ライバルを脅かす性能と独自性が魅力! KTM 1290 SUPER ADVENTURE S
衝撃的だったのはワインディングでの走りだった。1300ccのアドベンチャーモデルとは思えない軽いフットワーク。ライディングモードをスポーツにして、電子制御サスのダンピングをストリートにしての減速、コーナーリング、切り返しの動きは、まるで一級のスポーツバイクを操っているような気にさえなった。言い過ぎではない。この大きさを感じさせない俊敏さ。フロント19インチホイールを忘れる旋回性。並のロードスポーツなら確実に相手ができる。エンジンは文句なしに力強く、トラクション性に優れていてスロットルを開けやすい。怒涛の力を無理なく使える。
それでいて、ダートで、出力特性とダンピングをオフロードモードにすると、エンジンは発進から5千回転くらいまでのスケールが広がる。スロットルオン、オフのレスポンスに良い意味での緩慢さが出て、滑りやすい路面でも躊躇なく操作できる。もっと積極的に土の上で遊べる腕があるならば、ABSをオフロード、もしくはオフ、トラコンのMTCをオフにするともっと遊べる。サスペンションも奥行きが出て林道くらい朝飯前だ。
高速道路では、ダンピングをコンフォートに変更。ピッチングモーションが抑えられたフラットで滑るように快適な走りが手に入る。ウインドシールドもしっかり効いて、クルーズコントロールで楽ちん巡航できる。デュアルパーパス、高速ツアラー、本格ロードスポーツの3台を、これ1台で楽しめる。それも、ほどほどでバランスさせた中庸ではなく、どのシーンでもトップクラスである。
文/濱矢文夫
ビッグオフと言えるズバ抜けた走破力 KTM 1090 ADVENTURE R
このセグメントのオン/オフ比率は、排気量の拡大に伴って年々オンロード志向が強くなっていく傾向だが、1090アドベンチャーRのオフロード性能を知ると、ビッグオフと呼べるモデルがまだまだ健在であることに安堵し嬉しい。さすがはダートを知り尽くしたKTM、オフロード好きも納得のいく高い走破性をグラベルで感じさせてくれた。
その車体の大きさに不慣れなまま、土質やその先がどうなっているのか分からないダートのオープンエリアにも不安なく踏み込んで行くことができ、トラクションコントロールを解除してしまえば、リヤを流すような走りも難しくはない。試乗した場所はシルキーなサンドが雨で程良く締まって、ブロックタイヤで走るにはイージーと思えたが、ときおり地面に硬くスリッピーな岩盤が姿を現し、穏やかにスライドしていた後輪が唐突に、さらに勢いよく滑るということを繰り返す、厄介なエリアでもあった。
しかし岩肌に乗ってスライドの挙動が急変しても、慌てずに立て直すことができるのは、トラクションのかかり具合が把握しやすいからで、それはストロークに余裕を感じる動きのいい前後サスペンション、そして異変に気付きやすいダイレクトで軽快なハンドリングのおかげ。もちろん、ライディングモードをトラコンも介入する「オフロード」に設定すれば乗り手の技量を問わず安心してダートを走れるだろう。乗るとこのように、ダートでの話ばかりに花が咲いてしまうのだ! 文/青木タカオ