※記事は月刊オートバイ2017年3月号より。車両については、現在の仕様と異なる場合がございますので、あらかじめご承知おきください。
元GPライダー、岡田忠之 × 伊藤真一が夢のインプレ対談!
編集部(以下 編):レースもつかの間のシーズンオフということで、久しぶりに岡田さんも登場して、伊藤さんと二人でのゴージャスなロングラン研究所です。岡田さんは、2月のテストまでは日本にいるんですよね?
岡田
:いますよ。でも、ずっと打ち合わせばかりしてます。好きなゴルフも行ってないもん(笑)。
編:お二人が会うのは、昨年の日本グランプリ以来ですか?
岡田
:そうだね。
編:最初、編集部で会っても何も話さないから「ケンカした?」って思ったんです(笑)。お二人が初めて世界選に参戦した年は、一年間同じモーターホームで暮らしていたそうですが、その当時から、こんな感じの関係性なんですか?
岡田
:そう。変わらないですよ。
伊藤
:うん。必要な時だけ喋る、みたいな感じですね。
編:全く気を使わないでいられる相手なんですね。さて、今回はアフリカツインとRC213VーSの2台に乗って頂いたわけですが、まず前半は、アフリカツインの印象からお聞きしたいのですが。
伊藤
:俺、以前にDCTの方に乗りましたよね? なんか今日はDCTの方が好きかもって思った。
編:ええ!? 今回は、伊藤さんのリクエストありきで、MTタイプをご用意したのですが(笑)。
伊藤
:そうだっけ?
岡田
:ちょっと、俺よりコメントがひどいんじゃないの?(笑)
編:いえ、率直なご意見は参考になりますから大丈夫です(笑)。
伊藤
:これ、マニュアル車とDCTで各ギアのレシオが違うよね?
岡田
:確かに違うね。同じ6速だけど、1速から違う。MTの方がショートなんだね。
伊藤
:なんかファイナルが短く感じるんだよね…。(スペックを見ながら)ああやっぱり、DCTの方がずいぶんロングなんだ。乗った時のイメージが全然違うもん。
岡田
:乗るとすぐ分かるよな。
伊藤
:分かる分かる。DCTは1速から長いし、重さも全然違う。
編:そういえば、本当に初期のDCTは、もっとどんどんシフトアップしていった印象があります。
岡田
:初期のDCTはドンツキが結構あったんだよね。で、改良されてギア比をロングにしたんだけど、ドンツキの全部は解消されなくて、それを少しずつアジャストしていったんだと思う。もともとホンダのエンジンは「ツキ」がいいから、ちょっとドンツキが出やすい傾向があるのね。で、こういうポジションのバイクでドンツキがあると、余計乗りづらく感じるものなんだよね。でもアフリカツインに関しては、それが全然なかったから、アレ? って思ったし、発進時も凄くやりやすかった。これ、売れてるんでしょ? それが納得できる気がしたよ。
伊藤
:俺が今日感心したのはさ、街中を走ってると、6速から1速までミッションを一気に落としたりする場面が結構あるでしょう。そういう時に、落ちきらないミッションって意外と多いじゃない?
岡田
:ああ、確かにそうだね。
伊藤
:2速で引っかかって落ちきらなかったりするんだけど、アフリカツインはキレイに落ちていくから、よく出来たトランスミッションだなって思ったんですよ。たぶんオフロードなんかで、硬いモトクロスブーツでラフに操作した時のことも想定して作ってあるんだろうね。
編:では伊藤さんが、今回のMT車よりもDCTの方が良いと感じたのはどんな点だったんでしょう?
伊藤
:なんかね、足周りのフィーリングが違ったんですよ。以前DCTを試乗した時の、しっとり感がないように感じたの。でも、フロントのコンプレッション側の減衰を2段階緩めたら、ほぼ近い感触になったので、たぶん車輌重量とか、外気温とかの影響だったんだろうなって思います。今日の取材は1日中寒かったしね。
編:エンジンなどには、どんな印象を受けましたか?
伊藤
:専用開発のツインエンジンは、2気筒にしては回した時に振動が全く出ないと思わなかった?
