バイクの原点を思わせるスポーティな親近感
ロイヤルエンフィールドほど、数奇な運命を辿ってきたメーカーはないだろう。
イギリスでバイク生産に乗り出したのが1901年だから、世界で最古の名門メーカーの一つなのだが、60年代後半には他の英国メーカーと同様、日本車の進出もあって経営状態が悪化、70年に倒産してしまう。
ところが、54年にかつて植民地であったインドからの受注があって、インドに現地工場が設立されており、おかげで倒産後もインド側が独自に生産を続行、生き延びてきた。
そして95年には、ボルボとの合弁で産業用自動車などを扱う大手のエイカーグループ傘下に入り、今日に繋がっている。
さらに、4年前にはイギリスに技術センターを開設。れっきとしたインドメーカーにして、英国の名門としての復活を目論んでいるかのようである。
ミドルクラス車での世界進出を企てており、名門にして発展途上にあると言っていいわけだ。
生産モデルも、長きに渡って「生きた化石」的なものであったが、08年にはクランク・ミッション別体式を一体式に改め、アルミシリンダや電子制御式燃料噴射を採用、現在に適合させたものへと進化させている。
14年にはその単気筒ユニットをさらに発展させ、ロイヤルエンフィールドにとって初めてのダブルクレードルフレームに搭載したコンチネンタルGT535を登場させ、将来への口火を思わせたものである。
この新しい2気筒のコンチネンタルGT650は、その車名を引き継ぎ、ともに65年のコンチネンタルGT250をイメージリーダーとするカフェレーサータイプである。
ただ、GT535は昨年に生産を終えており、650はそれに代わる新型車と考えてよさそうだ。
ともかく、カフェレーサーと言えども、このGT650にはスポーツすることを強要するとか、スパルタンといった雰囲気はどこにもない。
ハンドルがセパレートタイプであっても、上体の前傾度は昨今のスポーツネイキッドに近い水準にあり、バックステップが装着され、燃料タンクもINT650とは異なる専用品であっても、それはライポジを最適化し、よりカフェらしさを演出するためのものであるようだ。
積極的にダイナミックに体重移動して、コーナリングを楽しみやすくても、あくまでも普通に使えるバイクなのである。
何より、走り出すや、ホッとした気分に浸れるのがいい。
空油冷4バルブエンジンはSOHCで、ヘッド回りが軽量のはずだし、シリンダもわずかに前傾しているので、低重心感があって、走り出したときに安心感に浸れる。
低回転域からトルクは豊かで、粘りもあるから尚更で、ゆっくり走って気持ちいいのである。
そして、1軸バランサー付きの270度クランクが発する不等間隔のビート感がまた心地いい。
そのトラクション感がバイクを駆っていく気分を高めてくれるが、不快な振動はない。
単気筒のGT535にあった極低回転での燃調の不備も見事に解決されている。
また、高速度域での振動や走行安定性に関しても、もはやさほど問題に感じることはなく、技術水準の向上ぶりを思わせ、今日的にレトロっぽさを楽しめる。
SPECIFICATION
全長×全幅×全高 2119×745×1067mm
ホイールベース 1398㎜
シート高 820㎜
車両重量 208㎏(90%装備)
エンジン形式 空冷4ストOHC270°クランク2気筒
総排気量 648㏄
ボア×ストローク/圧縮比 78×67.8mm/9.5
最高出力 47PS/7250rpm
最大トルク 5.3㎏-m/5250rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 12.5L
キャスター角/トレール量 NA/NA ㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 ディスク・ディスク
タイヤサイズ 前・後 100/90-18・130/70-18
RIDING POSITION 身長:161㎝ 体重:53㎏
カフェレーサータイプながら上体の前傾度は強くなく、専用のレーサータイプのタンクと、40㎜後方、20㎜上方に移動したステップによってピタリと決まる。
足着き性は悪くない水準にある。
COLOR VARIATION
アイスクイーン
85万9000円
ミスタークリーン
88万9000円
ブラックマジック
83万9000円
DETAILS
メーターはアナログ式の回転計と速度計が並べられた2眼式という伝統的な構成。
トリップ、オド、燃料計が内部に設置される。
燃料タンクはカフェレーサーらしく前後長がわずかに長く、後端上部の角が盛り上がっている。
容量はINT650より少々小さい12.5リットル。
エンジンは排気量648㏄の空油冷式4バルブSOHC、1軸偶力バランサー付きの270°クランクだ。
フォルムもかつてのイメージを踏襲する。
ヘッドライトは、形状が伝統的な丸型で、ハロゲンバルブを用いるリフレクタータイプだ。
ハンドルバーはセパレートタイプである。
TEXT、PHOTO:和歌山 利宏