すべきオートバイなのだ。

低中回転域を重視したエンジンチューニングにより、街中での発進加速が楽にスムーズに行なえることもホーネットの特徴。引き換えにトップエンドまで引っ張ったときのパワー感はCBRよりも希薄だが、それでも1万8000回転程度までは軽々と回る。07年まで生産されていたし、エンジンの頑丈さにも定評があるから、中古を買うなら狙い目だ。

画像1: Impression モノバックボーンフレームに180/55-17のRタイヤを装備

【HORNET DX】 2006年12月 specifications
エンジン型式:水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
総排気量:249cc
内径×行程:48.5×33.8mm
圧縮比:11.5
最高出力:40PS/14000rpm
最大トルク:2.4kg-m/11000rpm
燃料供給方式:キャブレター[VP05]
変速機型式:常噛6段リターン
全長×全幅×全高:2035×740×1050mm
軸間距離:1410mm
シート高:745mm
乾燥重量:151kg(168kg:装備)
燃料タンク容量:16L
タイヤサイズ(前・後):130/70ZR16・180/55ZR17
当時価格:58万2750円

画像2: Impression モノバックボーンフレームに180/55-17のRタイヤを装備
画像3: Impression モノバックボーンフレームに180/55-17のRタイヤを装備
画像4: Impression モノバックボーンフレームに180/55-17のRタイヤを装備
画像5: Impression モノバックボーンフレームに180/55-17のRタイヤを装備
画像: 古典的ネイキッドとは一味違う、スーパースポーツ的なディテールを盛り込んだスタイルが特徴。今回撮影したのはホーネットDXの最終モデル。赤と黒のツートーンカラーが、ボリューム感の強いスタイリングの存在感を際立たせている。

古典的ネイキッドとは一味違う、スーパースポーツ的なディテールを盛り込んだスタイルが特徴。今回撮影したのはホーネットDXの最終モデル。赤と黒のツートーンカラーが、ボリューム感の強いスタイリングの存在感を際立たせている。

画像: コンパクトにまとめられたモダンなデザインのアナログ2連メーターユニット。左側の速度計は180km/h、右側の回転計は1万8000回転まで刻まれている。回転計の盤面左下には、燃料計も備えられている。

コンパクトにまとめられたモダンなデザインのアナログ2連メーターユニット。左側の速度計は180km/h、右側の回転計は1万8000回転まで刻まれている。回転計の盤面左下には、燃料計も備えられている。

画像: 正立フロントフォークはインナーチューブ径Φ41mm、当時最新の減衰バルブ機構を備えた動作性に優れたものを装着。ホイールの側面に施されたストライプや、ブラックの前後ブレーキキャリパーはDXのみの特徴だ。

正立フロントフォークはインナーチューブ径Φ41mm、当時最新の減衰バルブ機構を備えた動作性に優れたものを装着。ホイールの側面に施されたストライプや、ブラックの前後ブレーキキャリパーはDXのみの特徴だ。

画像: 単にリアタイヤをCBR900RRと同じ極太サイズの180/55-17としただけでなく、スイングアームにはアルミ押し出し加工材を使用するなど、足回りには贅沢な造りを採用して、優れたハンドリングも実現している。

単にリアタイヤをCBR900RRと同じ極太サイズの180/55-17としただけでなく、スイングアームにはアルミ押し出し加工材を使用するなど、足回りには贅沢な造りを採用して、優れたハンドリングも実現している。

画像: テールカウル右側にサイレンサーを配置した独特なアップマフラーレイアウトを採用することで、テール回りがスッキリとした印象となり、個性的なボディラインの魅力が強調された。

テールカウル右側にサイレンサーを配置した独特なアップマフラーレイアウトを採用することで、テール回りがスッキリとした印象となり、個性的なボディラインの魅力が強調された。

画像: 03年のマイナーチェンジ以降、シート高は745mmとされた。ボリューミーなスタイルにマッチさせながら形状も工夫されていて、足着き性は極めて良好。小柄な人や女性でも安心して乗ることができた。

03年のマイナーチェンジ以降、シート高は745mmとされた。ボリューミーなスタイルにマッチさせながら形状も工夫されていて、足着き性は極めて良好。小柄な人や女性でも安心して乗ることができた。

画像: リアサスペンションにはシンプルなリンクレス構造のモノショックを採用。減衰力調整はできず、プリロードの調整のみが可能なダンパーユニットが装着されている。

リアサスペンションにはシンプルなリンクレス構造のモノショックを採用。減衰力調整はできず、プリロードの調整のみが可能なダンパーユニットが装着されている。

画像: シートを外すと、まず特徴的なバックボーンフレームのメインメンバーである極太角パイプが目に飛び込んでくる。このフレームの構造上、シート下の収納スペースのサイズは限定されたものになっている。

シートを外すと、まず特徴的なバックボーンフレームのメインメンバーである極太角パイプが目に飛び込んでくる。このフレームの構造上、シート下の収納スペースのサイズは限定されたものになっている。

画像: CBR250RR用をリファインした水冷直4は最高出力40PS。250ccネイキッドのライバルたちが冷却フィンを模した空冷風デザインとしたのに対し、細かなフィンは刻まれていない。なお、エンジンガードは純正パーツではない。

CBR250RR用をリファインした水冷直4は最高出力40PS。250ccネイキッドのライバルたちが冷却フィンを模した空冷風デザインとしたのに対し、細かなフィンは刻まれていない。なお、エンジンガードは純正パーツではない。

文:太田安治

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