大型に近づきたかったCBXとFXの時代
東大に合格するよりも難しいと言われた、1975年スタートの「中型限定解除」試験おかげで大型への道がとても困難になった時代。当然のことながら、ユーザーが求めたのはヨンヒャクだった。中型免許で乗れる、少しでも豪華な、少しでも上級モデルのような装備やサイズのヨンヒャクが欲しかったのだ。
CB400Four、ヨンフォアは75年10月の免許制度改正によって408㏄という排気量では大型免許が必要となってしまい、76年3月に398㏄モデルにチェンジし、フラットハンドルのⅠと、アップハンドルのⅡがラインアップされたが、生産効率の悪さやコスト高による採算性の悪さなどもあり、77年5月のホークⅡ発売を機に生産終了となってしまう。
そんななか、79年にDOHCエンジンを搭載したヨンヒャクがカワサキから登場する。それが、Z400FXだ。輸出仕様のZ500FXをベースにした上級クラス譲りの400㏄マルチ、しかもDOHCエンジンを搭載したモデルは、大型への憧れとヨンヒャクへの期待が強い時代にマッチしたものだった。その後、ヤマハがXJ400で、スズキがGSX400Fで400㏄マルチに追従し、ヨンヒャクは4気筒が当たり前となっていく。
当時、ホンダは高い走行性能を持った2気筒モデルのホークⅡ(CB400T)で400㏄市場を戦っていたが、人気は4気筒モデルに集中。満を持して登場するのが、CBX400Fである。クラス最強となる48PSエンジンに、プロリンクサスペンション、アンチダイブ機構付きフォーク、前後の鋳鉄製ボードディスクなどの独創的なメカニズムを満載。高級感のあるデザインと相まって、たちまち一番人気となった。83年12月にCBR400Fが投入されて生産中止となるが、ファンの要望に応えて再生産されたというから、当時の人気の高さが分かる。
今でも「400㏄は4気筒じゃないと!」と熱く語るライダーは多い。それは、『あの頃』、魅力的に感じたヨンヒャクが、「スタンダード」として心に根付いているからではないだろうか。