最大にして最強・最速カワサキイズムここにあり
1969年にデビューした世界初の市販4気筒スポーツ、ホンダCB750Fourによってスポーツバイクの歴史は一変。
それは、当時スポーツバイクの王道であった500〜650cc級の4スト並列ツインエンジン搭載モデルをラインアップしていたイギリスのメーカーに大きなショックを与え、その後の凋落のきっかけともなった。
日本でも64年に目黒製作所を吸収、その技術を取り入れて66年から初の4スト大排気量スポーツ・W1を発売していたカワサキは、とりわけ大きなショックを受けることになった。
しかしカワサキはそれをきっかけにして、CB750Fourを超える最速マシンの開発へと大きく舵を切ることになる。あらゆる面でCBを超えることを目指し、一切の妥協無く徹底的にこだわり抜いて磨きあげること3年、ついに72年に発売されたのがZ1だ。
CBの排気量を大幅に超える903cc、そして当時市販車では珍しかったDOHCを採用した空冷直4エンジンによる圧倒的な動力性能に加えて、美しさと迫力を兼ね備える堂々たるスタイリングによって、一躍Z1は世界中から羨望の眼差しが注がれるスーパーマシンとなる。
その高性能は当時世界各地で盛んになった市販大排気量車によるレースでも証明され、ますます人気は高まっていった。
もちろんライバルたちも指をくわえて見ているだけではない。
70年代半ばから4スト開発に乗り出したスズキからGS1000、ヤマハも4気筒のXS1100、ホンダもRCB譲りのDOHCを取り入れたCB900Fと続々とニューモデルが登場し、大排気量スポーツの高性能化競争は加速。
これらに対抗してZ1もモデルチェンジを繰り返し、排気量を拡大したZ1000、さらにスポーティさを強調したZ1000マーク2やZ1000J、Z1000Rなどへと進化を続けた。
しかし80年代に入り水冷エンジンを搭載したライバルたちが登場するようになると、Z1由来の空冷直4はいよいよ限界に達し、Zの名を冠した空冷モデルとしては81年のZ1100GPが最後となる。
80〜90年代は、カワサキのスポーツモデルとしてはGPZ、ZZR、ZXRなどの時代となり、カワサキ4ストスポーツの大看板「Z」ブランドは長い雌伏を強いられた。しかしその眠りは03年、Z1000の登場で破られることになる。
この新生Z1000は空冷時代のZとの直接のつながりはない。
しかし、ネイキッドモデルでありながら超個性的なスタイルを与えられたコンパクトなボディに、ZX-9Rベースのパワフルな953cc水冷直4エンジンを詰め込んだ、走りもルックスも刺激的なスーパーネイキッドというZ1000のスタイルは、まさにZ1開発時のコンセプトの現代版だ。
この現代のZ1000はスーパースポーツやメガスポーツには絶対的な性能では劣るが、ストリートで走りを楽しむのに最適なモデルとしてライダーの心を確実に捉え、スーパーネイキッドの定番モデルの地位を確保。その人気に応えて07年、10年、14年にモデルチェンジが加えられて、さらに過激なルックスと走りを備えるようになった。
また、派生モデルとして生まれたニンジャ1000も絶大な人気を集めるなど、ZのDNAは今も確実に受け継がれている。