フラッグシップの座を追われてもなおスポーツバイクとしての性能に磨きをかけたDX/RD250
「YAMAHA DX250」-1970年-

1970年代の2スト250㏄ストリートバイクは、それまでのスポーツバイクの上位モデルではなくなり、4スト大排気量車を頂点とするピラミッドの中間をなすマシーンへと性格を変えていく。
しかし、そこは自他ともに認める"レースのヤマハ"ゆえ、250~350㏄の排気量を持つ2スト2気筒車の牙を抜くことは決してせず、むしろ4スト大排気量車をツーリングモデルとし、DX/RD250/350/400の各車ではライトウェイトスポーツとしての性能改善に取り組んでいた。

当時のカタログでも"都会派"や"スマート"といった言葉で、先に発売された兄弟車RX350とともに、スポーツバイクの新しいデザインを前面に打ち出した広告が行われた。

1957年のYD-1から69年のDS6に至る、曲線美を生かした形状のタンクと角を落としたシリンダー/ヘッドのフィンが醸し出す丸みを帯びたデザインから一変、直線基調のシャープなスタイリングになった1970年型DX250。価格は19万6000円。
ヤマハ DX250 DS7
排気量/247cc
ボア×ストローク/54mm×54mm
エンジン形式/空冷2サイクル 2気筒 ピストンバルブ
圧縮比/7.1:1
クランク角/180°
潤滑方式/独立インジェクション(非プレミックス)
点火/独立点火(2ポイント・2コイル)
発電機/オルタネーター
始動方式/キック
トランスミッション/常時噛み合い 5速リターン
クラッチ/湿式多板
1次減速/ギア
最終減速/チェーン
燃料タンク容量/12リットル
乾燥重量/146kg
最大出力/30HP(24HP説あり) 7500rpm
最大トルク/2.9kg 7000rpm
最高速度/160Km/h(当時のカタログ値)
0~400m加速/14.8秒(当時のカタログ値)
市販レーサーTD/TR~TZ系の250/350マシーンがDS~RD系のクランクケースを流用していたのは有名な話だが、基本レイアウトが同じエンジンゆえ、市販レーサーからストリートモデルへのフィードバックもまた容易であり、これら2スト並列2気筒車には、レーサーで開発された多くの技術が(TD-2/TR-2からDX250/350へはフレームの基本骨格までもが)盛り込まれていった。
80年代に一時的に薄まったレーサーとの関連性は、90年代に入って再び強まることになる。

※写真はRX350
1967年型DS5-Eまでの各機種にはボアを1㎜広げて250ccを超える排気量としたり、さらに排気量を拡大して305ccとした兄弟車が存在したが、1967年に発売された350cc(当時ヤマハの最大排気量エンジン)マシーンR1や1968年発売のR1マイナー(R2)はデザイン的にもパーツ構成の面でもDS5-EやDS6の兄弟車とは呼べないものだった。
このDX250には5カ月早く市場投入された兄弟車RX350があり、デザインが共通なだけでなく、エンジン~車体を通じて多くのパーツを兼用していた。
250と350(1977~79年は400)を同時開発し、多くのパーツを兼用するやり方は、RZや4ストのGX/XSにも見られるが、RX350と同等の車体を持つDX250は、重量面でのハンディよりも強度面でのアドバンテージを生かし、市販レーサーTD-2/TR-2に酷似したフレームと合わせて優れた操安性を誇った。

メーターまわりの眺めも基本的にRX350と共通。バックミラーは専用のクランプを介して装着する。トップブリッジの中央にフリクション式ステアリングダンパーの調整ツマミを持つ。

シャープなエッジのフィンが特徴的なエンジンは、YDS-1 ~DS6の56×50㎜ではなく54×54㎜のボア×ストロークを持ち、ボアを10㎜拡大した350㏄とのパーツの兼用を推進した。
年代別に見るDX/RD250シリーズ

1971年 DX250/280

1972年 DX250Pro/352
YZR500/TZ250/750/XS650Eなどと共通の対向ピストンキャリパーを用いてディスクブレーキ化。合わせてリアショックのスプリングを不等ピッチにして乗り心地を改善。カラーリングも変更されたが、主要諸元と販売価格には変更なし。

1973年 RD250/361
吸入方式がピストンバルブからピストンリードバルブに変わり、シリンダーも5ポートから7ポートに進化。ミッションの変速段数を5から6に変更するなどの大きな改良を受け、車名もRD250に改められた1973年型。価格は21万7000円に上がる。

1974年 RD250Ⅱ/524

1976年 RD250Ⅲ/1A4

1977年 RD250Ⅳ/1A4

1979年 RD250/3N4
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