そんなドゥカティのイタリアンレッドを纏わない、正当派ロードスポーツモデルとは異なるモデルラインアップをご存知だろうか? 圧倒的な存在感を放ち、どこまでも自由で、どこまでも突進できる冒険心を駆り立てる、そんな魅力的なモデルをピックアップする。
極みに至ったLツインエンジンが生む悪魔的超常現象は、神をも震撼させる!
圧倒的な存在感に後ずさりする……。
低く長いスタイルに筋骨隆々なボディデザイン、装飾で誤魔化した演出は一切なく、質実剛健を地で行くキャラクターに冠せられた名は、ボローニャの方言で禁断の悪魔を意味する「ディアベル」。
純粋にスポーツ性能を追求し、無垢の機能美に気高さを漂わすドゥカティレッドをまとうスポーツモデルを天使や神に例えれるならば、ディアベルは正しく悪魔的存在か?
ドゥカティならではのレーシングスペック直系のエクイップメントや様式にブレはないのだが、軽快さをウリにするスポーツモデルに対しあまりにも重厚感が桁違いに増しているといえる。
その存在感が放つ圧力は、スーパースポーツモデルを前にしての威圧感とは異なる、直感的に感じる獰猛さによるものなのかもしれない。ある意味、悪びれたり、ワルを演出する隙がないワン・アンド・オンリーの造り込みに、本物の凄みが存在すると言える。
ストレート加速重視のドラッガーモデルでも、チョップドライクなバックヤードカスタムでも、またロングフォークに代表されるようなアメリカンでもない、ドゥカティが独自に提案するクルーザーとしてのこだわりが凝縮されたカタチなのだ。
ディアベルを前にすると、どのように乗りこなせば良いのか? どんなシチュエーションで走行すれば良いのか? どれぐらいのペースで? 等々と、要らぬ思考に翻弄されてしまうが、実は、チカラを抜いて付き合える、その名に反しているともいえる。
窮屈さと縁遠い大らかなライディングポジションは、癖のない自然なもので、足着きにも配慮されたボディシェイプとシート高の設定で、身長160㎝に満たないライダーでも座ったままで取り回しが可能となっている。
ゆったり優雅な姿勢と視界が得られるライディングビューがすでにフレンドリーである。上半身の自由度の高さは、極低速走行が強いられる街乗りから、積極的な体重移動が必要な峠のワインディングまで幅広く対応。
大型な車体を翻すUターン時などでは極めてナーバスになりがちだが、アップライトなハンドルポジションのおかげで思いのままに出来ることは、ベテランであっても喜ばしいことである。
さらに今回試乗した「S」は、上級上質なショックユニットを採用することで、体格や走り方に合わせ好みのセッティングを可能にし、ライダーに寄り添う気遣いさを感じることができる。また気候や路面状況によってパワーデリバリーやアンチロックブレーキシステム、トラクションコントロール等々も好みに応じて設定できるので、ダイナミックかつシビアに目眩く道を自分のライディングスキルに合わせ攻略することが可能だ。
今後も、ディアベルSに用意されたアクセサリーパーツを搭載したパッケージモデルとともに、ディアベルSの魅力に触れていきたい。
Ducati Diavel1260S 主なスペックと価格
ホイールベース:1600mm
シート高:780mm
車両重量:244kg
エンジン形式:水冷4ストロークL型2気筒DOHC4バルブ
総排気量:1262cc
ボア×ストローク:106×71.5mm
最高出力:159PS/9500rpm
最大トルク:13.2kgm/7500rpm
燃料供給方式:FI
燃料タンク容量:17L
変速機形式:6速リターン
タイヤサイズ前・後:120/70ZR17・240/45ZR17
価格:ディアベル1260/236万5000円(消費税10%込)、ディアベル1260S/275万5000円(消費税10%込)
撮影:松川 忍 モデル:葉月美優 文:小松信夫/編集部
ウエア協力:AraiHelmet /KADOYA / Alpinestars