岡田
:うん、そうだね。
伊藤
:撮影中に、何度か道をUターンして往復した時なんか、立ち上がりでアクセルを全開にすると、振動もなくブワッと回って、かなり気持ちよかったですよ。
岡田
:俺は1速で急発進した時にトラクションコントロールが効いてるのを感じられたかな。今日みたいに街中と高速道路を走るだけだと、あまり威力がわからなかったけど、せっかくなら悪路=土の上で走ってみて、どのくらい効くのかを試してみたかったな。
編:もともと伊藤さんは、最初にアフリカツインに乗った時に、「個人的な好みとして、トラコンとか電子制御があまり好きじゃない」って話をされてて。岡田さんもどちらかといえばそうですか?
岡田
:だって俺らの時代には、なかったモンだもん(笑)。まあ、付いてたら付いてたで、さっきも言った悪路だとか、雨が降っている時なんかに、初心者だったり、まだバイクの操作に恐怖心のある人には、かなり役立つと思うよ。
編:岡田さんはスキル的に必要ないけど、一般ライダーの不安を軽減したり、転倒防止にはいいと。
岡田
:そうそう。スキルにそこまで自信がなくても、電子制御のおかげで安心して乗れるだろうからね。ABSも今回みたいな走りだと使わなかったから、その出来についてはよくわからなかったけど。
伊藤
:リアのABSだけ、手元のボタンで簡単に解除できる機構が付いてるんだよね。さっきみたいに道を何度も往復した時なんか、リアブレーキをちょっと強めに踏むと、結構簡単にリアがロックして、ABSが効いちゃうから、あの解除機構は便利だなと思った。あと俺、『Feeling First』っていうホンダのプロモーション動画で、俳優の福士誠治さんと一緒にアフリカツインを北海道でかなり集中して乗ったんですよ。オフロードも走ったんだけど、その時もABSは解除した方が良かった。
岡田
:確かに、これはオフロードで走ってみたくなるなぁ。俺は普段あまりこのタイプのバイクに乗ることはないんだけど、乗車フィーリングが嫌いじゃないだけに、土の上を走ってもっといろいろ試してみたくなりましたね。
編:そういえば、一日乗ってみての結論では、結局DCTとマニュアル車のどちらが好みでしたか?
伊藤
:結局、どっちもいいと思った。もし「どちらか選ぶ」となったら、かなり真剣に悩むよね(笑)。まあでも…自分が買うならやっぱりマニュアルかな。北海道のビデオ撮りの時は、ずっとマニュアル車に乗ってたんですよ。3日、4日くらいかなりみっちり乗って、オフも面白かったから。
編:初心者とか、オフのスキルがあまりないライダー達には、オフロードでこそDCTの威力が感じられる、という意見もあるんです。どんな時もエンストしないので。
伊藤
:なるほどね。
岡田
:確かにそう言われればそうだね。俺も最終的には自分で操る方が楽しいと思うので、買うならマニュアル車を選ぶだろうけど、やっぱり、その人がどんな用途で使うかによって、どっちがいいかは決まるんじゃない?
伊藤
:以前の試乗でも言ったことだけど、パッと乗ってどこかツーリングに行くとなったら、今のホンダのラインアップの中では、このアフリカツインが一番いいと思うんだよ。北海道にツーリング行くことになったらコレだなって。
岡田
:疲れないし、走りやすいもんね。パッと乗って違和感がないバイク。発進も素直だし、トルクもあるし、エンジンも回るし。
伊藤
:俺はタンデムで旅がしたいけど、リアにパニアをつけて、ローシートにすれば、足着きも良くなって安心だしね。シート自体が広いからパッセンジャーも乗りやすいだろうし、快適だと思うよ。
HONDA CRF1000L Africa Twin SPECIFICATION
全長×全幅×全高:2335×930×1475㎜
ホイールベース:1575㎜
シート高:870㎜(ローボジションは850㎜)
車両重量:232㎏
エンジン形式:水冷4ストOHC4バルブ並列2気筒
総排気量:998㏄
ボア×ストローク:92.0×75.1㎜
圧縮比:10.0
最高出力:92PS/7500rpm
最大トルク:9.7㎏-m/6000rpm
燃料タンク容量:18ℓ
変速機形式:6速リターン
キャスター角:27゜30′
トレール量:113㎜
タイヤサイズ(前・後):90/90-21・150/70R18
ブレーキ形式(前・後):ダブルディスク・ディスク
価格:138万2400円(ヴィクトリーレッド)