強烈な個性を持つブランドMTは「走り」の魅力を全身で表現している
MTというブランドは、2004年にデビューしたMT-01に始まる。
クルーザーの大型空冷Vツインエンジンを積んだスポーツネイキッドで、その強烈なトルクでスポーツするという、独創と異端のスポーツバイクだった。
その後、ヨーロッパヤマハからMT-03というシリーズモデルが登場する。
こちらはモタードモデル・XTZ660Xのエンジンを搭載したアーバンスポーツ。
とにかく身軽で、街中から峠道まで、その瞬発力を活かしてキビキビ走った。
だが、MTシリーズでくくるには、MT-01とは走りのキャラクター、それにルックスもまったく違っていた。
見た目でわかる共通点は「デザイナーズブランドのような凝ったルックス」ということだけ。
走りのタイプに共通点があるとすれば「独特の個性を楽しむことをテーマとした『走り』が魅力」なことぐらい。
MT-01はそれが「鼓動」というエンジンの息吹き、03はトルクで生み出す「気楽な機動性」だった。
MTシリーズは、個性的で美しいフォルムを持ち、ハンドリング、エンジン、実際に走らせたときのフィーリングの中に何らかの「魅力」を潜ませている。
かなり奥の深いテイストを持ったシリーズなのだ。
もちろん、今日のMT-09や07を、ヤマハが最初から想像していたとは思えないが、こうした新しい兄弟たちにも「操ることが楽しい濃厚な個性」がしっかりとある。
単にヤマハの中でもっとも個性の強いブランド名だけを借りたわけではないのだ。MT-09のトリプルテイストとストリートファイター的に俊敏な身のこなしは、それだけで濃厚な個性だ。
MT-07にいたっては「乗り手をワクワクさせる走り」という、MTシリーズのテーマそのものが開発コンセプトの中にある。
そんなテーマを妥協なく、魅力として味付けされたエントリーモデルはあまりない。あっても、MT-07ほどどんなスキルのライダーにも受け入れられる「ワクワク」ではない。
走るのが面白い。それこそがMTシリーズのテーマであり、この09と07も「他車とはちょっと違う誘惑」を発散している。それが注目を集めている理由だ。
MTシリーズは消去法で妥協しながら手に入れるバイクではない。
その造り込み、走りの魅力に惹かれて、狙って手に入れたくなるバイクだ。
ある意味、乗り手の心を熟知した「バイクマイスター」が造ったブランドなのかもしれない。
MT比較・本誌テスター3人のホンネ
宮崎 敬一郎
MT-07 : 使いやすさと使っての面白さを絶妙なバランスでちりばめたスポーティなSTDバイク。最初のオーバー400として、初心者にも勧められるし、重いバイクに飽きたというベテランにも勧められる。よくできたバイクだ。
MT09 : 極めて軽い車体に力漲るパワフルなエンジンを組み合わされたバイク。ストリートファイター的なアグレッシブな機動の走りから、のんびりとしたツーリンクまでこなすゆとりがあるが、いざブン回したときの元気な走りはそうとうにヤンチャだ。
太田安治
MT-07 : 「塊」感のあるルックスだけど、フットワークは嘘のように軽快。低回転からトルクがモリモリ湧き上がるエンジン特性と併せて市街地から峠道まで乗りやすく、長時間ライディングも楽。長く付き合えそうな一台。
MT-09 : 最近の日本車には珍しく表情豊かなエンジンが最大の魅力。ストロークが長く、ソフトな設定の前後サスで乗り心地がいいし、姿勢変化を利用して旋回させる楽しさもある。ちょっと生意気な小娘といったキャラクター。
青木タカオ
MT-07 : “扱いやすい”を売りにしているビギナー向けモデルだと物足りないし、大排気量の本気モデルだと過激すぎてアクセルを開けて楽しめない。正直なところ、そんな風に思うことがあるが、MT-07はすべてがちょうどいい!
MT-09 : Aモードはとにかく過激。だけど足まわりがよく動くのでトラクションを感じやすく、ガンガン開けて楽しめる‼ この軽快な車体とスロットルレスポンスの鋭いトルクフルなエンジンの組み合わせはシビれるぜ〜‼
●PHOTO:南 孝幸/森 浩輔 ●TEXT:宮崎敬一郎/太田安治/青木タカオ/本誌編集部