※お話を伺った皆さん
今田光宣 氏 株式会社 本田技術研究所 二輪R&Dセンター 熊本分室 研究員
萩原紳治 氏 株式会社 本田技術研究所 二輪R&Dセンター 上席研究員
後藤悌四郎 氏 株式会社 本田技術研究所 二輪R&Dセンター 企画室 主任研究員
2000から3000回転付近の力強さを熟成
初代CB1100が発売されたのは2010年2月。
排ガス規制の影響で空冷エンジンが姿を消す中、機能美にこだわってあえて空冷4気筒をチョイス。
ホンダとしては80年代以来となる新作の大型空冷ユニットだった。
「絶対的なパワーよりも気持ちのいいフィーリング」を重視して、CB1300SFのクランクケースをベースにシリンダーから上を完全新設計としたそのエンジン。
シリンダーヘッドまわりのオイル通路を増やし、プラグ座面部分に冷却フィンピースをボルトオン。
各シリンダー間にも走行風が抜ける穴を設けるなど、さまざまな工夫を凝らして冷却問題をクリア。
インジェクションセッティングには、特にスロットルをわずかに開けた2000〜3000回転付近の力強さにこだわり、スロットル開度1度ごとにマップを積み重ねていくほどの手間がかけられた。
それから4年。CB1100が各部の熟成を図り、トラディショナルイメージのEXを追加してリニューアルデビュー。
エンジンについては、低回転領域の力強さをさらに強調するとともに、エンジンフィーリングの最もテイスティな部分を日常的に味わえるようモディファイ。
具体的には、新しい法規制に合わせてマフラーの排気デバイスを取り外し、集合部分の容量を変更して消音用グラスウールを廃止。
それに合わせてPGM-FIのセッティングを煮詰め直すことで、低回転域とトップエンド域のパワー&トルクをアップ。
さらに、ミッションのギアやベアリングの厚みを減らすことで、同じクランクケース幅のまま従来の5速から6速化にすることに成功している。
ギア比は1〜5速を従来よりも若干ハイギヤード化し、6速はオーバードライブに設定。
逆にファイナルは若干ローギヤード化。
サウンドやバイブレーション、力強さなどの面で、エンジンのキャラクターがもっとも色濃く出る回転域が、従来型は80㎞/h以下だったが、新型では6速化とギア比の変更で、高速巡航時に多用する100㎞/h付近に来るように設定。
心地よさ、楽しさがより体感しやすくなった。
トラディショナルムードのEXは、シンメトリーな2本マフラーの採用に伴って90PSまでパワーアップされたが、体感的にスタンダードモデルと大きく変わらない。
それよりも、2本マフラーが奏でる身体全体に響く図太い排気音が気分を盛り立ててくれる。
新たに6速ミッションを搭載した空冷4気筒
性能や味わいはもちろんのこと、機械としての端正な佇まい、ライダー目線からの見え方にまでこだわった、現行ホンダ唯一の空冷4気筒ユニット。
新型はインジェクションセッティングの変更による低速トルクの増強と6速ミッション化、新作マフラーによって、よりキャラの濃い味付けとなった。
モデルの方向性に合わせてEXはアルミ地を活かしたオールシルバー、スタンダードはケース、シリンダー、ヘッドをブラック仕上げとしている。
Specifications
<CB1100EX>※( )内はABS※[ ]はABS Eパッケージ
■全長×全幅×全高 2205×835×1130【1145】㎜
■ホイールベース 1490㎜
■シート高 785㎜
■車両重量 257(259)【260】㎏
■エンジン形式 空冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
■総排気量 1140㏄
■ボア×ストローク 73.5×67.2㎜
■圧縮比 9.5
■最高出力 90PS/7500rpm
■最大トルク 9.3kg-m/5500rpm
■燃料供給方式 FI
■燃料タンク容量 17ℓ
■変速機 6速リターン
■ブレーキ形式 前・後 φ296㎜ダブルディスク・φ256㎜ディスク
■タイヤサイズ 前・後 110/80R18・140/70R18
Specifications <CB1100>※( )内はABS
■全長×全幅×全高 2205×835×1130㎜
■ホイールベース 1490㎜
■シート高 765㎜
■車両重量 244[246]㎏
■エンジン形式 空冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒
■総排気量 1140㏄
■ボア×ストローク 73.5×67.2㎜
■圧縮比 9.5
■最高出力 88PS/7500rpm
■最大トルク 9.5㎏-m/5000rpm
■燃料供給方式 FI
■燃料タンク容量 14ℓ
■変速機 6速リターン
■ブレーキ形式 前・後 φ296㎜ダブルディスク・φ256㎜ディスク
■タイヤサイズ 前・後 110/80R18・140/70R18
DETAILS
2本出しのエキゾーストマフラーを採用し、リアビューの迫力をアップ。サイレンサーには美しいクロームメッキが施され、スポークホイールともども磨く楽しみもある。
φ296㎜フローティングディスクと対向式4ポットキャリパーのフロントブレーキは、スポークホイール仕様のEXでも継承。ABS仕様ももちろんラインアップされる。
シートは厚みを増し、往年のCB750FOURのイメージにより近づいた。タックロール風に縫い目をあしらい、形状を見直すことで足着き性を向上。シートエンドにはHONDAロゴ。
中央に外気温や燃費計、ギアポジションを表示する液晶ディスプレイをセット。EXにはダークグリーンの文字盤を使用。