トルキーでより力強いエンジンと、ストロークを伸ばした前後サスを採用する注目の1台だ。
日本のツーリングシーンにピッタリのアドベンチャー
ゆったりツーリングを楽しむライダーから支持されているのが「アドベンチャー」と呼ばれるモデルたち。
リラックスできるポジションと長い前後サスペンションによる乗り心地の良さ、常用回転域で力強いエンジン特性、神経質さのない操縦性で、長距離、長時間のライディングを快適に楽しめる。
ただ、欧州のメーカーが主導権を握っているこのクラスは大型重量車が多く、平均的な日本人の体格だと取り回しも足着きも厳しい。
こうした理由と車両価格の点から国内で人気を呼んでいるのが250〜400㏄のモデルだ。
このCB500Xは海外仕様車だが、日本の免許制度に合わせた400Xの兄弟車なのでルックスと基本構成は共通。ただ、その乗り味はだいぶ違う。
エンジンのボア×ストロークと排気量は400Xが67㎜×56・6㎜の399㏄で、CB500Xは67㎜×66・8㎜の471㏄。
CB500Xの最高出力ははヨーロッパのA2免許に合わせて47PSに抑えられているが、最大トルクは13%ほど向上し、無造作にクラッチを繋いでもグイッと発進し、3000回転以下でポンポンとシフトアップしてもまったくギクシャクすることなく速度を乗せていく。
最もスロットル開度に忠実に反応するのは3000〜7000回転で、市街地から高速道路クルージングまでをカバー。
エンジンブレーキの効きも自然で、シフト操作を減らしてリズミカルに走れる。
400Xも同様の特性だが、力の厚みには明らかな差がある。
19インチの大径ホイールを前輪に採用していることもあってハンドリングは穏やかだが、バンク時にフロントタイヤの追従が遅れる感じはなく、ライダーが意図したラインを素直にトレースしていく。
フロント150㎜、リア135㎜と長いストロークを持つサスペンションは初期の動きが良く、小さなギャップから大きめの段差まで路面からの衝撃をきれいに吸収。
路面の荒れた峠道でも軽快で快適なフットワークをみせる。
アシスト&スリッパークラッチやギアポジションインジケーター、座面の大きなシートといった装備はライダーの負担を減らしてくれるし、クルージングでは30㎞/L近い燃費なので、満タン航続距離は500㎞を優に超える。
400Xでもなんら不足はないが、エンジンとサスペンションにプラスα以上の余裕を持つCB500Xは日本のツーリングシーンに最適な一台だと思う。
●PHOTO:南 孝幸 ●TEXT:太田安治