スーパースポーツ(Ninja ZX-10R SE)、GTツアラー(Ninja H2 SX SE+)、そしてアドベンチャー(VERSYS 1000 SE)と、タイプは異なるが、いずれのモデルも電子制御サスペンションを搭載しているのが特徴。同時に3機種もの電子制御サス搭載車を登場させるのも驚きなのだが、そもそも、電子制御サスとはそんなにスゴいのか? ということで、その威力と魅力を、カワサキ自慢の最新3機種に試乗しながら検証してみよう。
Ninja ZX-10R SE、Ninja H2 SX SE+、VERSYS 1000 SEでチェック!
バイクの場合、サスペンションに電子制御機構を付加するには障壁が多い。まず、バイクは車体自体が小さいから、余分な構造物は付けたくないのだ。重量増にも神経質になる。
だから、バネのプリロードとダンパーの減衰力をプリセットするだけの電子制御サスでさえ、当初は重量とサイズに余裕のあるツアラー系やツーリングスポーツモデルにしか搭載されていなかった。
リアルタイムで衝撃に合わせて減衰力を可変する、制御、機構の複雑なセミアクティブタイプとなるとなおさらだ。スポーツモデルに採用されるようになったのは、ほんの5〜6年前からのことだ。
バイクに搭載できるこのタイプのサスを先に完成させたのはオーリンズ、WP、ザックスなどの海外メーカーたち。
バイク大国・日本でもバイクやサスのメーカーが開発を進めていたわけだが、2019年モデルからカワサキが「KECS」として搭載した、ショーワのEERAをベースとした電子制御サスが量産車向けとしては初になる。
バイク用セミアクティブサスの減衰可変制御方法は大きく分けて2種類ある。ひとつは車体内に搭載された慣性センサー(IMU)からの信号で減衰力を可変するタイプ。YZF-R1Mなどに搭載されているオーリンズがこのタイプだ。
もうひとつはサスの動きを検出するストロークセンサーからの情報で減衰力を可変するタイプ。
これはS1000RRなどに搭載されるザックスなどだ。
センサー情報のリアルさ、減衰力調整の対応速度は後者の方が1000分の1秒ほどの応答速度の中で、コンマふたケタ秒ほど早く正確だ。
ただ、この方式はセンサーの大きさや機構自体の煩雑さがネックだった。
今回試乗した3モデルに採用されるKECS(EERA)の場合、ストロークセンサー自体を小型化してサス内に組み込むレイアウトを採用。
制御モーターも小型化しつつ、応答速度を高めたのが特徴。ハイグレードなスポーツサスからカートリッジタイプにまでセミアクティブサスを展開。プリロード調整も電子制御として、状況に応じて車高を調整するシステムなどもある。このKECSとショーワのEERAの登場で、電制サスは一気に進化したと言っていい。
PHOTO:森 浩輔、赤松 孝 TEXT:宮崎 敬一郎、太田安治、本誌編集部