軽くしなやかな走りとスタイルは1クラス上のマシンにも負けない!
MT-07を見たときから、気になっていたことがある。
それは「MT-09とどうやって棲み分けるんだ?」ということ。
この排気量は、欧州ではエントリーユーザーが注目するクラスで、MT-09はさらにプラスαのパワーを魅力にするモデル。
言葉で言えば納得できるが、実車を見比べると悩みそうな気がする。
それだけMT-07はとてもチャーミングなのだ。
MT-07は270度クランクのパラツインを搭載し、欧州で保険などを優遇される85PS以下のスタンダードスポーツ。
プライスも抑えられているが、その斬新なデザインで、その造形、車体各部の造りなどに安っぽさをまったく感じない。まず、コレがすばらしい。
そしてそのパワーフィールがまた面白い。
主張しすぎない、ツインらしいパルス感が4000回転以下にあり、よく粘る。ピックアップもリニアで力強い。
どこの回転域からでも意のままに力を発揮する。使っていて気分がいい。
さらに引っ張れば、ほぼフラットに1万回転ほどまでよどみなく回る。そこでもイヤな振動もなく、バランスもいい。
6速・100㎞/hは約4200回転。クルージングしているとパルス感で小気味良くもあり、ちょいと速度を上げればいきなり滑らかにもなる。
気分で好きなところを楽しめるのだ。
いい遊び相手になる。直接比較してないので断言はできないが、MT-07の中域トルクのコシの強さ、そこからの実質的なトルクのピックアップはこのクラスで一番だ。
ハンドリングは素直で軽快。身軽さは…毎度の例えだが、まるで400のネイキッドだ。
足回りもしなやかで快適だ。この足回りのセッティングはMT-09よりも少しコシが強く、かなりスポーティな走りもノーマルセッティングのままでこなす。
MT-09よりパワーもペースも低いところでの話だが、車体、エンジン、足回り、それぞれのドライバビリティが絶妙なマッチングでバランスしている。
なんだか、既に2、3回モデルチェンジをして熟成されたバイクのような印象を受ける。
ただ扱いやすいだけでなく、面白さ、楽しさといった要素がたくさんある。
この魅力はMT-09にもあるが、タイプが違う。単なる排気量による上下関係ではないのだ。
だから、試乗してみてさらに悩むようになった。
MT-07は、そんな少し上のクラスにも通じる完成度と面白さを持ったバイクだ。
しかも、乗り手も使い方もまったく選ばない。悩ましいほど、よくできたバイクだ。
SPECIFICATION
全長×全幅×全高 2085×745×1090㎜
ホイールベース 1400㎜
シート高 805㎜
車両重量 179(182)㎏
エンジン形式 水冷4ストDOHC4バルブ並列2気筒
総排気量 689㏄
ボア×ストローク 80×68.5㎜
圧縮比 11.5
最高出力 73.4PS/9000rpm
最大トルク 6.9㎏-m/6500rpm
燃料供給方式 FI
燃料タンク容量 13ℓ
キャスター角/トレール 24.5度/90㎜
変速機形式 6速リターン
ブレーキ形式 前・後 φ282㎜ダブルディスク・φ245㎜ディスク
タイヤサイズ 前・後 120/70ZR17・180/55ZR17
機能美も光る「ダブルデッカー」スタイル
YAMAHA MT-07/ABS
吸気・燃焼・排気の流れを表現したエアインテークアイコンをデザインの核とし、フロントからテールエンドまでを樹脂パーツで繋ぐ独特な造型を持つMT-07。
スリムなタンク形状は、アップライトで自由度の高いライディングポジションに貢献する。
徹底した軽量設計とマスの集中化を推し進めたスリムでコンパクトなボディは、3気筒エンジン搭載の兄貴分MT-09のイメージを踏襲し、共通フォルムを持たせている。
張り出した燃料タンクの外側には、MTシリーズのアイデンティティとなるインテーク形状のカバーをレイアウト。
低く構えたヘッドライトと合わせ、精悍なフロントビューを演出した。
そして、アーバンスポーツらしい洗練された新しさを表現したバックビュー。
シートカウルエンドをブラックアウトし、シンプルでスリムな車体を強調。
低重心を視覚化するため、ヘッドライトは低い位置にセット。
タンクカバー下のエアインテークへラインを繋ぎ合わせるため、フロントフォーク上部をブラックアウトした。
タンクカバーからシート下側までを一体成型し、躍動感あふれるラインを形成。
乗り手のライディングフォームを妨げないよう張り出しをなくし、スリムにシェイプアップされている。
直感的に情報を把握しやすいフル液晶マルチメーター。
中央にギヤポジション、下段にはエンジン回転数をバー表示し、トルクバンドの4000〜8000rpm部分を幅広く表示する。
Riding Position
身長:176㎝
体重:68㎏
車格は400クラスとさほど変わらない。世界戦略車だが、ライポジもコンパクトで、日本人にもマッチしやすい。
椅子に座っているような姿勢で使い勝手がいい。
シート高は805㎜だが、車体がスリムなのとサスがソフトで動くため、実質的な足つき性はすごく良好。